7話 異世界との遭遇Ⅴ
タイトルを変えてしまった。
心変わり激しいのです。(前のタイトルと違ったことで不備があるかもしれませんが、ご容赦下さい。)
巣穴を出て道を歩く。
自転車を使ったのは、危険地域と思われるところから脱出するため。
熱帯雨林から出て、せいぜい雑木林と呼べるところまで来た今では自転車というこの世界で使われていないであろう器具を使うのは得策でない。
だって目立つし。
ということで、精神面でも、社会面でも同じくいいことじゃなさそうなので、徒歩という手で移動しているのだ。
だが徒歩にした理由はそれだけではない。
経験値集め・・。ただLVのためではないのだが。
LVのないこのゲームは経験地を直接パラメータやスキルに割り振ることが出来る。
このせいで長年やって他方が強いという理不尽が起きるのだが。
だが全ての経験値が割り振ることが出来るのかと問われるとそうではない。
ただ多くの経験値のうちの少しが割り振れる経験地なのだ。
つまりその他の経験地は職業や種族にあったパラメータに割り振られる。
これがこのゲームの仕様。
スキル欄などから、そこらへんは同じだと思われる。
徒歩3分。さっそく第一モンスターが目の前に現れる。
俺達はそのモンスターの陰を見つけると音で気付かれないように足を止める。
ゲームのグラフィックとほぼ同じなそのモンスターはブロードウィングという小型鳥系モンスター。
ゲームと同じなら、『風牙』という魔法系技スキルを持っている雑魚だが、こっちではどうなるのか。
「後輩、頼む。」
飛んでいるあいつを倒すのは後輩が適任だと思った。
『抗体』は便利だが、一定距離までしか伸ばせない上に細かい動作にはかなり気を使う。
相手の体内侵入なんて、全力で気を張らないといけない。
弾にして飛ばそうにも、体から切り離すとダメージを受けてしまうという代償も考慮した上で、やはり後輩の雷撃がいいと思われた。
「まぁ適材適所っすよね。
それくらいのDPSがあるかも試したいっすし、死なないで欲しいっすね、『電撃』」
後輩のスキル名と共に放たれた電撃は、まだこちらに気付いていなかった鳥の羽に命中して光を散らす。
結果、鳥の片翼を焼いたが、ブロードウィング絶命しなかった。
ブロードウィングは飛ぶことを維持できなくなって。地面に墜落する。着陸に要して足を地面に向ける。
だがそれで助かるわけがない。
落ちた先には俺が待機している。
この長い角は無駄じゃねぇんだよ!
『抗体』でコーティングされている角は深々と鳥に突き刺さり、誰が見ても致命傷と分かる。
抗体を伝って血が流れてこようとするが、途中で消える。
どうやら『侵食者』の能力により吸い込まれているようだった。
"熟練度が一定に達しました。『抗体Ⅱ』になりました。"
おお熟練度が上がったみたいだ。
ゲーム世界より格段に早い、これは転生物お決まりの特有スキルのせいかな?
だとしたら十中八九『聖典の意思』だけど。
熟練度上がり早かったらどうみたってチートだろ。
むしろ特有スキルじゃなかったらたち悪いだろ。
・・・まぁ強いことに越したことはないんだが、何か地道にやる楽しみがなくなるよなぁ。
"条件を満たしました。スキル『勤労者』を獲得しました。"
あらやだ嬉しくない。
ゲームの中まで来て何故働かにゃあならんのだ。
解析をする前に角から獲物を外して、解析っと。
『勤労者』
長らくの間働き勤め、向上心のあるものに送られる。
製造系、交渉系のスキルに適性を持つ。
おお!意外と効能は高い!
製造系の適正はいいな。俺も薬作りとかのスキルとってたから、基本のやり方わかるし。
それにしても"長らくの間働き勤め"、か。
何か人生リセットみたいな気持ちだったけど、やっぱり前の人生を糧にして生きてるんだなぁ。
おっと忘れてた。
実はグリズリーベアの死体を後から解析したけど、味の情報載ってたんだよね!
全部の奴のが分かったら、本当に重宝スキルなんだけども。
だがその前に検証すべきものがある。
特化抜きで解析行ったら何分かかるのか、これによっても『解析』のスキルの価値が変わってくる。
ということでレッツ解析!
"解析完了まで、残り90分"
はい止め!お終い!
特化抜きの解析さんでもいけるとか、なめてましたわ!
一体一体に90分かかったら、待つ気も失せますわ。
ということで解析特化。
というかこれ名前は弱そうだけど、特化も特有スキルなんじゃ?
名前:ブロードウィング
種族:ブロードウィング
職業:無し
加護:無し
称号:『虫食らい』
技能:『風牙』
特性:『魔力操作』
SP:10
『ブロードウィング』
名前の通り、ブロード(織物)の様な翼を持っている鳥種。
その翼からは良質な羽毛が取れるが、いつも単体で飛行しているため乱獲しにくい上に素早く厄介なモンスター。
『ブロードウィングの羽毛』
群れで生息しないのでまとまった量を確保できないが、人々の中では人気を集めている。
味についての情報がない・・。
だけど、羽毛とはいい情報だ。これなら色々と作れるんじゃないか?
「先輩これ解体しても?」
「ああ。羽毛は使い道がありそうだから、根こそぎ取るぞ。」
「あいあいさー。」
後輩は素早くかつ丁寧に羽毛を毟り取る。俺は小さい手なので、ゆっくりでも傷つけないように毟る。
これも『効率化』のお陰なのか、それとも元々のポテンシャルなのかがよく分からない。
取った羽毛を解体の時にとった熊の毛皮で包む。
残りの肉はとりあえずそのまま毛皮で包み、俺の背中に背負う。
やっぱりバッグが欲しい。
無いと大量の物品を持ち運びできず面倒だ。
ということでバッグが作りたい。
この世界のバッグは勿論ゲームの物なのだが、アバターの減速がないことを見ると他のゲームのストレージに似ている。つまり中に入れたものの重量が無くなる異次元バック、ただ問題なのがゲーム時代のバッグの作り方が曖昧なのだ。
たしか、何かの動物の皮、石灰水、裁縫道具。そして魔力源となるもの。
何かの動物の皮は、熊の毛皮で代用できるはずだ
石灰水、これはスロープスというカエルのような生物がドロップしたことを記憶している。
曰く、水袋があるのだそうだ。
裁縫道具。これはちょっと厳しいがいざとなったら、骨を針にして羽毛を糸にすることが出来なくもない。
魔力源。最大の難関。
これは何所から取ってくればいいのか分からん。
この魔力源によって、入れられる重さ、大きさ、量が変わってくるのだから拙いものでは心もとない。
かといって最上級の物はこぞってモンスタードロップ。
更に言うと大体レイドボスだ。
そんな最上級の物を作る気は無いが、だからといって粗末な下級なものではこの先不安だ。
せめて中級は欲しいものなのだが・・・。
そうしている内に何かがこちらに来ているのが分かった。
あわててバックステップをすると先ほど俺がいた空間でガチンと相手の噛み付きが空を切った音がした。
あっぶね!
「おっとこの数は厳しそうっすね。」
「何でちょっと人事みたいに言ってんだ!?」
噛み付いてきた奴の正体は狼。数は10を超えるか否かぐらいだろう。
多い。完全に群れごと来たパターンですわ。
この数になると、数体もしくは一体狙いの後輩は分が悪いので俺と即座に交代する。
この流れはゲーム時代と同じだ、懐かしむ余裕は無いが。
『アンチリーガル』
群れで生息する狼型獣。
後輩が鑑定の結果を表示させてくる。
やはり低レベ鑑定の結果は情報量が少ない。
だがしかし群れで生息するが特筆事項なら、他の特殊能力がある確率は少ないわけだ。
気休め程度だが少し安心する。
『抗体Ⅱ』を発動させ、こっちに集中させるためにも、気を惹くため必要より大きく盾の膜を作る。
すると思惑通り狼達は盾に気をひかれて、飛びついてくる。
フッ、アホめ!
俺は抗体を使って針状の攻撃を繰り出し、狼を突き刺す。
計五体の狼を突き通すことが出来た。
だが次をしとめようと抗体を動かした瞬間に頭痛が走る。
更に眩暈のように視界が点滅する。目頭が熱い。
その熱が体中に広がって体を麻痺させていく。
体を動かせない。
凄まじい脱力感が体を襲う。
何・・だ・?
思考が安定しない。寝ぼけている時のようだ。
それでも抗体の盾を継続させようとする。
直感的に理解する。MPが足りない。
抗体は砂のように崩れ去る。維持も出来ないようだ。
残っている狼達はこれ幸いと言うように飛び掛ってくる。
ヤバイ。油断していた。
攻撃力ではスキルがあるから勝っているが、HPはまだ未確認事項だ。
俺の頭に狼が飛び掛り――焼き焦げる。
狼が数体俺の目の前で焼ける。
俺の体にも熱が来る。しかしダメージを負うほどではない。
狼が焼き焦げたのはきっと後輩の『三叉の雷矢』だろう。
しかし驚いたのはその命中精度だ。
狼とほぼ隣接と言える距離に居た俺に全くダメージを与えずに絶命させる。
俺が考えているドジッ子後輩が!?
ありえない。
こんなことがありえるのか?
―――ハッ!もしかしたら別人が撃ったって可能性も。
もう、MP切れの症状を気にしないほど驚愕に見舞われた俺は、ゆっくりと後輩のほうを向く。
スッ(魔法の為に前に出していた手を戻す後輩)
サッ(顔を背ける俺)
「何すか先輩!そんな信じられないみたいな行動取るなんて失礼っすよ!」
「だって・・・後輩だろ!?」
「酷い!そんな罵倒用語みたいに。」
絶賛シリアスブレイクされている中、残りの狼は数瞬で仲間が殺されたことにより戸惑いを見せていたのだが・・。
この二人は当然といわんばかりに気付いていなかった。
そろそろこの世界の商業体制まで触れたい。
そして別視点方式について悩んでます!(開き直り)