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5話 異世界との遭遇Ⅲ

少しの浮遊感を持ちつつ、転移が完了する。

見えるのは森林。ジャングルって言ってもいい位の大きさの。

・・・あれ、衣食住ってどうなんだ?

二人とも思った。

兎だって思った。


とりあえず道なりに進もうと後輩と決めた。

俺が魔物なので町はちょっと懸念されるが、それでも道なき道を行くよりはましだと思ったのだ。


そういえば、変化は意外と便利系スキルだった。

これ、姿を無機物にも変えられて、無機物だとMPを消費しない。

これは無機物が生命活動をしない体だからかと思われる。


俺は今正に無機物状態だ。

何でかって?

今の俺は乗り物状態だからだよ!


詳しく言うと、自転車。

燃料がないから、バイクは出来ないのだが。

自転車には変化することが出来た。

変化している自転車は ANCHOR ordina。

木々などの防護用に少しだけごつくなっているが、この愛らしいフォルムは生前の物体と同じだ。

いや、生前ではないかな?

後輩がスピードを出しながら、倒木や岩石を避けていく。

後輩ってこんなに自転車うまかったのか。


「俺自信がバイクになることだ!!」


いやいや。

バイクになっているのは俺です。

物理的に。

実際は自転車バイセコーなんだけどね。


「どうだ乗り心地は?」

「最高っすよ!まるで風になった気分です!」


実際風超えてんだけどな?

『特化』のスキルは実に便利なものであった。

その能力に一時的に特化するのだ。その他の能力は少しばかり下がる。

今は絶賛速さスピード特化中で、風を切るような音が聞こえることから風速を有に超えていることが分かる。

風速は確かノットで表していたはずだが、俺達は何ノットぐらいなんだろうか。


そんな考えも置いといて、今やるべき事を行う。

そうスキルの解析だ。

何故そんな事を?というと、スキルはHP、MPと同じような感じで、ぼんやりと感じることが出来た。

分かったのは、『解析』と『巣作り』。

俺は意味の分からなかった、『抗体』を解析しているのだ。

『解析』と『鑑定』の違うところは、詳しさである。

解析は時間をかければかけるほど、詳しい情報が分かる。

鑑定はノータイムで情報開示を行うことが出来る。

この差は結構大きいが、情報を得られるという点では同じだ。

実際に俺は自分のステータスを解析してみた。


名前:シル

種族:アルミラージ

職業:無し

加護:白銀の聖獣

称号:無し

技能:『解析』『抗体』『巣作り』『変化』『聖典の意思』

SP:15000

特性:『魔力操作』『特化』


パラメータは表示されないか・・・。

と思っていると見つけたのがこれ、『聖典の意思』。

これもやはり見たこと無いスキル。『抗体』『特化』『変化』に並んで『聖典の意思』で四つ目。

効果は分からないが『抗体』の解析のほうが先。

それより気になるのは、種族:アルミラージ。

俺の種族は白銀の聖獣だったはずなのに、変わっている。

どうやら種族の表示は姿に依存するようだ。

その代わり、加護に白銀の聖獣がある。

効果すら分からないので要解析だな。

特性の魔力操作は、ビースト時代からあったもので、運営曰く獣は詠唱しないからしなくてもいいようにすればいいんじゃね?だそうだ。


"ラト"


うっす!

みんなのアイドルラトさんっすよ?

ただいま先輩バイクで森の中を激走中っす。

ヤバいっすね、このバイク。

マジ高性能っすよ。原付ではないので漕がなきゃならないっすけど、余裕で風になれるっす。

今なら最後のガラスもぶち破れるっすね。


そんなことより『鑑定』っすよ!

これ物体だけじゃなく、生物まで鑑定できるんすよ。ゲームでは物品のみだったのに。

異世界転生物で必須って理由が分かったっす。

でも小説のやつとは違ってる部分もあって、このゲーム仕様だとMPを使っていたし、失敗する時もあったっす。

そういうところは再現されているっぽいっすね。やっぱりここはゲームの中なんすかね?


ぐきゅるるる


お腹空いたっす。

気付けばもう夕方。夜も近いっすし、ここら辺で寝る場所を探さないといけないかも知れないっすね?

あと飯。お腹すいてやってられないっす。


とりあえずここらへんでと思って、先輩バイクにブレーキをかける。


「先輩。今日はここらへんにしとかないっすか?」

「・・・あ、うん。分かった。」

「ちょっとボーっとしてるっすね。まぁ、いいんすけども寝床はどうします?」

「それについては考えてある。質さえ問わなければまぁまぁ安全な場所を確保できる。」

「ほんとに大丈夫っすか?寝ている間に6時間は越えるっすよ?」


このゲームは始めてから6時間まではフィールドに敵がPOPしないという安全設計になっていたはずっす。

POPっていうのは、ネット用語でモンスターが出てくることを指すっす。湧くって言ったりもするっすね。

何故かと言うと、始めは転移系アイテムが使えないせいでダンジョンに行くためにも、フィールドモンスターと戦わなくてはいけないっすけど、それの推奨パラメータが平均より少し高く、初心者には強いんす。

つまりは6時間はダンジョンやその他でパラメータ上げしろということっす。

このゲーム、レベルこそないが古参と初心者のパラメータは天と地の差がある。それは戦えば戦うほど強くなるという性質に原因を持つっすよ。

しかも上限がないので余計たちが悪いっすね。

自分は古参、先輩は古参中の古参って言ってもいいかもしれないっす。


兎に戻った先輩は、少し獣道みたいな場所から離れ、草を掻き分け、地に前足を置いたっす。

すると地面や木々が盛り上がり、一つの小さい山が出来上がるっす。

そこにちょこんと入り口が出来て、即席の洞穴になっているっす。


ほえー。これもスキル何すかね?

獣人種特有っぽいすけどね。


中に入ってみると、中は思ったよりも広く、奥に続く斜面になっていたっす。ジャンプこそ出来ないが普通に立てるほどの高さがあり、難なく進むことが出来たっす。

奥の部屋は質素ではあるものの、仮の寝床としては十分だったっす。

一つ言えば壁が土なので衛生面で大丈夫かなと思ったすけど。


ぐぎゅるるる


やっぱりお腹空いたっす。


"シル"


洞穴の中にぐぎゅるるるという緊張感の欠片もない音がなる。

サバイバル状態なんですけどね?

まぁ確かに、俺達はここに来てから何も食っていない。

さすがに俺もお腹が空くが、どうしようか。


"ゲーム開始から6時間が経過しました。モンスター出現制限を解除します。"


なんか絶妙なタイミングでPOP制限が解除された。

実はこの巣は魔物や動物をおびき寄せる効果の有る巣で、飯のために作ったのも一つの要因である。

つまりはここらへんの生き物を焼いて食うということだ。


そういうのが嫌いな奴らもいるが、俺らはそういうのに憧れていた時もあった。

そんな事に遠慮があるほど繊細な心も持ってないしね!


「先輩、外に狩りに行ってきていいっすか?」

「まぁ、待て。・・・へ?」

「へ?」


この部屋の入り口を見ると、熊のような生物が一体入ってきている。

あれ?俺の予想では、俺が作ったんだからアルミラージの巣かと・・。

いや、同族を悔食いたくはないと思っていたけど。


熊は俺を発見すると、すぐさま飛び掛ってくる。

その巨体は俺に恐怖感を与え。

鋭い爪は大きな傷を作ら・・・ない。


「先輩!・・・あれ?」

「なんだ後輩?俺がやられるとでも?」


実際超怖かったけど。


俺の体から数cmはなれた場所に赤い障壁のようなものが張られている。

それは熊の腕を一部入り込ませて固定されて、熊の腕を動かなくしている。

熊は拘束されていない右手で障壁を叩くも、また障壁が腕を固定する。

こうして熊は瞬く間に両腕を拘束された。


「それ・・何なんすか?」

「お前には言っただろ。『抗体』だよ。」

「何・・・!?『抗体』なんてしょぼそうな名前なのに!?」

「『抗体』って言ったら体の防疫要素だと思うけど、このスキルは防疫要素も含めて"抗う体"っていうイメージの下にあるスキルだぞ?」

「何すかそのチートスキル!聞いてないっすよ!!」

「当たり前だろ?言ってねぇもん。」


後輩がうだうだ言っているのを右から左に受け流しつつも、俺は抗体に意識を向ける。

熊はまだ暴れているが関係ない。

抗体を意図的に操作して、相手の体の中に流れさせる。


「知ってるか?アナフィラキシーショックってあるだろ?あれってさ抗体の異常な反応により、血小板が固まった時に起こるショックのことなんだぜ?」

「うんちくとかいらないです。」

「ここは無言で聞くところだろ!」


入った抗体は熊の体内で無事異常反応を起こしたようで、熊は糸が切れたようにその場に倒れこむ。

ドスンと重々しい音を立てて床に崩れる熊。

それと同時に抗体が解除される。


"経験値を47獲得しました。"


「やっと飯っすか?」

「熊一匹死んだってのに動じないとかかなり図太いなお前。」

「いや、ゲームもこんなの結構リアルだったっすし。」

「それもそうか。じゃあ後輩『鑑定』よろしく。」

「任せとけっす!『鑑定』!」

「何故声に出したし。」


まぁ気分でー。と後輩は笑いながら鑑定をする。

鑑定が終わると、後輩は鑑定結果を俺に見えるようにする。解析もそうだったのだが、結果を見えるようにするかは任意なのだ。


名前:グリズリーベア

種族:グリズリーベア

加護:無し

技能:『雄たけび』『爪牙』

特性:『魔力操作』


倒した熊は魔物でした。

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