2話 ローグ
数人の一話お気に入りありがとうございます。
タイトルを変えるかもしれないですがそれはご了承をお願いします。
なんでもしますから。
家に帰るとすぐにパソコンを開く。
"白銀の聖獣"とやらについて調べるためにだ。
ここ二ヶ月間とちょっとを解析と調査に使っていた。
俺は内容というよりゲーム性を気に入って、RSOをプレイしていたのでゲームストーリーはあまり気にしていなかった性なのだが。
スキルと史実を比べ合わせたり、フレーバーテキストを参考にして。
コイツと"白銀の聖獣"の違う点を二つだけ見つけることができた。
二つだけかよとか思うけども、そこは置いといて。
"白銀の聖獣"は多くの神話級武器を持っているらしい。
武器の中でのランクは平凡級武器、洗練級武器、異伝級武器、古代級武器、伝説級武器、神話級武器で最高の部類の武器だ。
まぁこれは勿論ゲームなのでキャラに武器が付属するはずも無く、このキャラのどこにもそんな様な物はなかった。
そして"白銀の聖獣"をサポートする謎の二人組。
このゲームの史実にもちゃんと名前を残していて、この聖獣に仕えて、色々な事をしているやつららしい。
名前は、ネアとニア。
いつしか"白銀の聖獣"に付き従っていて、始まりの章から何時の章でも"白銀の聖獣"以外の場所でも出てくるへんな奴。
つまり、武器を除けばこいつは史実と同じ。ほぼ"白銀の聖獣"なのだ。
スキルは見たことの無いものがあり。
空間制御、瞬間制御、形態制御。この三つが付属で付いていた。
更に更にパッシブスキル。無形質というものがあり。
この4つ全てが説明文無し。
非常に怪しいものである。
しかもこのスキルたち、スキル画面からそのコマンドをタップして発動させても変な画面が出て使えないのだ。
その画面を幾らクリックしても、出てくるのは文字だけ。
しかも一クリックで数え切れないほどの文字。そしてそのせいで画面は見えずに無我夢中で攻撃していると、気が付いたら相手が倒れていたり。
もう、わけがわからないよ!
そんなこんなで、調べるのを諦めた俺は後輩と一緒にボスを狩りに行っていた。
・・レイドボスに。
「おい後輩!新ステージだって聞いたから来たけども、レイドボスって聞いてないぞ!」
「当たり前です!自分だって今知ったんすから!」
レイドボスとは、何人かで作るパーティを更に何個か組み合わせて作るレイドで立ち向かうのが普通のボスである。
しかも、アップデート直後の新ステなのもあいまって、難易度は超激増!
しかもこのキャラでの初戦闘!
攻撃コンボすら分かっていないし、どのくらいのダメージなんて分からん。
なんでそんな事になったかというと、俺が後輩からのダンジョン招待を受け取り、後輩の場所までワープしたからである。
後輩の場所はボス部屋手前で、倒す雑魚なんていなかった。
そういえばレイドボスのダンジョンなら雑魚も強いはずなのに後輩は一人で攻略していたな・・・。
チラと後輩のほうを見るとなにやら高級そうな武器と防具。
前見た時はあんなものは無かったので、課金かダンジョン篭りか何かしらしていたのだろう。
その大きな弓を見て、多分伝説くらいの性能と決めつけ。俺はアイテムバックから神話級の槍を取り出す。
名はグングニル。正式名称はグングニールであり、戦神槍としても有名な槍だ。
神話で出てきたオーディンの持ち物で、絶対に外す事のない槍、そして手元に帰ってくるという仕様がこのゲームにもちゃんと有る。
神話級の武器は一種に付き一個。俺はたまたまドロップで当てたが、本当は手に入れたくても手に入らない代物である。
俺はその価値が糞高すぎる槍をキャラの設定上、背中に背負う。
勿論この槍は前述の通り絶対必中なので、決まったような角度で射出される。
トカゲと豚を足して2で割ったようなボスは、文字通り串刺しになり。
HPのゲージを確実に減らした。
だがそれでどうにかならないのが、レイドボスである。
圧倒的な突破力に、HP。そして多種多様な攻撃モーションが俺達の勝ちパターンを邪魔する。
正直喰らい付くだけでも精一杯だ。
トカゲ豚モンスター。正式名称、ゲルド・キマイラは広範囲ブレスを繰り出し、俺達のHPを確実に減らす。
突進や地震系なら避けられるがこればかりはどうしようもない。
POTも着実に減っていく。
勝ち筋を削られていく感覚に俺は耐え、口を開く。
「おい後輩!このままだと確実に負ける!退却か続行か決めてくれ!」
相手の叩きつけ攻撃をジャンプで避けながらのボイスチャット。
このパーティのリーダーは後輩だ。そうならあいつがやるやらないを決めるべきだろう。
俺は途中参加の身だ。報酬だって勿論あいつが貰うべきだと思う。
・・・いや、ちょっと位は欲しいが。
後輩は人類種、ヒューマンの上位種族であるクライシスの種族を取っており、クライシスは種族の中でも現時点の頂点に近い種族だ。
対して俺は、ビーストとの繋がりが何所へ言ったのか、系列表、種族表を辿ろうとしても辿る線が一つも無く挫折。氷海の孤島みたいに見えてしまった。
その細身だが筋力パラメータは高いクライシスさんがこちらのボイスチャットに反応する。
「先輩が続行の選択しだしたって事はまだ可能性はあるんすね!
やろうじゃないっすか!やれるところまで!」
「お前はそういうんじゃないかと思ってた・・・!」
俺は取り出す準備をしていたアイテムを取り出して、地面に投げる。
「アイシス!」
アイシスと思わず叫んでしまったそのアイテムは、"五大聖の盾"。このアイテムは高額の消費アイテムだから、使いたくは無かったが。
あらゆる攻撃、魔法を30秒だが無効化してくれるもの。
そのアイテムが発動すると、自分の体からはみ出ていくといった形で円形の結界が俺と後輩のどちらもから出てくる。
まぁ、エフェクトなのだが。
『空間制御!!』
俺がスキルのキーをタップすると、システム音が鳴り響く。
同時に俺の画面にはコマンドと思わしき数列がズラッと並ぶ。
数え切れないほどの数字と記号の中。
俺は数ある中の1番を選択し、コマンドを入力する。コマンドの入力にも時間を使うのでこの三十秒は必須なのだ。
二ヶ月かけて解読した1番の内容は空間の移動。
それに何所の物か分からないが、解読した座標を指す。
しかし、見たことも無い座標指定でボスの場所を指すのは不可能。
ならばこうするしかない。
俺は盾が続く間にボスの近くに近づき、大槌による攻撃を避けて腕に飛び乗る。
そして頭を目指して走る。
前足がそっとボスの頭に付いた時に、コマンドを実行する。
指定したのは"俺の体に触れているもの"
空間の移動によって行うことは勿論。
「吹っ飛べ!豚野郎!!」
俺の体に触れている全てが八方向に吹っ飛ぶ。
頭というオブジェクトは、8つに分けてコマンド指定されたようで全てが違う方向に吹き飛んだようだ。
空間を移動するために使ったのは物理衝撃。俺の腕を異常的に加速されたことになっている。
物理演算を使っているゲームなら。というかスキルなので、ダメージ計算にスキルである物理衝撃が入り込んで。
あと二つもバーがあったボスのライフは一片たりとも無くなって、バーの表示が消えてしまい。
ボスを倒したことによるアイテムがそこらじゅうに広がった。
言わずもがなそのアイテムは自動的に俺達のアイテムウィンドウに保管された。
いやそれが問題なのではなく。
俺がレイドボスのHPを7割方削り取った。
これが問題なのだ。
強い。強すぎる。
俺の見た最大級のユニークスキルでもこんな芸当は出来なかったし、しかもそれなりに代償があるタイプのスキルだった。
俺が恐る恐る、後輩のほうを見やると。
ものすごく晴れ晴れとした顔・・・っておい。このゲームにそんなアクションあんの?
そういえばキャラメイクに自分で製作ってコマンドがあったような。
いやいや違うそこじゃない。問題は武器なしで相手を・・・武器?
そういえばグングニルを背負っていたはずなのだが、持っていない。
そういえば物理衝撃を触れているものにしていたから、どこかに吹き飛ばされたのか。
俺がグングニルを探すようにあちらこちらを見渡すがグングニルは発見できず、更に背後から近づいてくる気配が。
これちょっとヤバめじゃ・・。
すると何故かグングニルが俺と後輩を分かつように落ちてくる。
本来有り得ないはずのモーションの上に、何故か破壊不能物体であるダンジョンの床に刺さっている。
えっと・・・。どういうことだってばよ?
後輩も意味が分からないようにこちらを見てくる。
いやこっち見ても無駄だから。俺も意味不明だから!
しかもこっち兎だから見下してるようになるんだよ!そんなにしたら新しい何かに目覚めちゃうじゃないですか、やだー!
俺達が考えに至るまでの時間も無いままに、俺の画面にシステムウィンドウが映し出される。
『偶発的にコマンドの使用が確認されました。これより期限の短縮化を図ります。』
「・・・は?」
思わず声に出してしまった。何だコマンドって使うといけないものだったのか?
まぁ俺はキャラが戻るなら何でもいい。短縮化なんてばっちこい!
というように俺はその内容はもうすぐあの愛らしい犬っころに戻れることに喜びを感じた。
「えっ!?これ何すか先輩!?俺になんか期限の短縮やら何かのメッセージが来たっすよ!?」
「なん・・だと・・!?」
いや、ネタをやっている場合ではない。身に覚えが無いものにこんなことがあったらもはやバグだし。
そのバグやこのスキルの異常さが広まらないように、この新フィールドごと永久凍結すらやるかもしれない。
何かしらのカウントダウンが画面上で始まる。やっぱり永久凍結か?
そうしたら俺達のデータごと消えてしまうかもしれない。やはり運営はブラックだったのか!
悪あがきに転移用のアイテム引っ張り出して使用する。
転移門、転移結晶、転移翼・・・。
その引っ張り出した12のアイテムはどれも効果を発揮しなかった。
くそう、何でだ!
しかし瞬く間にカウントダウンの数字は減っていき、ついに一桁になった。
「えっ!?先輩?これはどういう!?」
「いいから俺に掴まれ!」
すると後輩は俺のキャラをガシッと両の腕で掴んだ。
これは永久凍結ではなくプレイバックか強制転移対策。
一人じゃなく二人以上でそうされたなら出来ることが増えてくるからだ。
そうしている間にも時間は減っていく、もう待つことしか出来ないのだが。
カウントダウンの文字が0になった瞬間。
俺の思考にノイズが走る。
逆らうことも出来ず、俺の意識は糸が切れたようにブラックアウトした。