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1話 プロ

"Rainy(レイニー) scriptスクリプト) onlineオンライン"

テンプレであるインストール型のオンラインRPG。

レベルが無いという、RPGでは異色のカテゴリにあったこのゲームにあった設定は膨大な量のスキル。

作ることの出来るキャラビルドは多種多様。どのスキルにも少なからず実用性があり、特定のビルドの一極化なども起こっていない。


種族の説明としては人類種、魔獣種、異形種、硬質種、魔人種がベースになっていて。

この種族等から樹木のように無数の種族に繋がっている。

それは竜であったり、人であったり。はたまた意味の分からないスライム型のモンスターであったり。どれにもそれぞれの楽しい方があり、プレイヤーを飽くすること無く楽しませてきた仕様だ。


スキルは武器が有り無しを基準にしていないのスキルが多かった。

ちゃんとした武器は一部の種族にしか使えなかった。

その差別化をなくすためだと思われる仕様だが、このゲームには差別を体現するようなスキルも中にはあった。


それがユニークスキルだ

しかしながらユニークスキルは本当に特別なものであり、ほとんどの者が手にすることが出来ない。

そのゲームで一人。プレイヤーがこのゲームを続ける理由として、その存在は非常に大きかった。


――


手を動かすと同時に無機質な音が部屋の中に響く。

キーボードの動きに連動するように画面の中で動くキャラクター。

目的はどんなゲームでも同じ。何かを手に入れるという単純な欲望の下に動いているのだ。

他人より上に立ちたい優越感や、万人は持っていない装備を手に入れたい独占欲。

それを満たしたいが為にプレイヤーは画面の中の自分の投影を動かし続けるのだ。


しかし、その過程を吹っ飛ばしていきなり欲望を満たす方法がある。

リアルマネートレード、つまりは課金だ。

身も蓋も無い言い方をすると。金さえあれば強くなれるというのが課金だ。


勿論、非課金というカテゴリー内にも強者はちゃんといる。

だが人は楽な道に進んでしまう生物(もの)なのだ。

ガチャ引いて楽したっていいじゃないかーーッ!!


長々と自分に言い訳を垂れ流しながらマウスをクリックした結果、画面に映るのは課金所。

近くのコンビニで買ったプリペイド

ガチャをクリックすると画面に少しノイズが走ったので、PCも変え時かなと思う。

ゆっくりと押したガチャからボールが出てくる。

何と金色のボール。何だか良さそうだと思って、景品一覧を見ると、金のボールは種族変更チケット各種だった。


種族って今まで気にしたことがなかったな。

種族はビーストに決めたまま一回も変えたことがない。ビーストというのは犬っころの見た目の種族だ。

確かに手に入れた進化系種族の方が強いかもしれない。ビーストっていう他のゲームなら獣っ子の筈のハズレ種族より、強さか見た目を目指して変えていったほうが良かったのかもしれない。

だけど、今まで一切変えなかった。理由は無かったが、いわゆるジンクスのようなものだった。

ただ、ガチャから出た種族の説明には3ヶ月間お楽しみくださいと書かれていた。俺はそれを見てお試し感覚でならと、そのガチャから出た種族を一切見ずに種族変更のボタンをクリック。


壮大なSEと共に画面がエフェクトの光に包まれる。

パンパパーン

そんなファンタジー系にありがちな音が鳴って出てきた俺のキャラクターは。


兎だった。

・・兎ちゃんとか兎型魔獣とかそんなモンじゃねぇ。

本当に学校にいそうな兎。唯一変わってそうな部分は銀の体毛と頭にちょこんと生えた可愛らしい角だった。

いわゆるアルミラージ。このゲームでのアルミラージの扱いは他のゲームたちとなんら変わりなく序盤の定番モンスター。つまり雑魚だ。

何故ガチャにそんなものが出たのか。何故レアであることを知らせる大きなファンファーレが鳴ったのか。

そして何故雑魚である、黄単色しかない筈のアルミラージが銀色をしていたのか。

その理由を考える余裕はその時なかった。


俺は銀色の体毛をたなびかせる可愛らしい生き物が映った画面の前でうなだれる。

俺の千五百円(時価)が・・・。

その晩、弱そうな見た目と失った千五百円を思い浮かべて枕を濡らした。


――


所変わって、会社の事務所。俺の会社は準一級会社のようなもので、一級会社には成り損ねたがそこそこ知名度は有る会社になっている。

しかも、社長は気前が良く。一級会社並みの給料を俺達に与えてくれる。

そんな会社で俺は後輩と話していた。


「はぁ、俺の千五百円・・・。」

「へ?どうしたんすか?いきなり千五百円とか・・・。」

「いやさ、俺の千五百円で兎になれたんだよ。」

「すいません先輩。何言ってるのかわからないっす。」


まぁ、それはそうか。いきなり千五百円が何たら言われても困るよな。

とりあえず後輩にその話への経緯を簡単に話した。


すると後輩は人差し指を俺に向けて突き立てて。


「ざっまwww自分を置いて一人でレイドボス参加と化してるから罰があたったんすよwww」


俺はその向けられた人差し指を掴んで、普段曲がる逆に思いっきり曲げてやった。

そう逆に。

そんな事をされた後輩は笑い顔から一転。痛みを苦しみだす事になった。


「人に指をさすなって親に習わなかったのか?」ギリギリギリギリ

「ちょっ、せんぱっ、謝りますから、すいませんすいませんすいません!」


人差し指が普段の逆方向に曲げられる痛みに屈服したのか、素直に謝る後輩。

持つべきものは聞き分けのいい後輩だな。

俺がパッと手を離すと、後輩が人差し指に顔を近づけてふぅと息を吹きかける。

そんなに強くしたつもりは無いんだが、ちょっとやりすぎてしまったかもしれない。

まぁ相手が後輩だから、謝る気は無いが。


「ふぅ。何するんすか全く・・・。って二回目は止めてくださいよ?洒落にならないっすから。」

「お前が俺に服従したらもうしないわ。」

「するわけないっすよ!・・・で、先輩は兎っころになっちゃったんですね?」

「兎じゃなくアルミラだけどな。」


俺は大好きな犬から変質してしまったあの兎を思い出す。

くそっ。別に兎も好きだから貶せねぇ。

というか動物は全般的に好きだからか。


「アルミラージっすか。それはまた・・・って銀色のアルミラージ!?」

「は?・・そうだが。」

「それは、OPと特定のダンジョンに出てきた話の"銀色の聖獣"じゃないっすか!?」


後輩が俺のほうに身を乗り出してくる。

後輩もこのゲームをやりこんでいるのでストーリーやその他も色々と知っている。

むしろそれを解き明かすためにダンジョンにもぐっている始末だ。


「"白銀の聖獣"っていったら確か、事あるごとに姿を変えるが身体は銀色っていう・・・。」

「そうそれ!それっすよ。"白銀の聖獣"はこの世界を司る獣。地を砕き、天を貪り、海を割るっていうトンでもな生物じゃないっすか!マジ痺れるっす!」


"白銀の聖獣"は物語の要所要所で出てくるキーキャラみたいな奴のことだ。他には人間を助けたり、雨を降らせたり、冒険者の前に現れたり。

とにかく色々な事をしている。時に馬、狼、竜。剣の姿って時すらあった。

その都度人を救っては、消えて。また消えて。

そんなことをやっている"Rainy(レイニー) scriptスクリプト) onlineオンライン"の根幹みたいな奴のことだ。


「それが先輩のものっすか・・・。何か納得いかないっす。」

「いやいや別にそうと決まったわけじゃないだろ。」

「でも銀色のなんて兎見たこと無かったし、ガチャのレア何ですよね?」

「それはそうだが・・・。」

「やっぱりそうなんすよ!先輩はいつもこんなん役回りっす!羨ましい!」

「じゃあお前もガチャ引けよ。」

「金がない!」


ガオーと言わんばかりのポーズをしながら後輩が勢い良く席を立つ。

かなり高賃金なこの会社で金不足な後輩は両親の為にお金を送っているのだ。


両親は1年前に事故にあった。

両親と後輩を乗せた車は山沿いの道を走っていた。

運悪くちょうど冬の吹雪だった道でトラックはスリップ。更に後輩達は吹雪であまりトラックが見えておらず自分の身を守ることすら出来なかった。

その中でも運よく後輩は軽傷で済んだ。

だが、両親は腹部、頭部に大きなダメージがかかり、お父さんは意識があるが、お母さんはまだ意識が戻っていないそうだ。


命に別状は無いそうだがやはり不安が残り、高い治療費を後輩が払うと言ったそうだ。

この話を思い出すと、やはり後輩は憎めない奴だと感じさせられる。

後輩書いてたら、愛着わいてきた。

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