神様と神梛と混乱
ルピナスは孤児院の客間に知らぬ男と向き合っていた。
ルピナスはついさっき、この男に”引き取りたいと言われた。ルピナスはこの言葉に驚いた。まさか自分を引き取りたいと言い出す人がいた事にルピナスは驚きを隠せなかった。
(まさか僕を引き取りたいと言う人がいるなんて。)
「大丈夫かい?」
「え、あっ、だ、大丈夫です。」
ルピナスは声をかけられて正気に戻ると男性は安心したように微笑んだ。
「話を続けてもいいかい?」
「はい。」
「君は私が君を引き取る事をどう思う?」
「え、どう思うかと言われても·····どうも思いません。それより、あなたはいったい······」
「あぁ、まだ名も名乗っていなかったね。私は神梛出雲<かんなぎ><いずも>と言うものだ。宜しく。君はルピナス·イベリス君で合ってるよね?」
「はい。合っています。」
神梛出雲は微笑むと持っていた鞄を開けて中からメモ帳を取り出した。
(メモ帳?)
ルピナスが不思議そうに見ていると、神梛はボールペンを取り出した。
「ルピナス君は今、此所に居て、楽しい?リラックス出来てる?」
「え、何でそんなこと」
「出来れば、何も言わず答えてほしいな。」
神梛はそう言ってニッコリと笑った。
「分かりました。此所に居て楽しいかという質問は普通だと思います。」
(友達は出来ないけど、前よりかはかなり良い感じだからね。)
「リラックス出来てるかという質問はこれもまた普通だと思います。」
(誰も用事が無いとき以外は話しかけてこないからね。)
「そうか。ありがとう。最後に確認だけど、君は僕に引き取られても引き取られなくてもどっちでも良いの?」
「まぁ、はい。」
(あれ?僕、何ではいって答えたんだろう?)
「よし、ルピナス君、今日はありがとね。」
神梛はそう言うと立ち上がってとなりの部屋へ行った。暫くして神梛と孤児院の人が嬉しそうに部屋へ入ってきた。
「良かったわね。ルピナス君。引き取ってもらえることになって。」
「え?」
「本当に良かったです。ルピナス君が引き取ることをOKしてくれて本当に良かった。」
「え、いや、あの」
「ちょっと書類を取ってきますね♪」
孤児院の人はスキップをしながら部屋を出た。
「あの、OKしてないですよ。僕、どっちでも良いって言っただけですけど」
「そうだね。君はどっちでも良いって言ったね。OKです、とはいってないね。」
「じゃあ、なんであんなことに」
「どっちでも良いんだろ。引き取られても引き取られなくても。どっちでも良いんなら私が君を引き取りたいからひきとる。どっちでも良いってことはどっちになっても構わないって事だからね。」
「そうですけど、でも」
「書類、持ってきました♪」
ルピナスの言葉を遮るように書類を持った孤児院の人が戻ってきた。
「えっと、ここにお名前と住所、電話番号をお願いします」
「はい。名前と住所と電話番号ね」
(いや、何でこんなに早く事が進むんだ。この人とあって1日も立ってないよ。何かおかしい!)
「えぇと、はい。では、明日、お迎えに来られるんですね。分かりました。」
(え!明日!?いや、そんなに早く子供渡して良いの?もうちょっと慎重にそういう事は進めていかなきゃダメだよ!?)
ルピナスが心の中で焦っているうちに書類も書き終わり、あっというまに·············
「では、明日の正午ですね。さようなら。ありがとうございました。」
ルピナスが明日の正午に神梛出雲の養子となることが決定した。
(おかしい。こんなに早く事が進むことなのか?初めて会ってから2日後に直ぐに引き取られるものなの!?)
(絶対に何か変だ!)