神様と沈黙と男性
「失敗した·······」
ルピナスの心の声は賑やかな子供の声に消された。ルピナスが孤児院に入って1ヶ月。孤児院の近くにある学校にも通い始めた。ルピナスの特徴である3色の目と髪はルピナスがつくりだした幻術により漆黒に染まっている。一見、他の子供と何ら変わらない姿になったルピナスだが孤児院に入って1ヶ月、学校に通いはじめて3週間。もう、お友達もそれなりに出来た、が普通なのだがルピナスの今の友人の人数は0だ。何故このような状況に陥ったのか2週間考えてようやくルピナスは理解できた。
(顔がいけなかった。)
ルピナスが1ヶ月経っても馴染めない理由は顔にあった。ルピナスは老若男女問わず、うっとりと眺めてしまうほど美しい顔立ちをしていた。いや、それ以上のものだった。あまりにも顔がよすぎて回りの人たちは自分とは別世界の子供だと一線を引き避けていた。避ける者たちのなかには“近くに行けば自分が醜い姿に見えてしまう”と避けるものも数人居ただろう。だが、ルピナスの顔立ちが良すぎるという理由も確かに大きな影響を与えているが理由はもう1つある。それは、ルピナスが放つオーラだ。ルピナスは物心ついたときから人に避けられていた。その状況は今も続いてる。だから人と笑顔で話したこともない。その状況に慣れたルピナスは無意識のうちに他人が近より難いオーラを放ち、他人にとって近寄るという動作にもかなりの量の勇気と精神力が必要な状況を造り出していた。そのオーラは他人から見てみれば近寄らないで欲しいという風に見えてしまうのだ。簡単に言ってしまえば回りの人たちは別世界の子供であり、本人が他人とは関わりたくないと思っていると感じているのだ。ルピナスは顔立ちの事には気づいているがオーラについては全く気づいていない。
(平凡な顔にしとけばよかった。いや、今でもかなり集中してるから、これ以上は無理か)
ルピナスはボンヤリと窓の外を眺めながら、これからの対策について考え出した。
ルピナスが孤立する理由の1つに気づいて1ヶ月と3週間経った。孤児院に入って2ヶ月と3週間。ルピナスは独りで孤児院に向かう道を歩いていた。
「面白くないな·····。まぁ、化け物のように扱われるよりは良いけど。考えていたの違う。もっと、友達が出来るかと思ってたのに。」
ルピナスが文句を言いながら孤児院の前まで来ると一台の車が止まっていた。
(またか。)
ルピナスはうんざりしたような顔で玄関へと行く。玄関のなかに30代の夫婦らしき男女がいた。その近くには5才位の女の子が30代の男女を見上げていた。
「フフ、なんて可愛らしい目。そんな目で見上げられると抱き締めたくなるわ。」
「今は止めとけ。これからたくさん抱き締められる。俺たちの子供になるんだから。」
「そうね。よろしくね。」
男女はそう言うと女の子の頭を撫でた。女の子も頬を赤くしながら恥ずかしそうに笑っていた。男女と女の子は手を繋ぎながら車へ歩いていった。
(あれ?)
ルピナスは去っていく男女と女の子を見た。
(今、あの男の人に見られていたような·······気のせいか。それにしても、孤児なんて引き取る人が居るのかと思ってたけど、2週間に1回のペースで子供が1人引き取られていくなぁ。僕もいつかこんな優しそうな人達に引き取られるのかな?)
ルピナスはそんなことを思いながら静かに
「ただいま。」
と言った。
「ルピナス君、おいで。」
土曜日のお昼、孤児院の人に呼ばれて客間へ行くとそこには1人の40代前半の男性が一人、ソファーに座っていた。近くには孤児院の人もいた·······とてもニコニコしながら。孤児院の人に言われて40代前半の男性の反対側のソファーに座ると、体は深く沈みこんだ。
(うわぁ····!凄く柔らかい。)
「では、私達は隣の部屋に居ますので、何かありましたら呼んでください。」
孤児院の人はそう言うとソファーの柔らかさに驚いているルピナスと男性を置いて、部屋を出ていった。
(二人っきりだ。なに話せばいいんだろう。気まずいな。そんなこと考える前に、この人誰!?)
「初めまして。」
ルピナスがちょっとしたパニックに陥ってると男性が言った。男性の声は静かで落ち着いた声だがいろんな音が鳴っている空間でもすぐにわかるような、印象的な声だった。ルピナスはまるで助けられるかのようにその声を聞くとパニック状態から抜け出していった。
(あぁ、何でだろ。この声聞くと落ち着く。)
「君、大丈夫か?」
ルピナスが返事をしないので心配した男性は言った。
「あっ!だ、大丈夫です。」
ルピナスはあわてて返事をした。
「そうか。良かった。いきなりですまないが、君を私は引き取ろうと思うのだが、君はどう思う?」
「へ?」
ルピナスは相手のいきなりすぎる質問に疑問の声が出た。
部屋にはただ驚くことしかできないルピナスとどこの誰だか名前を言わない男性と重い沈黙がいた。
変なところで終わってすいません。