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神様の物語  作者: 華四季
第1章 幼少期 〈種〉
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神様の願いが叶った時

「はぁ、はぁ」

太陽がギラギラと照りつけるなかルピナスは松葉杖をつきながら歩いていた。春の日差しも長く浴びると暑くなってくる。ルピナスは松葉杖なのでいつもは1時間半かかる家までの距離も時間もいつもより長く感じた。

(足が痛む。こんな暑いなか長時間歩くことになったのも、こんなに足が痛むのも全部あのネーミングセンスのないあいつのせいだ。)

最初は恨まなかった、ルピナスを突き落とした少年のこともこの日差しのなかだと恨まずにはいられなくなる。


ルピナスがやっと家についたのは、5時頃だった。

「ただいま。」

いつも通り家の中は薄暗く研究室の方からはペンを動かす音や容器を洗う音が聞こえる。いつも通りの家だ。

「はぁ」

ルピナスがため息をついて自室へと行き荷物をおいてリビングにくるとさっきは気づかなかったメモがおいてある。

「なんだろうこれ。」

ルピナスがメモを見るとそこには、

『集中する→頭のなかにどんな髪と目の色か思い浮かべる→手に力を集める。→終わり』

それだけ書いてあった。ルピナスは研究室の扉をノックした。返事はかえらない。扉を開けると両親がホワイトボードに文字を書いているとかころだった。

「あの、このメモって·····」

ルピナスが問いかけても両親は作業を続けていた。

(いっても無駄だよね。)

ルピナスはドアを閉めると自室へ戻った。

「どんな髪と目の色か··やっぱり母さんみたいな漆黒の髪と真っ黒な目がいいな。父さんみたいな薄茶色の髪と青い目もいいけど、母さんの色の方が綺麗だよね····。はぁ、やってみようかな·····」

ルピナスはメモを置くと夕飯の準備のために部屋を出た。



「ふぅ。よし!やってみよう。」

ルピナスは退院した翌日からメモに書いてあることをやりはじめた。

「えっと、まずは集中するんだよね。ふぅー。よし」

ルピナスは自室のスペースのある場所へ立ち、目を閉じた。

(集中、集中·······あれ?集中ってどうやってやるんだ?まぁ、目を閉じてぼぉーとしとけばいっか。)

部屋のなかに少しの静けさがあったあとルピナスがゆっくりと目を開けた。

「なんか、集中できてる気がする。次は目の色と髪の色。」

ルピナスはまた目を閉じて、漆黒の髪と真っ黒な目を想像した。

「手に力を入れるんだよね。」

ルピナスは手に力を入れた。そしてゆっくりと目を開けた。

「まさか髪の色と目の色が黒に変わってるなんてこと無いよね。」

ルピナスは部屋を出て洗面所の鏡をそっと、覗いた。だが、そこにはいつも通りのルピナスがいた。三色の髪に三色の目を持つルピナス。

「だよね。はぁ、あぁ馬鹿馬鹿しい。夕食の準備しよっと。」

ルピナスは洗面所を出て、キッチンへむかった。


あれから何度も何度も繰り返しメモに書いてあることをやったが結果は全て同じだった。

(あのメモって、僕にかかれたことだよね!?)

ルピナスがそんな疑問を思い浮かべていると、

「はい、では皆さん、好きな本をとって先生が片付けてくださいと言うまで席について本を読んでいてください。」

「「「はい!」」」

先生が話終わると児童は席を立った。

(あぁ、そうか。いまは本を借りる時間だったな)

ルピナスはボンヤリしていたので時間を忘れていた。

子供たちは自分の読みたい本へと急いでいる。

(僕も早く選ばないとな。)

そんなことを思っていたルピナスの目に一冊の本がとまった。ルピナスはその本が何となく気になり席へ持ち帰って読み始めた。するとその本はどうやら一人の魔法使いが弟子を持ち、その弟子を立派な魔法使いへと育ててゆく物語だった。

(ん?)

ルピナスはある1場面を集中して読んだ。その場面は弟子が魔法使いに幻術師と魔法使いは紙一重と言われて、魔法と言う視点からではなく幻術という視点から見て、自分の姿を偽る幻術に挑戦する場面だった。その場面では魔法使いが手には頭から年を集めて集中するのだというアドバイスをしていた。その結果、弟子は自分の姿を目標にしていた猫の姿に変えることができた。

(まさかね。)

ルピナスは半信半疑で家に帰り、集中して髪と目の色を想像した。そして、手に頭から念を送るように力であろうものを集めたようにしてみた。そして目を開けずに自室の出口へとむかい、洗面所へ物や壁にぶつかりながらフラフラと歩いていった。そして、鏡があるであろう場所までいくと深呼吸をしてからゆっくりと目を開けた。

「うわぁ····真っ黒だ。」

鏡には漆黒の髪に真っ黒の目を持つルピナスが写っていた。ルピナスは喜びに溢れかえった心をおさえながら研究室の扉をそっと開けた。そこにはいつも通りの両親がいた。ルピナスは母の髪と自分の髪を見比べた。

「同じだ。母さんと一緒の漆黒の髪だ····」

両親はルピナスに気づかずに作業を続けている。ルピナスは研究室を出ると。ルピナスは笑顔で夕食の準備を始めた。


次の日、ルピナスはいつも通りの姿で学校へ行った。いつも通りに学校へ行ったのにはルピナスの作戦があった。作戦とはいきなり真っ黒な髪と目で行くともっと気味悪い物として扱われるだろう。だからルピナスは転校しようと考えていた。転校しようと考えたのは理由がある、この面白くない孤独な学校生活を抜け出すためだ。ルピナスはずっと前から気づいていた。自分が本当は回りの子供たちのように楽しく友達と遊んだり、学んだりしたいと思っていることに。だが、この髪と目を持つ限り絶対にそんな日々は訪れないことも知っていた。なので今までは諦めていた。だが、この漆黒の髪と真っ黒な目を手に入れたのだ科学的には存在しない力である‘幻術’によって。自分の望むものを手に入れたことで踏み出すことのできなかった一歩を背中を押されたかのように今のルピナスは踏み出すことが出来るようになっていた。今日は転校の書類を貰うのが目的だ。勉強など右から左へときっと出ていくだろう。

(そういえば、母さんや父さんは今日から明後日まで帰らないのか····書類にサインが出来ないな。まぁいいか。)

ルピナスはにやけながら放課後が来るのを待った。


書類を貰ってから3日経った。今日は両親が帰ってくる日だ。

(机の上に書類を置いとけばサインをするだろうな。)

帰ったら両親が帰っているはずなので書類もできているはずだ。ルピナスがスキップにも似た足取りで家が見えるところまで行くと、家の前に黒いスーツを着た人達がいることがわかった。

ルピナスは不思議に思いながら家へとむかった。

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