神様とスーツの集団
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「飛び級、かぁ…」
先日、神梛に飛び級の話をされてからルピナスの頭は飛び級の事でいっぱいになっていた。心の中では飛び級には興味がある。周囲の人々との関係は良好ではないが、新しい知識を得るごとにまだまだ自分の知らない未知の知識をこれから知っていくことに喜びをおぼえていた。いや、ルピナスは気付いていないが"喜び"と表現するより"快楽"と表現する方がルピナスの心情に近いだろう。
飛び級をすれば、同年代の者より早く新しい知識を得られる。しかし、今は周囲の人々と馴染めていないが、これから仲良くなれる出来事があるかもしれない、という胸の奥底にある僅かな期待がルピナスを押し止めていた。
「友達をとるか、新しい知識を得る喜びをとるか、だよね…」
(飛び級をしてずっと独りは嫌だな)
そんなことを思いながら自室で課題をこなしていると玄関の方向から扉の閉まる音が静寂な家に響く。
(神梛さんかな?今日は早いな)
いつもより早く帰ってきた神梛に会うため、下の階に降りたが神梛の姿はなかった。その代わり玄関から扉の開く音と閉まる音がした。
(何処にいったんだろ)
疑問を頭に浮かべていると外が少し明るくなっていることに気づいた。
またもや疑問が浮かび、リビングの窓から外を見ると、家の前に数台の車が停まっている。どうやら、外が明るいのは車のライトが原因のようだ。
家の前には数台の車の他に見知らぬ人達が15人ほどいる。その上全員パリッとしたスーツを着ている。あからさまに怪しい。
ルピナスが何事かと思いながら窓の外にある光景を見ていると、玄関の扉の開く音がした。そしてリビングに入って来たのは神梛ではなく家の前にいたスーツ姿の集団のうちの1人の男だ。手には50cm程の高さのダンボールを抱えている。
「神梛さん! この資料は何処に置けばいいですか!?」
ルピナスと一瞬目が合ったかと思うと男は後ろを振り向き、大きな声で神梛に指示を求める。するとまたもや玄関の扉の開く音がして、神梛がリビングに入ってきた。
玄関に向かって「入れ」と一言、言うと1分ほど前まで家の前にいたスーツ姿の集団がゾロゾロと先ほどの男と同じ箱を手に持ち、リビングへと入ってくる。
「ルピナス、すまない。この人達は私の部下なんだ。突然で驚いていると思うが仕事上の都合でここに仕事の道具を置くことになった。本当にすまない」
神梛はそう言うと突然の事で固まったまま動けずにいる、ルピナスの目線に合わせてかがむ。
「ぼ、僕は全然いいですよ。それにこの家は神梛さんの家ですから」
「そう言ってもらえると、こちらも助かる…ありがとう。あ、この人達がこれから家に出入りすることになるが気にしないでくれ」
「はい」
ルピナスが神梛とそんな会話をしていると、1人の女性がそばにきた。
「へぇ~、この子が神梛さんが養子にとった子ですか?」
女性はそう言うとルピナスに「こんにちは」と言って微笑んだ。