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第9話 幼馴染

「やあ、おかえり。またやられてるね。発表を遅らせる事にして良かったよ」


 不死身にして良かったの間違いだろ? 俺間違いなく二回は死んでるんだけど……。それとも俺にしたように他の世界の俺を調達すればいいだけの話だからなのか?


「発表って?」

「樹君が帰って来たと発表をすれば、またみんな戻ってくれるじゃないか。同志を増やすためだ」


 どうせそういうことか。必要なのはこの世界にいた英雄視されてるヒーローな俺なんだよな。


「人はどうしてるんだ? なんであいつらがいる時には誰もいないんだ?」


 そう、さっき人が来るから帰るようにヒナタに言われた。あの場所は荒廃してない、それどころかキチンと清掃もされてる。人は間違いなくいるはずだ。


「博士がこの探知機と同じ機能を携帯に搭載させたの。奴らの出現先がわかるようにね。そして、公共の場所やなんかにもあいつらが出現したら警報が鳴るようにしてるの。予想ではないからその場にいれば、百パーセント逃げれるわけじゃないから被害が出てないわけじゃないけど、それで人はなんとか生活してるの」


 そう言われれば、青色に染まった地下鉄に赤い色も混じっていたような気がする。


「だから、君たちが必要なんだよ。君たちがいないといくら逃げても奴らが追ってくるからね」


 あいつらの動きは速い。逃げても逃げきれないだろう。

 必要か……。

 そういえば、気になっていた……。翔子を見る。


「なあ、翔子のそのメガネって、もしかして……」

「そうこれは探知機なの。普段はただの伊達メガネなんだけどね」


 不思議な感覚にとらわれる。さっきの幻覚の幼馴染の草介と本物の幼馴染の翔子。けれど、この翔子はこちらの世界の翔子なんだ。メガネを外せばいつもと変わりがないけれど。


「それって伊達メガネなんだ」

「すぐに確認がとれるからこの方がいいんだよね。それと……」

「それと?」

「樹があっちの私と区別つけられるようにと思って」


 確かにメガネがなければ感覚を間違えそうだ。高校生になった今でも翔子とは話もする仲だから。


「こっちでも……」


 と、言いかけてこちらの世界の俺はやられていなくなった事を思い出す。幼馴染だったかと聞きたかったが、嫌な質問だな。


「こっちでも幼馴染だったよ。樹とは」


 案外あっさりと答える。それだけの時が流れたのかもしれない。この世界に俺がいなくなってから。


「じゃあ、樹君。やってくれるよね?」

「え? いや……」


 そういえばさっきは話の途中だった。俺はまだ返事をしてない。けれど……このまま放ってはおけなかった。さっきだって脇腹の回復が終わってなくても赤いボタンを押していた。

 このまま知らない、俺には関係ないと言って、ここを立ち去ることはやはりできない。知ってしまった以上……そして一番の理由は翔子がここにいることだろう。例え別世界だとしても翔子を見捨てることはできない。さっきだって苦戦していたんだ。いつもあんな状態なんだろう。


「樹!」


 なぜかヒナタに責められるが俺はヒナタという人間を知らないんだけど。向こうは完全に俺とこの世界の俺とを同化してるな。


「わかった……俺にできることはするけど、それ以上はできない。それから、下校してここに寄る程度にしか来ることができない。それでいいか?」

「もちろんだよ!」

「あと、その科学かなんかの力でこの制服どうにかできないのか? これじゃあ困るんだけど」

「そうだったね。すっかり忘れていたよ」


 良かった。なんか不思議な道具が出てくるんだな?


「今度からは着替えて行ってもらうね」

「おい! これは……どうにもならないのか?」


 血まみれの切られまくりの制服……母親うんぬんよりも、ここから家に帰る道のりですら、大問題だよ。


「ああ、確か……ちょっと待っててくれ」


 と、博士は奥のドアに消えて行った。あの調子……道具じゃなさそうだな。

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