表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/55

第5話 少女は

 どうせただの不死身だろ。ヒーローが不死身って発想がもう違うよ。こういうのを自力でなんとかできるのがヒーローじゃないの? 力が前のままなら……ただやられても再生するだけじゃないか。悪は倒さないといけないんじゃないのか? 自分が治ってばっかりって意味ないだろ?


「そうだったね。ああ、とりあえず君の腕は裏庭に埋めといたから」


 気持ち悪い話をこいつは……あ、もう後は指だけになってる。腕の話をされたんでふと右手を見た。


 ガシャ


 はあー。一斉に俺に付けられていたモノが外れた。疲れたなんか。不死身になったみたいだけど、とりあえず年さえとればたいして今までと変わらないか。俺はベットから起き上がり、すぐに立ち上がる。


「樹君。早速なんだけど、はいこれ」


 指がまだ再生中なのになんか渡された。銃? ずいぶんゴツイな。もっとコンパクトに設計出来ないわけ? 目立って仕方ないよ。まあ、持たないんだけど。しかも今、肝心の指が使えないし。後は……刀って。何を目指してるんだよ? 形態が整ってないけど。腰に何かを巻かれた。


「なんだよこれ?」


 さっきから二度、ホールドされた記憶が蘇る。


「銃と刀をさしておくんだよ。両方持ってたら戦えないだろ?」

「……ああ」


 こいつ本当に俺に戦わさせる気満々だな。

 あ!

 ガシャ ガシャ

 なにかまた両腕にはめられた。嫌だよ。またまた蘇るホールドされた記憶。


「これなに?」

「刀や銃の扱い方を記録してるんだ。目で見た情景で判断してくれるから、樹君の能力と関係なく作動するから」


 俺がやる意味が見えなくなった。俺はただの生贄か。


「はいこれ」

「なにこれ?」


 不思議な道具をどんどん渡されてるんで、質問の山だよ。そうするうちに指も再生が終わりそうだ。やっとエグい状態から抜け出せる。


「これが敵の場所を表示する物だよ。上の赤いボタンでそこへ移動可能なんだ。この点滅が敵だからね。珍しい、一つか。ちょうどいい。じゃあ、頑張って行って来てくれ。帰りはその隣の青いボタンでここへ戻ってくるから」


 と、男は俺に持たせたその機械の赤いボタンを勝手に押した。敵の居場所へと行くボタンだよな。おい! 今指がやっと戻りそうなとこだぞ! ってか、敵って何? 何をやっつけるんだよ!?

 まあ、いくらなんでもそこまでは……なんて、こいつの科学力をなめてた。体が引っ張られる感覚。指がー! 気持ち悪い感覚だよ。肉がもぎ取られるような。そして、酷い乗り物酔いに一瞬で襲われる。こんなスマートフォンみたいなので!



 そして、気がつけば………見知らぬ場所にいる。さっきの点滅していた地点なんだろう。今はこの機械の画面の中心が点滅している。さっきは画面の端っこだったのに。ってことは、俺の周りにあいつが言う敵が、悪がいるってことだよな。

 周りを見渡してドキッとする。俺と同い年ぐらいの少女が一人立っていた。ここはどこかのビルの屋上でこのビルは結構高い。なんで少女がこんなところにいるんだ。しかもビルの端っこに立って向こう側を向いている。白いワンピースを着て長い黒髪をおろしている。髪もワンピースも風ではためいている。危ないよ。そんなに端っこにって……もしかして彼女は自殺する気か? ヤバイんじゃないか止めないと。


「おい! そんなとこでなにしてるの?」


 少女は振り返った。

 ニッコリとこちらを見て笑う。

 ああ、笑ってるし大丈夫か。それにしても、こんなところでなにしてるんだろ? 危ないな。


「危ないよ。そんなとこに立ってたら。こっちにおいで」


 と、万一の事もあるんで俺は少しずつ少女に近づく。場所が場所だ、自殺の線はまだ捨てられない。


 ニッコリと笑ってた少女の表情が一瞬で変わる。ギロっと、目が変わった。爬虫類のような目に変化する。そして、信じられない早さでこっちに向かってくる。

 グサっと、爪が、さっきまで髪を抑えていた普通の手だったはずが、鋭い刃物に変化していた。よけたものの多分左の脇腹を……あ、見ちゃったよ。なくなってる脇腹。また再生? とりあえず意識は失わなくてすんだ。

 振り返り少女を見る。ああ、あれなら仕方ないな。爪なんて可愛いものではなかった。少女の腕が刃物になっている。鋭く尖って銀色に輝いている右腕は俺の血がべったりとついてる。最悪な光景。


 可愛い少女がとんでもない化け物だった。銃を握る。あの刃物だと接近戦は嫌だ。が、敵の動きが速くて、狙いがつけられない。クソっ。こっちに来る。刀を左手で抜いて向かってきた少女を切った。左手だった分反応が遅くなってしまった。相打ちになってしまって、今度は肩をやられた。が、相手は不死身ではないようだ。しかもこの刀、切れ味が最高にいい。少女の化け物は上下に真っ二つになり青色の液体を流して倒れている。終わった……のか? 刀を戻して、一応さっきの機械の画面で確認する。点滅は消えている。一息吐いて、もう片方の青いボタンを押す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ