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24 潜伏場所は深い森って退屈すぎるわ





 用意周到に準備重ねて実行したらしいなコイツら。馬車の中は豪華仕様。夜もそのまま眠れそうなほどふかふかです。

…………って、ホントにそのまま寝るんかい!

 街道を外れて、人気の無い道を選んでいるらしい。途中食糧を買ったりするのに町や村に立ち寄るけど、その間また縛られて猿ぐつわ。

「申し訳ございません。私どもも心苦しいのです」なんてお前ら絶対思って無いだろコラ。

 当然お休みは野営。馬車内は男子禁制だけど、常にロッテン(長いので略した)がぴったり。道が悪くて話すとうっかり舌噛みそうだから、移動中は黙ってるけど、ウザい事この上無し。 窓も布が掛けられて、隙間からしか外が見られない。もちろん中も薄暗い。退屈退屈退屈、本当に退屈。


 お陰でぼんやり考える時間だけはたっぷりある。


 護衛だと思ってドア開けたのが、まず間違い。返事もせずに向こうにドア開けさせていたら、騒いで周りに気付かせる手もあったのに。

 でもさー護衛さんって日替わりで違うから、偽者と区別出来ないんだよね。微妙に王子達に会わせようと企む奴ばかりで、打ち解ける気にもならなかったし。

 ああでも、守ってくれるひとの名前くらい覚えてたら、この事態は避けられた…………いや、無理だな。 おそらくどこかの王家が絡んでる。その国に送られて、王様か王子様とケコーンか。「腕の中」って言ってたしなあ。

 なんとかしなくては、と焦りながらも順調に旅は進む。



「取り合えずの落ち着き先でございます。不自由をお掛け致しますが」

 そう言われて馬車を降りた。迫る山脈に抱かれた森の中、石壁に囲まれた…………

「教会?」

「寂れてはおりますが修道院でございます。サクラ様には、しばらくの間ここでお過ごしを」


 建物の中は静まり返っているけれど、全くの廃墟って感じでもなかった。つい最近まで住んでいるひとがいたのかもしれない。綺麗に磨きあげて住みやすくしているのは、わたしと悪の一味が使うところだけっぽくて、外見は寂れた修道院のまま。


 通された部屋には、クイーンサイズの寝台と高価そうな家具。ふうん。

「我が主の国にお連れ出来るまで、ここでご辛抱を」「お連れ出来るまでって、いつまで?」

 あ、黙りやがった。


 まあでも、これだけ大掛かりに準備したってことは、数日とか一二週間って感じじゃないわな。一ヶ月?いや半年?

「どうしてすぐにその“我が主”のところに行けないわけ?」

…………答えが返って来るなんて思って無いけどさ。


「こちらの敷地内では自由になさって頂いて構いません。しかし外の森には、狼や人喰い熊が居ますれば、決してお一人では歩きませぬように」

 ちょっと、それ軟禁って言わないか?



「退屈ではありましょうが、これも獣王子からサクラ様をお護りするため。ご辛抱を」

 だからー誰が頼んだそんなこと。



 慇懃無礼な奴らに、閉じ込められてる状況に変わりはない。そしてやっぱり部屋の中も退屈で仕方がない。三日で、いや三時間、三分で飽きました。


 食事は王宮と大して変わらない……のは無理な話だが、肉も卵もミルクも毎日出るし、野菜も新鮮だ。と、いうことは外にも協力者?あらら、逃げ切れる可能性がまた下がった。


 暇潰しに用意されていたのは、刺繍と本。自慢じゃないが裁縫関係との相性の悪さには自信がある。そして本。きっと貴族の婦女子に人気の恋愛小説だと思うんだけど、これがまた現代日本の出版物からみたら、お話にならないレベル。三ページでラストが解る、それも百パーセント。ああ、だるい。



 部屋から外に出るのは自由なんて、口ばっかり。悪役四人組の内、誰かが常に貼り付いている。修道院の庭と言っても、半分は畑だったりして、興味はあるけど勝手にいじるの気が引けるし。


 あれ?

 ここに来てからたまに、背後に視線を感じる。振り向くと誰もいないのに。

 まあいいや。それより脱出方法だ。

 どうせ本国から呼ばれるまで、あいつら動く気無いだろうし、それまでは身も貞操も危険はないだろう。むしろヤバイのはあいつらの国に着いてしまったあと。

 受け入れ準備が整ってから、満を持してやって来るわたしは、きっと即行結婚させられる。神の遣いたる娘との婚儀は盛大に執り行われ、さっさと喰われるんだ。やだやだ絶対やだ。


 私でも逃げられるチャンスはないか必死に考えた。奴らどのルートで国境を越えるつもりなんだろう…………


 考えていたら喉が渇いた。ちなみに今は夜明け前。早寝早起きは相変わらずなのだ。

 部屋には水差しがあるけど、冷たい水が飲みたい。ならば井戸まで行こうかな、と部屋を出た。

「サクラ様、どちらへ」

 やっぱ居たわ。ドアの外には顔の傷が目立つ兵士さん。

「井戸まで」

「お供します」

 このひとは、一味の中で一番下っぱらしい。他の三人から、気の毒なくらいぞんざいな扱いを受けていて、何も言わず従っている。身分差ってこの世界では絶対なんだな。そこは嫌なとこ。



 燭台を持って先を行く兵士さんの後を歩き、階段を降りて建物の裏手に回ると、しゃくりあげる小さな泣き声と、宥めるような言葉が聞こえてきた。

「うっうううっ」

「トマス、大丈夫だから。今洗って干してしまえば良いんだから」

「えぐっ、ごめんね、ごめんね」

「いいよもう」


 ああ、やっぱり居たんだ子どもたち。小さな子がオネショでもしちゃって、お姉さんキャラが始末してるのね。

 どれどれ、挨拶っと。

「おはー」あ、つい朝の子どもバラエティー口調が。

「あ、お、おはようございます」

 思いきし驚かれてる。姉ちゃんが土下座せんばかりに頭を下げた。

「ちょっと水が飲みたいんだけど、良い?」

「ははははい、どうぞ」

 近づいて驚いた。二人とも服がボロボロで、身体もガリガリだ。小さな子、トマスくんの腕なんて鶏ガラみたい。


「あまり近づくと、汚れますよ」

 自らそう言う、お姉さんが痛い。



「ひどい」

 自身の声が怒っている。

 私はまず、怯える子を抱き締めた。風呂にいつ入ったかも解らない、すえた臭いが鼻をついた。






更新までの間も、少しずつお気に入り登録が増えていて、ありがたいなあと思います。

早く話を進めて、見せ場(そんなものがあったのか?)にたどり着きたい!

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