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最果ての森  作者: 紅蘭
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第二話 謁見

テストやらなんやらで

忙しくて投稿遅れました。

申し訳ないです…


太陽が昇りきり、街は喧騒に満ちる真昼間。

活気に満ちた街と陽気そうな人々を見ると、この国、ジパングの国民性を窺うことができる。


「どうしよう…」


しかし、そういう国の街でも皆が楽しそうにしているわけではない。

ここにも1人、その例外がいる。


「はぁー…

逃げるか?

…いや…無理だよなぁ…」


桜威は桃花が言っていたように世界最高の傭兵の1人である。

その彼にとって、S級エリアの調査の依頼は条件にはよるが通常そんなに難しくない。

それでは何故、彼がこんなに憂鬱なオーラを纏っているのか?

その理由は依頼地の「最果ての森」にある。

「最果ての森」とはライカート帝国の西にある森でその先に何があるかは誰にもわからない。

数多の国が総出で突破を図り、腕に覚えのある傭兵達が何度もその森に挑戦したが越えることができた者は誰もいないのだ。

「最果ての森」にはAランク以上の生物しかいなく、しかもその中の生存競争に勝ち抜いた強者達が生息しているのである。

そういった理由で近年、この森に行く者は減少しており、行く者がいてもそれは自殺志願者だと周りに思われるだけなのだ。


「仕方ない…

とりあえず、皇帝様に会いに行くか…」


桜威は諦め顔でそう呟き、自分を安心させるために、皇帝に懇願すれば断れるかもしれないじゃないか、と何度も自分に言い聞かせている。







「それでは明日出発のライカート帝国の都のメレッサまでの護衛を300000パラでよろしいですか?」


「ああ。

よろしく頼むよ、桜威くん。」


「全力で頑張らせていただきます。」


あの後、しばらくブツブツ独り言を言って自分の心に現状を納得させた彼はお得意先の商人を廻ってライカート帝国までの護衛の依頼を探してきたのである。


傭兵の依頼の受け方は2つあり、1つは契約した仲介屋を介して依頼を受ける方法で、こちらは仲介屋に依頼金の交渉など依頼者とのコミュニケーションを全て任せることができるが、契約によって決まっている報酬を仲介屋に払わなければならない。

もう1つの手段は自分で依頼を見つけてくる方法だ。

この方法だと仲介屋を介さなくていいので仲介料を払わなくてすむが、金銭交渉が得意でない場合、不利な条件をつけられたり、ぼったくられたりする可能性がある。

普通、傭兵は基本的には仲介屋に任せるが急に金が必要になったり、ついでに依頼でも受けておくか、といった場合は後者の方法を選択する。

後者の方法を選択した時は今まで受けた依頼などで知り合った商人に自分の目的に合った仕事がないか尋ねて、依頼を受諾する手段をとることが多い。


桜威は今回、後者の方法で依頼を受けているわけだ。







「桜威くんはどうしてライカート帝国に行くのかな?」


「まぁ、ちょっと急ぎの依頼がありましてね…」


苦笑いを浮かべながら答える桜威。

どうやら、彼なりに気持ちの切り替えは済んでいるようである。


「これは申し訳ないことをした。

傭兵の方の依頼内容を詮索するのはルール違反でしたな。」


「いえいえ。

気になさらないでけっこうですよ、ヨハンさん。」


全然申し訳なさそうな様子を見せず、豪快に笑いながら謝るヨハンに桜威も笑いながら答える。


豪快な一面を見せるヨハンだがそれは彼の表の顔にすぎず、裏の顔はコロニー大公国の大商人の1人であり、世界各国に店舗を構えるヨハン薬局の店長だ。

ヨハン薬局とは薬を扱う店としては世界最大で店舗内では安くて品質の高い物を冒険者や一般の民衆を対象に売られている。

また、王族や店舗内の商品では治らない症状に対しても注文に応じて専門の治癒師が調合して販売している。

特に冒険者や一般の民衆向けの商品は当時としては画期的な発想で、この発想によりヨハン薬局は世界最大の薬局としての地位を築いていったのである。


そのヨハン薬局の店長であるヨハンの手腕は素晴らしく、しかも低ランクの冒険者にも買うことのできる商品の開発によって、冒険者の死亡率が急激に減少したため、ギルドとの繋がりも強い。

この世界ではギルドとの繋がり=国との繋がりのため、その人脈はかなり広いと言えるだろう。


「今回の依頼にも関係することなんですけど、僕以外の四覇はどこにいるかわかりますか?」


「…そんなに大変な依頼なのか。」


驚いた顔を見せるヨハン。


「はい。

それで四覇の居場所は?」


「申し訳ないが四覇の動向は今はわからないな。」


「そうですよね…

向こうに着いたら調べてもらえませんか?」


今すぐわからないことは予想していた様子の桜威。


「それなら構わないよ。

わかり次第、君に伝えよう。

しかし、四覇を招集するほどの依頼とはね…」


四覇とは“舞桜”“氷天”“堅土”“清風”の二つ名を持つ4人のことで、その由来は彼らが4人で全Sランクエリアを踏破したことからつけられた。

四覇の異名は世界中に知られていて、4人という極めて少数の人数ながら世界7大グループに選ばれている。


グループというのは冒険者同士が複数で依頼に当たるために徒党を組んだもののことであり、四覇の他にも円卓や黎明など有名なグループがある。

グループを組んだ者達は常にそのグループで行動する者達と普段は別々に行動し、有事の時に集まる2つのパターンがある。

しかし、グループの大多数は常に行動を共にしている。

確かにグループで依頼を受ける場合は1人が受け取る報酬は少なくなるが、確実に生存率は上がり、依頼の成功率も上がるからだ。


だが、極少数ながら四覇のように普段は単独行動をとっているグループもある。

四覇はそれぞれのメンバーが単独行動を好んでいるので普段はグループを組んでいないようだ。


「ちょっと僕の手に負えなさそうな依頼なんですよ。」


困った顔をしながら答える桜威。


「“舞桜”の手に負えない依頼とはますます気になるね。

おっ?着いたようだね。」








豪華できらびやかな大広間。

両端には皇帝を支える貴族達が並びたち、厳かな雰囲気をつくりだしている。

そして玉座には世界最大の帝国の皇帝であり、その長いライカート帝国の歴史の中でも名君として評価されているアルフレッド7世が座っており、その様は見る人に王たる者の威厳を感じさせる。


「ジパング皇国出身の傭兵、柊 桜威でございます。

皇帝閣下のご依頼により、参上いたしました。」


玉座の前に跪き、挨拶をする桜威。


「そのような儀礼的なものは時間の無駄だ。

“舞桜”よ、そなたの活躍は私の国まで伝わっておる。

その腕を買って、今回の依頼をしたわけだが依頼内容はわかっておるな?」


「はい、もちろんでございます。

しかし、1つお願いがあるのでございますが…」


「ほぉ…

もうすでにそなたの仲介屋と依頼内容は取り決めしてあるはずだが?」


「もちろん、わかっております。

ですが、おそれながらこのような無謀な依頼を受けるのでありますから、器が大きいと知られるアルフレッド7世皇帝閣下のこと、私の無礼なお願いなど歯牙にもかけずに叶えてくださるだろうと思いまして…」


アルフレッド突然、ワハハハハと大声で笑い、愉快そうに桜威に言う。


「そなたはなかなかの度胸の持ち主であるな。

それでこそ、そなたに依頼した甲斐があったというものだ。

よろしい、そのささいな願いとやら言ってみろ。」


「ありがとうございます。

お願いと申しますのは今回のご依頼、申し訳ありませんが私だけでは力不足と考えますので四覇でご依頼をお受けさせて頂きたいのです。」


「ふむ…

それはこちらにとっても願ったり叶ったりのことであるな。

そなたのその願い聞き入れよう。

招集するがよい。」


アルフレッドは少し考える様子を見せてから許可を出した。


「誠にありがとうございます。

精一杯、ご依頼を頑張らせていただく所存でございますのでよろしくお願いいたします。」


「うむ。

そなたらの成功を祈っておる。」






(とりあえず、四覇で依頼にあたることを認めてもらえて一安心だな。

後はさっさと見つけて集合させないと…)

まぁ、まずは自分に労いの一杯だな、と呟いて桜威は宿に向かう足を早めた。


1パラ=1円で物価などは日本と同じです。


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