地球温暖化阻止に燃える男 その動機
「二酸化炭素の排出削減による温暖化抑止は、もう諦めましょう。」
ここは国連総会会場。日本代表が、こう口を開いた。
「『これだけ減らそう減らそうって言ってるのに、今でも増えてるじゃん?』というのは別にしてもですね。無理です。皆さんも薄々気がついているでしょう?
例え今日から二酸化炭素の排出がゼロになっても、大気中の二酸化炭素濃度はそのままなんですよ?
産業革命以前が280ppm程度だったのに対し、現在は420ppm。すでに地球はアッチッチです。
新しく借金をしなくても、これまでの借金が無くなるわけじゃないんです。」
せやな、と一様に黙る各国代表。
「別に、じゃあみんなで仲良く焼け死のうぜ、と言ってるわけじゃありません。別の方法で温暖化を止めようというのです。二酸化炭素排出抑制に使っていた莫大な費用を使って、もっと効果的に地球を冷やしましょう。」
そんな方法があるならな、と一様に黙る各国代表。
「まずはですね。地球上の道路や建物の屋根、あらゆる人工物を白く塗ります。太陽の熱をそのまま宇宙に跳ね返すんです。
これだけでも幾らか冷えます。」
なんやお前意外と賢いやんけ、と驚きの表情で一様に黙る各国代表。
「でもこれだけじゃ足りません。あと一つ、太陽を直接遮る【傘】が欲しい。ここからが皆さんの金の出しどころです。
地球と太陽を結ぶ一直線上にね、重力が拮抗する場所、いわゆる【ラグランジュポイント】ってのがあるんです。
ここにね。でっかい傘をわんさか作るんです。
そうすりゃもう、ガンガン冷えます。多分。
ね? 皆さん。これで行きましょう。
我慢に我慢を重ねた挙句の現状維持じゃなくて、快適な夏を私らの手で取り戻しましょう。」
なるほどなぁ、と納得する各国代表。満場一致の拍手である。
首尾よく世界の承認を取り付けたこの男。正体はただの夏の甲子園マニアである。
七回制やドーム球場開催を阻止するためだけに、全世界に総額数千兆円の金を強請った男。
今はまだ、彼の本性を誰も知らない。
おしまい




