この世界の生存戦略
次の日、この世界の事は自分で調べるのもいいけど、まだ子供なんだからその特権を活かし、大人に頼ることを覚えた私は、私をチクチクいびっていた、侍女に思い切って自らを声をかけてみた。
「王家の縁結びについて勉強したいので、そのことが書いている本はありますか?」
と聞いてみたところ、そのお局……いや侍女の名前はエリザと言うそうで、エリザさんは私の言葉にいたく感動し、
「やっと……やっとこのエリザの教育が実を結びました……! 当初はワガママ放題たった頃は辞職もすら考えたのですが、このエリザ、お嬢様の成長に感動いたしました! すぐに本をお持ちしますのでお待ちください……!」
と、泣きながら関連資料を山ほどを持って来てくれた。
いままので私、そんなにヤバかったんですね……申し訳ない……。
さて、気を取り直して読み漁ること数時間——。
なんとか学園と王子と結婚以外に妖精王ルーファスに会う方法はないかと調べると、あのお父様が言っていた『王家の縁結び』なる儀式は仲介者も同席可、という有力な情報をゲットした。
しかも、ここが肝で王家に縁を紹介した優秀な仲介人には、『仲介人監察面談』という精霊庁の仮謁見が必ず入るという事務規定があるらしい。
なんというか……乙女ゲームの世界なのに絶妙に官公庁っぽい手続きに親近感が湧く。あるよね、そういうよくわからない手続き。前職で見たことあるもん。
ん? という事は……⁇
私は名案を閃く。
そういえばこの間、第三王子のアルベルト様が『兄の第二王子に婚約者が居ない』って言ってなかった? ということは、その人に私が婚約者を紹介できれば、『仲介人監察面談 』とやらに進める可能性があるのでは?
しかもなんと、二件の王家の縁談を仲介した人は『国家認定仲人』とやらに選出され、精霊庁の長である妖精王への謁見後、精霊庁に就職も可能らしい。マジか! これ絶対にこの世界の国家資格じゃん! カッコいい!
ということはワンチャン推しと働けるチャンス⁉ いやいやイケメンは観賞用……!
「……待って?」
よく考えたら王家のご縁を扱った仲人資格って、これもう完全にこの世界の【国家認定ブライダル業者】じゃない?
だったら私、このそのまま【貴族専門結婚相談所】開けばよくない?
……というか、よくよく考えたら、前世の私は人事職で採用担当だった。
新卒採用も中途採用もそこそこ見てきたし、履歴書と数分の面接で大体の人のタイプを見極めるくらいのスキルはあったと思う。
でもだからこそ、婚活はうまくいかなかったんですが……。
無意識に『面接官目線』でお相手を見てしまって、「自己PRに一貫性がない……」とか「志望動機が弱い……」「ストレスに弱そう」とかお見合い中に考えてしまっていたので……。
結局、お見合い相手の人柄じゃなくて『将来性』とか『条件』で判断してしまっていたので。
でもこの世界では、それを『仕事』にすればいいじゃん!
私は、婚活失敗の元人事。だからこそ、他人のご縁なら冷静に見定められる。
前世では、私自身が結婚相談所の会員というそのサービスを受ける側だった。だけど今は違う。
私は『仲人』として、誰かの未来をつなぐ側になれる。
もし将来この相談所が成功すれば、恐らく推し活しながら生活できるじゃん。むしろ、 婚活の地獄を知っている私だからこそできる仕事だし! 前世の経歴だって活かせる!
王子や貴族の縁を繋ぐ仲人として有資格者になることで、断罪フラグも潰せて、推しにも会えて、将来の生計も立てられる。
そしたら私にだって良いご縁に恵まれるかもしれないし、婚活なんてやるなら若ければ若いほどいいんだから、今度こそ『選ぶ側』になれるじゃん!
この凄い仲人に選ばれれば、夢の結婚相談所開設にすごく役立ちそう!
制度の本をよく読むと、『王家へのご縁の二件の紹介には婚約成立までは要らない』ともある。つまり最終結婚しなくてもいいらしい。
「うん、それならどうにかできそう!」
ならば手順はこうだ!
一件目:攻略対象外の第二王子に婚約者紹介。『仲介人監察面談』 に進む。
二件目:いずれ今の私の婚約者の第三王子との婚約を、双方合意の「婚約移譲」で最適な相手へ渡す。もちろんその相手は私自身か探す。なので破談ではなく移譲。これで断罪フラグの根も消え、精霊庁の『国家認定仲人』 の資格をゲット。私は自由な身になる!
そしてどちらかの王子が結婚となれば結婚式で推しの妖精王ルーファス様にも会える! 結婚しなくともルーファス様所属の精霊庁から『国家認定仲人』の資格を貰い、仲人しなはらの推し活も夢じゃない!
正当な手続きでゲームの世界を動かして、推しに会う。完璧。
私は、だれとも喧嘩せず、だれも踏みにじらず、淡々と縁を結ぶ。
嫌われ過ぎても将来殺されるかもしれないし、ならばやらせて頂こうじゃないか、親戚のお節介おばさん的なポジション!
「リディア様、アルベルト様よりお手紙が届いております」
新たな決意をしたところで、ドアをメイドにノックされる。
今いいところだったのに……!
「はいっ! 今開けます!」
急いで、いままで書いていたメモを片付ける。
ドアを開けるとお局……じゃなくてエリザが居て、エリザが片腕を曲げたポーズをしていているかと思えばその腕に小さな青い小鳥が乗っている。
「え……?」
「お嬢様、早くお受け取りください」
そう言って小鳥が乗った腕を私にグイっと差し出すエリザ。
え? 手紙じゃないの?
エリザの「早くしてちょうだい」と言わんばかりの圧に耐えられなかった私は、小鳥の前にそおっと両手を差し出すと、小鳥が直ぐに飛び乗って来て、私を見上げて
「ピチュン!」
と鳴いたかと思えばその姿が一瞬にして手紙に変わった。
もしかして魔法! そうだすっかり忘れてたファンタジー世界!
「しかとお渡しいたしました」
そう言って去っていくエリザを見送り、手紙を開けるとそこには、
『今度、私の親友を紹介しよう。君もきっとすぐに仲良くなれる』
と、書いてあった。
「王子の親友……? ってまさかゲームの攻略対象のあの人じゃん!」




