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第3話 異世界転移!そして

幸運:512。

その異常な数値の前で女神様は完全に硬直していた。


まぁ2桁も数字が違えばなぁ。

力とか敏捷なんて5だよ5。

幸運の100分の1しかないんだから。


「あのぉフォーチュン様? やっぱり512って凄いんですよね?」


一応確認しておく。

もしかしたら、本当にもしかしたらだけど大したことがない可能性もある。

その場合、他の数値が壊滅的に低すぎるということになってしまうのだが。


呆然とステータスウィンドウを見つめていた女神様が俺の言葉に反応して視線をこちらに移してきた。

ぽかんと開いた口がアホ可愛い。


「凄いか、ですって? 凄いどころか異常よ! 無料チケットで最高レアを引いたときのような白々しいこと言わないで! 幸運なんてレベルを上げてもほとんど上がらないのに500って! あぁどうしよ・・・化け物を産み出しちゃったかも」


「あっはっは! 化け物とは酷いなぁ」


「酷くないわよ! もう確定しちゃったから取り返しがつかないし・・・。仕方ない。ユキヒロ!」


「はい?」


いきなり怖い顔をして名前を呼ばれる。

でも小さな女の子の怒った顔って可愛いよね。

しかも金髪ツインテール。

これでツンデレならまさにパーフェクト。


「決まったものは仕方ないからこのステータスで貴方をオルシャンという異世界に転移させるわ。そこで好きに生きなさい。でも! 一つだけ制限を付けさせて!」


そう言うとフォーチュン様はピッと人差し指を俺に突き立ててきた。

何か冗談を言おうかと思ったが、目を見てやめた。

物凄く真剣な目をしていたから。


「制限って?」


「賭け事で大儲けするのはやめて。貴方の幸運だとちょっと世界に影響が出過ぎちゃいそうなのよ。どうしてもって時は私に相談して」


首にかけていたネックレスを外して俺に差し出しながらフォーチュン様はお願いしてきた。


「良いですけど、これは?」


受け取った金色のネックレスを弄りながら尋ねる。

そもそも冒険者になりたいのだからカジノみたいなところに入り浸る気はなかったし、そんな制限を付けられても問題はない。


それよりもこのネックレスが気になる。

先程の口ぶりだと通信機器のようなアイテムなのだろうか?

というか、パーフェクトロリっ子がさっきまで付けていたネックレス・・・か。


「何をしようとしているの?」


「ふぇ? いえいえ! 匂いをかごうなんてしてませんよ?」


「やめんかこの変態! ・・・まったく。それは幸運のネックレスよ。それを付けて教会で祈ったら私と話が出来るから何か相談がある時は声をかけて頂戴。あぁ本当は異世界で生きていく貴方をジュースでも飲みながら観察しようと思ってたのに・・・。目が離せなくなっちゃったじゃない」


そんな事を言われても困る。

サイコロをぶちまけたのは俺ではなくて女神様なのだから。


まぁそんな事を言って機嫌を損ねられても困るので大人な俺はぐっと我慢してネックレスを付けようとする。


が、案外難しい。


「あ、あのフォーチュン様。これどうやってつけるんですか?」


「そんなのも付けられないの? 不器用ね貴方」


「いやいや普通の男子ならそんなものでしょ。付けたこと無いもん」


まったく、とぶつぶつ言いながらフォーチュン様が椅子に座った俺の横に来るとネックレスを装着させようとしてくれる。

しかも前から。

その際に首に腕を回される格好になり、良い匂いがするし、パーフェクトロリの絶世の美顔を近くで拝めることが出来、早速幸運値の高さを実感する。


「はい、出来たわよ」


「すーはーすーはー」


「やめんか! 変態!」


ぱちん!

乾いた音とともに女神様の平手が炸裂。

こ、これも幸運値の高さか!

我々にとってはご褒美です。


「さて、じゃあもう飛ばすわよ。貴方が近くに居ると身の危険を感じるわ」


「すごく不名誉ですが、わかりました。お世話になりました」


深く頭を下げる。

この言葉に偽りはない。

本当にフォーチュン様には感謝をしている。

ただ死んでいくだけだったはずの俺に新しい人生のチャンスを与えてくれたのだから。


夢だった、夢にまで見た冒険者。

それに俺はなれる。


心躍らせた俺が顔を上げた時、そこには白い空間だけが広がっていた。



ーー頑張りなさいよ。



その言葉を耳にした瞬間、俺の意識は途絶えた。






「ーーーい!」


ん?

声が聞こえる?

あれ?ここは何処だ?


「ーい! ーーーーのか!」


怒鳴ってる人が居るな。

近所迷惑だからやめて欲しい。

しかも大体こういう場合、怒鳴ってる人と目があっちゃって難癖を付けられるんだよなぁ。

本当、運が悪い。


「ー!? おめぇだ! こら! 無視してんじゃねぇぞ!!」


あぁやっぱり絡まれてる気がする。

こういう時は謝るに限るよな。


ってあれ?

俺何で絡まれてるんだ?

というより、俺って異世界に転移したはずじゃ・・・。



その瞬間、視界が一気に開けた。


朝一番に真っ暗な部屋でカーテンを一気に開け放ったような、カメラのフラッシュを間違って覗き込んでしまったような。

そんな暴力的な白が俺の目を襲った。


「うお! 眩しい!!」


「んだとこらあ! 誰がハゲじゃあ!!」


目を瞬かせて、徐々に明るさに慣らしていく。

数秒ほどすると真っ白だった世界に徐々に人の姿が見えてきた。


ぱっと見た感じ10人程か?

それぞれが手に剣やら斧やら物騒なものを持ってこちらを睨んでいる。

その一番先頭のつるつる頭の男が先程から怒鳴っていたのだろう。

頭のてっぺんまで真っ赤にしてツバを吐きながら今も何事かを叫んでいた。


「いや、そういう意味で眩しいって言ったんじゃないですよ」


「そういう意味ってなんじゃ!?」


「禿げてて眩しいですねって意味じゃないんです」


「ハッキリ言いすぎだろが! ごらぁ!!」


火に油。

ハゲ男は完全に怒り心頭らしく手に持った斧で斬りかかっていた。


え、あの斧って本物だよね?

当たったら死ぬよね?


「うおお!?」


「!? この距離で避けただと!?」


間一髪。

斜めに振り下ろされた斧は俺の服をかすめて地面に深々と突き刺さった。

固そうな地面に食い込む凶器を見て一気に血の気が引いた俺の耳に悲痛な叫び声が届いた。


「あ、危ない!!」


「え?」


刹那、振り返った俺のすぐ横を別の男の振り下ろした剣が通過した。

もし振り返っていなかったら頭がスイカ割りのスイカのようになっていたかも知れない。

そして運が良いことに俺に避けられた剣は地面に叩きつけられた時の衝撃で真っ二つに折れ、その切っ先が先程斧を振り下ろしたハゲ男の腕を深々と切り裂いた。


「ぎゃあああ!? 俺の腕があああ!!」


「お、お頭ぁぁ!!」


腕を抑えてうずくまるハゲに群がる10人ほどの厳ついおっさん達。


本当に状況がよくわからない。

何故襲われたのかわからないし、ここが何処だがわからないし、このおっさん達が何者かもわからない。


(そういえばさっきの声は?)


さっき俺を助けてくれた女性の叫び声。

あれがなかったら異世界転移して10秒ほどで人生が終了していたかも知れない。

そうなっていたら多分世界最速だ。


俺が声の主を探そうとおっさん達から目を離した一瞬でそれは起こった。


うぐ! がは! ごええ!


等と汚い汚い苦悶の声が聞こえたかと思うと、10人ほど居たおっさん達が全員地面に倒れ伏した。


一瞬。

本当に一瞬だった。

俺がおっさん達から目を離したのは1秒か2秒。

その隙に全員がやられていた。


そしてそこに立っていたのは。


「女騎士さま?」


光り輝く銀の鎧。

美しい金髪は邪魔にならないように結上げられており、その瞳は空のような蒼。

伸びた背筋はまさに漫画で見る騎士そのもの。


すごい、本物だ。

本物の女騎士さまだ!


「凄いですね! 一瞬すぎて何が起こったかーー」


俺の言葉は最後まで発せられることはなかった。

だって、今目の前に、正確にいうと喉のすぐ先に、鈍く光る剣の切っ先が突きつけられているのだから。


「お前は何者だ」


冷たく言い放たれたその声はさっきの女性のものとは違うものだった。



というか、人に名前を聞く時は自分から名乗りましょうね!

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