薬師の仕事始めます!
村の診療所の中は、懐かしい薬草の匂いで満ちていた。
亡くなったアメリアの父とセルフィスは医師仲間であるとは聞いてはいるが、詳しい経緯については彼女はなにも知らない。
乾燥した薬草を、飲みやすいように粉末状になるまですりつぶす作業を手伝いながらアメリアはセルフィスの横顔をぼんやりと眺めていた。
澄んだ水色の瞳に整った顔立ち。背はすらりと高く柔らかい物腰で、肩口にかかる灰色の髪の毛を作業の邪魔にならないように今は頭の後ろでひとつにしばっている。
もともと貴族の出身であるとはぼんやりとわかってはいる。
知っているのはそれくらいで、そういえばセルフィスのことは何も知らないことに、アメリアは今更ながらに気づいたのだ。
「やはり、私の予備の白衣なのでアメリア様にはサイズが大きかったようですね」
「え、えぇはい!・・いえ、そんなことないですよ。ブカブカなところは折り曲げればまったく気になりません!むしろ貸して頂けただけでもありがたいです!」
唐突に声をかけられ、アメリアの思考は現実へと引き戻される。
おまけにセルフィスに向かって変な返事をしてしまったので、恥ずかしくって顔が真っ赤だ。
森を出た後、アメリアはセルフィスが暮らしている村へと向かったのだ。
彼は、その村では唯一の医師だ。仕事の内容は医師というよりは昔ながらの治療師といった方がいいだろうか。
昔、まだアメリアの両親が生きているときは、ちょくちょくと彼の手伝いをしに両親は自分を連れてよくこの村にきていた。
彼女は医師である両親や、セルフィスの仕事を見ているうちに手伝いたいと思い、自然と薬師としての道を歩み、彼らの手伝いをするようになったのだ。
小さい頃からこの村には通っているので、もちろん村の皆とも顔馴染みでもある。
村の皆とは久しぶりの再会を喜んだあと、今まで着ていたドレスから村の女の子にお下がりをもらうと村娘の服へと着替える。
さすがに森を歩いたり、クーちゃんと遊んだりもしたので裾の長いドレスは足元や袖がぼろぼろだ。
それでなくても動きにくかったので、着替えるとほっと人心地についた気分になる。
ほどなく彼女は、村についてすぐにセルフィスの仕事を手伝いたいと申し出たのだ。村人たちは喜び、セルフィスも了承してくれた。
ただでさえ村には医師がセルフィスだけで、また薬師としてセルフィスを手伝ってくれるアメリアを村人たちは心から歓迎したのだ。
彼女は再び、薬師の仕事に就くことがきたのだ。




