ずっと会いたかった人
どれくらい走っただろうか――。
森の入口にさしかかったときに、その人は立ち止まるとこちらを振り向き、優しい笑顔を向けてくれる。
「久しぶりですね。アメリア様、お元気そうで本当に良かった」
「セルフィス様ですよね・・本当に、幻とかじゃないですよね・・」
「はい、そうですよ」
アメリアは、目を潤ませるとセルフィスに向かい飛びついたのだ。
子犬のように彼女は飛びついてきたので、セルフィスは勢いのあまり尻もちをつきながらも、なんとか彼女を受け止める。
「うっ・・ぐす・・ぐす・・会いたかったです」
「こらこら・・・涙で顔がぐしゃぐしゃですよ。それに、鼻もかまないと・・」
「あ、ありりゃどうございます・・」
ハンカチを手渡され、アメリアは思いっきりずぴーと鼻をかんだのだ。
その光景に、昔と変わっていない彼女の姿にセルフィスは微笑ましく思う。
スミレ色の瞳に、青みがかった銀色の長く美しい髪。黙っていれば、天使のように愛らしい貴族のご令嬢なのに、令嬢らしからぬ裏表のない彼女の性格をセルフィスはとても気に入っていた。
セルフィスは20代前半の若者で、近くの村の治療師をしている。
もとは貴族の医師として王宮で働いていたが、訳あって全てを捨てて村で暮らしていたのだ。
亡くなった彼女の父親アルベルトとは貴族だった頃からの付き合いで、お互いに治療法などの情報交換を行う仲であり信頼関係を築いていた。セルフィスは彼女の父親を医師として心から尊敬していたのだ。
たびたびアルベルトがセルフィスのいる村を訪れるときには、子供の頃からアメリアはよく父親に付いてきており、彼もアメリアのことを妹のように、とてもかわいがっていたのだ。
「貴族のご令嬢なのに、はしたないのでは・・?」
「もう、いいんです。身分剥奪のうえ国外追放になりましたから」
少しからかうように言ったセルフィスの言葉にアメリアは頬を膨らませる。
・・?
何かあったのかと彼が聞こうと思った時・・突然辺りに悲鳴が響いたのだ。
「た、助けてくれ~!」
「ば、化け物だ・・食われたくないよ~」
「この森には化け物がいたんだ~!」
あの声はどうやら盗賊たちの声、いや悲鳴のようだ。
セルフィスは吹きだすと、苦笑を浮かべる。
「どうやら、アメリア様のお友達に追いかけられているみたいですね」
「クーちゃんは、化け物じゃないのにあの盗賊のおじさん達ひどい!」
そういうと、彼女は小さく頬を膨らませたのだ。




