これからは平民として生きていきます!
青くてとてもきれいな空。 あの人の瞳と同じ色だ――
これからは、きっと良いことが起こる。その前兆だと彼女はそう捉えたのだ。
侯爵家に引き取られてからは、空をのんびりと見上げる余裕なんてなかったなあ、
アメリアは男爵令嬢ではあったが、もともと貴族社会を嫌って距離を取っていた医師の両親と、貧しくも慎ましやかに、それでも幸せに暮らしていた。
だが、その両親を流行り病で亡くし、母の実家を継いだ叔父夫婦に養女として引き取られたのだ。
そして本格的な淑女教育が始まり、気がつけば15歳のときに一目ぼれしたといきなりフェルナンド殿下に言われ婚約も決まってしまい・・それからは休む暇もないほど忙しい毎日がただ過ぎていった。
叔父様も叔母様も見栄っ張りで富と権力が大好きな人たち、アメリアとは考え方が根本的に違っていた。本音を言えば、豊かな暮らしだが窮屈で息が詰まりそうだった。
今考えれば、叔父様はなんとしても私を王族に嫁がせて、王家との繋がりをもとうと野心を抱いていたのかもしれない。
だが、そんな叔父が当主を務める侯爵家とも、昨日で完全に縁が切れたのだ。
昨日、行政官から今後の処分を聞かされた後――
顔を青くし、血相を変えた叔父がやってきたのだ。
お前とは完全に絶縁する!この一族の恥さらし!二度と顔を見せるな!と散々私のことを罵って去っていったのだ。
私は叔父の背中を見ながら、目を潤ませ心の中で感謝を伝える。親族の縁を切ってくれて本当にありがとう!
きっと叔父様は、私のことを想いこれからは自由に生きていいと言ってくれたのだ。
叔父様たちにも何らかの処分が下されたようだが、私より重い処分でもないし、命を取られることもないはずだ。
だったらきっと、叔父様たちにも新しい未来が訪れる。そう考えると、とても清々しい気分になった。
そしてアメリアは兵に連れられて、国境付近にたどり着きようやくそこで解放されたのだ。
兵たちの姿が小さくなり完全に見えなくなったのを確認すると、アメリアはこの辺りで一番大きな樫の木を探し森の中へと向かう。
樫の大木を見つけると、辺りに誰も人がいないことを確認する。そして木の根元を慎重に掘り進めたのだ。
少しづつ掘り進め、やがて土の中から小さな革袋が出てくると丁寧に土を払い落とす。
「良かった・・。誰かに掘り起こされていなくて」
彼女は、ほっと胸をなでおろしたのだ。
そして慎重に袋の紐をほどくと、中からはたくさんの銅貨と僅かな銀貨が詰まっていた。
そうここは昔、両親と一緒に診察に行った帰りに通った道。アメリアがよく知っている村の近くなのだ。




