第6話 不運ちゃんとなかよし大作戦。後編
ぢゅらおです。
今年1年皆様お疲れ様でした!
来年はより良い1年となりますよう心よりお祈り致します!
「おっまたせしましたぁ〜! ・・・森成くんどうしたんですか? 角でブツブツと」
「言われた通り教室の隅で自分の罪を数えていたんですが...」
「え!? あれただ教室にいて下さいっていう意味ですよ?」
「いや僕もそう思ったんですが、神見さんを怒らせてしまったのかと思ってとりあえず従おうと...」
「あの全く怒ってないですよ? 本当にさっきは私がぼーっとしてたのが恥ずかしかっただけなので」
「・・・な、それならそうと言ってくださいよ...」
へな〜っと膝から崩れ落ちた僕のことを見て、神見さんは「すいません...次から気を付けます...」と謝ると起き上がるために手を貸してくれた。
「・・・じゃあ僕先に帰りますね」
「え?」
「え?」
「え? の次は?」
「おぉー」
「おぉー」
「満足しました?」
「いやまだですよ!」
両手を腰に当ててほっぺをぷくぅっと膨らませて神見さんはむむむと目を細める。
「私はまだ満足してません・・・」
「──────金ですか」
「はい。とりあえず初めは5桁くらい貰わないとですね・・・」
「しっかりと貰っていくじゃないですか」
「はっ! 違います! お金じゃないですよ! 私をなんだと思ってるんですか!」
色んな意味でおかしい人だと思ってますと言ったら怒りますか?
「──────神見さんですね」
「あ、はい正解です!」
「やったーわーい」
これでもかと棒読みで返答した僕。神見さんはますます顔が険しくなっていた。
「森成くんって本心で私のことからかってますよね?」
「そんな訳・・・ないですよ」
「それ確信犯の間でしたよ」
「・・・ごめんなさい、実は結構神見さんのこと色んな意味でおかしい人だと思ってました」
「色んな意味ってなんですか! 色んな意味って!」
「今の時代は多様性ですから良いと思いますけど・・・?」
「あ、確かにですね〜!」
「──────そんなところですよ。神見さん」
はぁあ・・・と大きくため息をつくと、神見さんが張り合うように大きくため息を吐いた。
ため息って張り合うものじゃないですよ神見さん。
「もう森成くんに私は本気で怒ってます・・・」
「え! ご、ごめんなさい!」
からかい過ぎたことに気付かなかった僕は心の底から謝った。何がどうと人が本心から不快を感じたら謝るべきだと僕は知っている。
しかし謝ってから改めて神見さんを見ると、ニヤニヤと憎たらしい笑みを浮かべていた。
はっはっはっ・・・これはこれは──────
「神見さんは1回本当に痛い目を見た方がいいですね」
「え? なんて言いました?」
へっ?と耳を傾ける神見さんを無視して僕はトコトコと静かに教室を出ていった。
「ってちょっと待った─────!!」
廊下を歩いていて後ろから大声が聞こえたので振り向くと神見さんがタックルをする姿勢でこちらに突っ込んでくるのがわかった。
どうしようかと迷ったが避けて目の前で怪我されても困るので、僕はとりあえず受け止める姿勢をとった。
あれ、けどこれ受け止める形になったら抱き合う形になりませんか、これ・・・
悩んでいる間にも神見さんは目と鼻の先まで近付いて来ていた。
僕はもう全ての考えを捨て去り、ただ無心で受け入れることを決意した。
「もりなりく──────ん!! あ」
「・・・」
さっきまで聞こえていた声が今は怖いくらいに静かだ。というか名前呼ばれた後に「あ」って言ってなかった?
閉じていた瞼を少しずつ開くと、そこに人の姿は一切ない。
「あれ、神見さんどこ行きました?」
「森成くん下です・・・」
弱々しい声が股の下から聞こえたので目を下に向けると、床で手を伸ばして伏せている神見さんの姿が──────
「えええ!!? 神見さん大丈夫ですか!」
「あの非常に情けない話なのですが、血が出ちゃったので保健室に連れて行って貰えると・・・」
「もちろんですよ! 乗ってください!」
僕が腰を貸すためにスっとその場で屈むと神見さんは「あの...森成くん」と気まずそうにしている。
「何ぼやっとしてるんですか! この間にも傷口に菌がうようよと入るんですよ!」
「え、でも・・・」
「いいから!」
「・・・はい」
そして背中に重みが乗っかったのを確認すると僕は保健室まで神見さんを乗せてダッシュした。
※※※※※※
「そういえば今日は保健室の先生がいないって言ってたよな・・・」
「あの...」
「神見さんはそこでいいから! 座ってて!」
「!」
「事後報告にはなるけど、薬は塗っといた方がいいもんな・・・」
「今、森成くん私に──────」
「神見さん今から薬僕が塗りますけど、何か気にすることある!?」
「──────ない...です」
僕は無我無心で神見さんの傷口を消毒した。ある程度自分で出来る処置を終わらせた後に神見さんの顔を確認すると、見たことないくらい赤くなっていた。
「・・・神見さん?」
「森成くん、男らし過ぎます...ふぁ──────」
口から魂が抜けたように脱力している神見さん。突然言われた「男らしい」という言葉に僕は今この時までどんな行動をとったか冷静に考えた。
考えた結果。僕は一体何しているんだ!!?
怪我した女子背負って、保健室で許可を取ったとしても女子の膝にベタベタ触って、やってる事犯罪者じゃないか・・・?
※※※※※※
「・・・私何してたんでしたっけ」
うーんっと重い頭を起こして周りを見渡すと、神見さんは目の前で土下座している人の姿を見た。その姿はもちろん僕──────
「あの私本当に何してました──────」
「神見さん、このバカで変態で人のフリをしているこの怪獣をどうか殺してください」
「キャラだけで見たらなかなかですけど...私の前にいるのは森成くんですよ」
「傷口を舐め回されて、それでも神見さんは僕のことを人間だと言ってくれるんですか」
「言い方気持ち悪いですけど、決してそんなことしてなかったですよね!?」
僕の肩を揺する神見さんだったが、僕の心はもう参っていた。目の前のことに集中して、周りの別のことが見えなくなる。これで僕は何度も何度も色んな人を不幸にしてきた。
なんで僕はいつもこうなんだよ・・・くそっ
「あの、そんな顔しないでください」
「え──────」
そう言われ僕は遠くにあった鏡を見ると、この世全てに嫌気がさしたような顔をしていた。
「森成くん、あのさっきは言葉が出なくてあれでしたけど、嬉しかったですよ?」
「え?」
「森成くんが必死になって私を助けようとしているの、正直かっこよかったです──────」
「お節介だと思わなかったですか、たかが擦り傷で」
「されど擦り傷です」
くすすと微笑んだ神見さんは、弾けるような笑顔で続ける。
「傷口に菌入ったら危ないですもんね!」
「ははっ...はい。危ないんです」
僕達はお互いに笑い合う。意味もなく。ただ素直に。
「でももし森成くんがまだ反省しなければいけない気持ちが残ってるなら──────」
「・・・はい」
「さっきみたいに敬語じゃなくて、その...友達っぽく話してくれませんか?」
「え? それだけ?」
「はいっそれだけが嬉しいんですよっ!」
僕はふと瑚白の言った言葉を思い出した。
(タメ語の方がいい...か)
僕は心内で軽く笑うと神見さんに問いかける。
「神見さん、僕達って親しい仲ですか?」
「なんですかその質問っ!」
「僕にとっては大事なことなんですよっ」
「あ! そうじゃなくて、なんで今更そんな質問ってことですよ」
「え?」
「まだ出会って2日目ですけど、私は森成くんに家の鍵を預けられるくらいはもう信用してます」
「それどれくらいの深さなんですか!」
あまりにも例えが独特過ぎて僕はお腹を抱えて笑った。その様子を見た神見さんも最初のうちは「何がですか!?」と言っていたが、いつも間にか一緒に笑っていた。
「森成くんの返事はいつでもいいですっ。いきなり言われても困りますもんねっ」
「確かに・・・困ることは後回しって言うもんな」
「──────な!?」
「どうしたんだよ? 神見さん」
「・・・慣れません」
「なら注文しないでくださいよ!」
「あぁ〜、戻っちゃった...」
「どっちがいいんですか!」
「ハイブリッドって無理ですか?」
「逆にどうやるか教えてくださいよ」
「・・・こうやってやるんだでっす」
「意外にその語尾似合ってますね? これから神見さんはそれで行きましょう」
「森成くん。笑ってますよね? その顔笑ってますよね!?」
「笑ってないよっ・・・くす...」
「! 笑ってるじゃないですかぁ!」
僕と神見さんが分かり合えるようになるまではまだまだ時間がかかるようだ──────
ぢゅらおです。
大晦日でお笑いを見るほど最高の時間はありません。
今これだって片目でテレビを見て笑いながら書いてます。傍目から見たら情緒不安定です。
来年もまた神見さんと防人のくだらない日常を書いた「不運ちゃんと強運くん。」をよろしくお願いします!
皆様が今年よりも来年はより良い1年となりますように!
ではまた来年お会いしましょう!




