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第3話 不運ちゃんと宿題。

ぢゅらおです。

楽しい楽しいクリスマスの日、僕は外で草むしりをしていました。

森成もりなりくん、おはようございます!」

「・・・おはようございます」

「むむ! 森成くん。この名探偵天照ひかりには分かりますよ...さては今日元気がn──────」

「おっす! 森成。ん? もしかして元気ないのか?」

「おっす...昨日ちょっと色々と...ね」

「昨日あったことなんて...入学式?」

「・・・! 家帰ってからだよ!」

「ははは! よっしゃ元気出たな」


べしっと僕の背中を叩き、ゲラゲラと立ち去った彼は今井瑚白いまいこはく。昨日、初めてクラスに入った僕を自己紹介の輪に入れてくれたのも彼だ。


それにしてもあの元気どっから来てるんだろうな・・・


「・・・森成くん」


あ...そういえば僕、神見しんみさんと話していたところだった。


「っと...名探偵天照...みたいなところまで聞きましたよね...?」

「森成くんは鬼ですか」

「自分では人間だと思ってますが」

「じゃあ蛙ですか! 蛇ですか! 鶏ですか!?」

「それを選んだ理由を聞いてもいいですか──────」

「知りません! 自分の...えっと、あ...頭に聞いてください!」


「それを言うなら心に聞いてくださいですよね」って聞くのは今はダメだろうな。神見さんはすっかり僕にそっぽを向いて机の上でふてくされている。


けどなぁ...その伝わってくるんだよなぁ。チラッチラッて、すごい見えるんだよなぁ。「終わりですか? そうですか? まだなんかありますよね?」って訴えてるその目が。


「・・・興味無いかもしれないですけど、じゃあなんで僕が元気ないかってこと勝手に喋りますね?」


僕ながらキモイ案だとは思う。他人から見てみたら、ふてくされてる女子に見向きもされず自分の説明をする男子。深く考えなくてもわかる。


純情に育てと願った僕の父さんと母さんごめんなさい。


「待ってください。やり直しです」


ぽっと出た言葉に僕は視界の端にライフゲージが出てないかチェックするがもちろんそんな2次元的要素はない。


「? 何がですか?」

「いいですか森成くん。私がもう1回教室に入ってくるのでさっきのように元気なさそう世の中だるだる雰囲気を出してください」

「強調されてませんか?」

「二言はご無用。では参ります」


僕の疑問は宙に浮いたまま、神見さんは机の横にかけていた荷物森背負って教室から出ていった。


考えるより動けの精神でとりあえず僕は元気なさそうな雰囲気を出して時を待つ。


「森成くん、おはようございますっ!」

「お...おはようございます?」


僕は朝の感じとそっくりだったが、神見さんは朝と明らかに違かった。キャラに似合わず荷物を机の横にバシーンっと投げてかけると、ガシャンっと勢いよく椅子に座った。


「で? 一体ゆーのどんなところがバットにしてるんだいーんですか!?」

「・・・は?」


やっばい。素の言葉が出てしまった。


「・・・も、森成くん。は、早く...」


席に座っている神見さんの声が細く震えている。良かった...痩せ我慢だった。


「はぁ...実は今日までに出す宿題やるの忘れてまして」

「へ?」

「あ、口調合わせないといけないですかね。えぇっと...みーがどぅーするホームワークを──────」

「ふざけるのやめて下さい!!」


えぇー...始めた張本人がそれ言います?


「別にバカにする意図はなくてですね? というか神見さん血相変えてどうしたんですか?」

「血液型は変わるわけないじゃないですか!」

「あ、血相ってそういう意味じゃないですよ?」

「そんな事はどうでもよくてですね! 森成くん!──────」


神見さんはバンッと僕の机に手を置くと、瞳孔が開いた目で僕に聞いてきた。


こんなタイミングで思うのあれですけど、神見さん...近いです。おかしいです。いい匂いです。


「宿題ってなんですか・・・」


ピシッと僕のみならず、クラスの雰囲気が固まった。神見さんという生存者に群がるゾンビのように僕らは神見さんを取り囲む。


「にゃっ!? ナマステナマステ!?」


デローンと一瞬男子の顔がとろけた気がしたのは気のせいだろうか。


僕は自分の顔を触ってみる。


よし。気のせいじゃない──────


「ひ、天照ちゃん? ...しゅ、宿題やってない?」

「はい...と言ったら私まずいですかね?」

「ちょっと男子!」

「「「はいっ!」」」


まさか高校に入って2日目で、しかもこのタイミングで「ちょっと男子」を聞けるとは。


・・・というかうちのクラス2年くらい一緒にいるレベルの年季が既にあるの何故ですかって聞いちゃダメですかね?


神見さんの現在の状況を完璧に理解した女子達はクラスの男子(僕も含む)を一言で統率すると、戦場の最前線並のポテンシャルの指示を発した。


「いいか野郎ども! 天照ちゃんに二度と恥をかかせるなぁ!」

「「「はいっ!」」」

「返事は「イエス! マイマザー!」だ!」

「「「イエス! マイマザー!」」」

「ではこの中で宿題が既に終わってるもの手を挙げぃっ!」


シーン・・・・・・


「今は沈黙は要らないのだ! 宿題をやっているものは手を挙げなさいっ!」


シーン・・・・・・


「・・・え? 誰もやってないの?」


クラスの男子達は心の中で一斉に膝から崩れ落ちた。


(((宿題...誰かに写させて貰えればいいと思ってた──────)))


僕はその聞こえぬ音も聞きながら、ゆっくりと手を挙げた。


「お! えぇっと──────」

「も、森成!? お前男子だよな!?」

「大丈夫か? 付いてるか?」

「バカお前! 今は付いてなくても男子でいられるだろ!」

「あ、そっか...ごめんな! 森成!」


質問をするべき箇所が違うのと当たり前のように下ネタをぶっ込んで来るところ。これがジャパニーズ男子高校生ってものか。


「宿題やってないゲスで変態な野郎どもは先生が来たら遅延させる役に回りなさい!」

「で、でも...俺らも宿題やってな──────」

「・・・返事は?」

「・・・イエス、マイマザー...」


トホホと悲しい後ろ姿を見せながらクラスの男子達(僕は除く)は教室の外へと出ていった。


「森成くん!」

「は、ひゃいっ!?」


突然大声で呼ばれたので思わず情けない声が出てしまった。あと目の端でガクンと力が抜けたような女子いたけど、あれも神見さんと同じ状況に置かれている人なのか・・・?


「「「・・・お願いします」」」


前置きもなく女子達のほとんど、つまり神見さん以外の女子が僕に頭を下げてきたので、まるで僕が魔王にでもなった気分だ。もちろん悪い意味は籠ってない。


・・・ん? 女子全員?


「え?」

「「「私たちに・・・宿題を見せてくださいっ!」」」

「え?」

「お願いだよぉ! 森成くん...君は目の前で鳴く犬を見捨てる男ではないよね?」

「いやその、見捨てないとは思いますが?」

「外にいる野郎どもには言えないけど、私たちも宿題があるなんて知らなかったんだよぉ!」


おっとなんだ...このクラス仲良いじゃないか。


クスッと笑い、僕はリュックの中から宝の束を取り出す。


「・・・これですよね」

「これこれぇ! さぁ! みんな今こそ2組の絆見せるよ!」

「「「おー!」」」

「お、おっー?!」


みんなから1拍置いて1番聞き覚えのある声が教室にこだました。


クラスの男子が廊下で悲しく見回りを、クラスの女子が必死に宿題を移している様子を一目見て、今日もいつものように畑仕事に打ち込むおじいちゃんを眺める。


「なんか僕だけ仲間外れみたいだなぁ──────」

「そんなことないですよっ!」

「し、神見さん!?」


忍者もびっくりの存在感。てかたまにいるよないつから居た?っていう人。


「森成くんは仲間外れじゃなくて・・・」

「?」

「リーダーなんですよ。クラスのリーダー」

「僕が? それはないでしょうね」


乾いた笑い声で返す僕を神見さんは強く否定する。


「いえ! 森成くんはリーダー資質なんですよ! これはぜーったい! 私が言うので絶対です!」

「神見さんは神か何かですか・・・」

「はい! なんて言ったって私。天照なので!」

「・・・ははっ! 確かに神かも知れませんね」


すると後ろから伸びてきた手によって神見さんは再び机に連れ戻された。


(大地を照らす神、天照アマテラスね...)


そして僕はまだ寒い空に一筋の白い息を残す。












ぢゅらおです。

今日は少しだけ...

宿題はやらないためにある。ルールは破るためにある。

ダメですよ?ちゃんと宿題はやった方がいいし、ルールは守った方がいいです。

自分よりやばい人がいる事を自覚するより、自分よりすごい人がいることを自覚した方が自分のためになります。By英語で赤点を取った高校三年生より

では次の話で会いましょう!


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