第1話 不運ちゃんと入学。
ぢゅらおです。
ほとんどの人は初めましてだと思います。
何気ない日常なのかどうか分かりませんが、少し特徴的な2人を主役にしたラブコメを書きたいと思い投稿しました。ぜひ気軽に楽しんで頂けると嬉しいです。
僕は入学式が嫌いだ。いや、正しく言うと新しい環境を迎えるという状況が嫌いだ。
今日は高校の入学式。中学の時とは違い、家から少し離れた高校を選んだために、朝起きる時間が少し早くなってしまったのはめんどくさい。
しかし時間以外はいつも通りである。いつもやっていたように朝ごはんを食べ、歯を磨き、制服を着たら、家を出る。
「行ってきます」
「なっ!? さっちゃん! ちょっと待ってぇ〜!」
「?」
扉に手を掛け、もう外へ出ようとしていた僕を家の奥から響くそこら辺の女子高生にも引けを取らない母さんの元気のいい声に引き止められる。
「もうっ、そんな暗い顔して! 今日入学式でしょっ!?」
「別に暗くしようと思ってた訳じゃないけど...」
「いーにゃっ! 自分の暗さは他人によって判断される...にゃっ!」
ニャーッと猫のポーズをする母さん。僕とこの存在が家族であるから、僕らは10数年共に生活してきたが、未だに母さんの事をしっかりと母親と思ったことがない。
別に悪い意味ではない。ただ、普通の母親とは違い、その──────
「分かったら「はい!」って元気良くっ! さんにゃっ!」
「・・・」
「さんにゃ!」
「・・・」
「さんにゃ...」
「・・・」
「うぅ...」
「・・・はい」
母さんのその元気良さに圧倒されてしばらく返事が出来なかった間に、母さんの心はどんどん折られていったらしく、最後はもう半泣きだった。
「にゃ!? さっちゃん今「はい」って言ったかにゃ!? にゃにゃにゃ!」
「・・・さぁ?」
「もう1回言ってにゃぁぁあ!」
一言だけ残し、ガチャッと扉を開けて外に出た後に、後ろから聞こえた断末魔に思わずクスッと笑ってしまう。
「さてと、行きますかね」
そうして僕は入学にふさわしい晴天の下を1人で進んでいく。
※※※※※※
中学と高校で何が変わったか。大きく違ったのは登校にバスを使うことである。中学までは歩きでも間に合ったのだが、高校まで歩きとなると着いた頃には既に5時間目くらいの体力になっている。
「では出発します・・・」
前の方から聞こえたアナウンスに下がっていた視線を少し上げる。
見ると少し離れた場所で乗るべきバスがもう出発寸前であった。ここで走るべきか否か少し悩んだ挙句、僕は走らないことを選択した。
走っても良かったが、おそらく既に扉は閉まっていてここで走ったらむしろ余計に疲れてしまってバスを使う利点がなくなってしまう。
ならもう、次のバスを使った方がいいと思ったからだ。まぁ...このバスが使えないと学校に着くべき時間に間に合うかは微妙なのだが。
若干落ち込みつつバス停に着いて次のバスを待とうとしたが、目の前には既にバスがある。
いやさすがに少し早くないか? 僕って歩くのそんなに遅かったっけ...
生まれた疑問に首を傾げつつ、バスが進むべき方向の先を見るとその疑問をすぐに解消することになった。
なんと目の前には踏切があった。しかも見ると電子板には電車が通過することを示す矢印が2本とも表示されていた。
もう最近は自覚することも辞めていたが、僕は結構運が良い。
例えば宝くじ。中学生の時に、家族で運試しをする事になって1人10枚分の当たるはずもない量を買うことになった。可能性が薄すぎる物にお金をかけるよりジュースを買いたいと思った僕は宝くじを1枚だけ買って残りは全部お菓子やジュースを買った。
僕はその後宝くじを買ったことさえ忘れていたのだが、宝くじの当選発表の日に僕は自分でも自分を疑った。僕が買った1枚が高額当選していたからだ。家族も当たった事に喜んだというよりはむしろ驚愕していたのは今でも覚えている。
とまぁ...他にも色んな話があるが、それはまた後々──────
「バス停に並ぶ方。このバスに乗りますか?」
思考にふける僕の意識を現実に引き戻したのは、バスの運転手が発した外部アナウンスである。おそらく僕がこのバスを使いたいというのを僕が着ている制服から知っていたのだろう。
僕は運転手に向かって一礼をすると、その意図を汲み取った運転手は扉を開けて中に招き入れてくれた。
「お客さん。もしかして和名高校の新入生ですか?」
「あ、はい。そうです」
「ならこのバス使わないと、時間間に合わんかったんじゃないですか?」
「集合時間と結構際どい勝負になってたかもですね...ありがとうございます」
「いえいえ──────」
と僕がちょうどバスに乗ったところで踏切の遮断棒が上がった。
いや、本当に助かったなぁ。世の中まだまだ捨てたもんじゃないな。
なんてオヤジ臭いセリフを心の中で呟いた僕は思っているよりも空いていた車内で外を見れる後方の席に座る。
「和名高校前行き。出発します」
バス独特の自動アナウンスが流れる中、僕はぼぅっと外を眺める。
すると先程まで僕が歩いていた道から僕と同じ高校のものであろう制服を来た女子高生が全力疾走してくるのに気付く。
声が聞こえなくても「待ってくださーいっ!」と言ってるのであろう口の動きを見て、また僕はクスッと笑う。
もうちょっと早く来ればこのバスに間に合ったのになぁと思っている内にバスはどんどんと彼女からどんどん離れていく──────
※※※※※※
「僕は...2組か」
無事に集合時間に間に合った僕は張り出されていた新入生用のクラス名簿を見て自分のクラスを確認する。
知ってはいたがこの高校の人数は田舎にあるという事もあり、1学年2クラスしかない。僕はそれに惹かれてほとんどの中学校から離れたこの学校を選んだのだ。
教室に着いた僕は自分の席を探そうと前の黒板を見るとデカデカとした字で「担任が教室に来るまで友達を作っておくように!!」と書いてあった。
担任は絶対男の人だなと思った僕は教卓の上に置いてあった座席表を見ると、「名前順だと思った人残念!俺が適当に組んでおいたぞ!」
と誰も知らないんだから別段どうでもいい配慮に感謝をするとかはなく、自分の席を確認すると窓際の1番後ろの席だったのでこれは少し嬉しかった。
これから1年も過ごすクラスメイトの名前ぐらい見ておこうと思い、自分の席に荷物を置いた僕は再度座席表を見に教卓に向かう。
その途中僕よりも先に着いていて既に自分たちの自己紹介を始めていたクラスメイト達に呼び止められ、僕も軽く自己紹介をした。
軽くそのメンバーを見渡すと中学時代とは異なりみんな優しそうだ。いい高校生活が送れそうだなと思い、座席表を見に行くことを忘れ時間が来るまでその集団でミニゲームをするなど楽しい時間を過ごした。
「おぉおぉ! 先生の言った通り友達作りに励んでいて先生めちゃくちゃ嬉しいぞ!」
想像していたような体育の先生であろう男の先生が来ると僕達の顔を1人ずつじっくりと見る。
僕が加わった後に教室に入って来た人も輪に誘っていって僕達の輪はおそらくクラスメンバー全員で構成されていた。
「よしよし。じゃあとりあえず出席取りたいから自分の席についてくれるかー?」
「「「はーい」」」
みんなでバラバラになっていた席を整えるとそれぞれの席に着席した。
そこになって初めて気付いたのだが、僕の隣だけいない。
「ん? 神見だけいないのか? 全く初日から遅刻とは肝が座ってるやつもいたもんだなぁー」
先生が発した言葉に教室はどっと笑いに包まれる。その後先生が挨拶と入学式までの時間潰しに話していた話を聞きつつ僕は窓の外に見える田んぼを耕すおじいさんを眺める。
僕はこういう当たり前の日常の雰囲気が好きだ。普通の日常ほど幸せなことはない。
しかし僕のそのような理想はどんな意味であれ壊されることになる。
「ぜぇ...ぜぇ...先生、おはよう、ございます...」
「おっ、神見か?」
「はい...そうです...」
「初日から遅刻とはどうしたどうした?」
「目の前でバスに置いてかれまして...懸命にダッシュしてきたんですけど、まぁこうなりました...」
「バスと競走しようと思ったのかー?」と先生がしたツッコミに彼女も含めクラス全体がまた笑いの渦に包まれる。
「・・・まぁ元気ならオールオッケーだ!」
「既に疲れて元気を失いつつありますけどそれでも大丈夫ですか...?」
今度は彼女のツッコミに「んっん!」と言葉を詰まらせる先生。神見さんはコツっと手を自分の頭に当てると「へへっ。先生嘘です! 元気です!」と言うと自分の席を確認する。
もちろんその席とは僕の隣なのだが...
「あっ・・・」
僕の目が少し悪いのもあり、前にいた時には気付かなかったが、バスの話の時に少し勘づいてはいた。あの時の彼女である。僕が運良く間に合ったバスに運悪く間に合わなかった彼女。
「とと、こちらですかね...えぇーと、よろしくお願いします?」
「なんで疑問文になってるんですか」
「あ、こういう時になんて言ったらいいのか一瞬忘れてしまってですね!?」
「ははっ。合ってますよ」
僕が笑うと彼女も「それは良かったですっ」とクシャッと笑う。
「お名前はなんていうんですか?」
「僕は森成防人っていいます。よろしくお願いします」
「わぁ! 素敵な名前ですね!」
「けど名前の割に身体が細いのでよく笑われますね」
「そういう人って内に秘めた力があったり──────」
「ないです」
「ですよね」
自分の自己紹介を済ませると僕は変な目にならないように気を付けつつ目の前にいる彼女を観察する。
しかし、バスの中で見た女子高生らしくなく見た目を気にしない全力疾走を思い出して、思わず笑いを思い返してしまう。
「? なにかありましたか?」
「あっ...すいません。実は──────」
とバスの中で見たことや、あと少し早ければ僕と一緒にあのバスに間に合っていたことなど告げた。
話をしている最中、たまに彼女の表情を見たが、色んな表情の変化があって話していて楽しかった。
「私、本当に運が悪かったんですね...」
「本当に惜しいタイミングでした」
「むぅ...今気付いたんですが」
突然ほっぺを膨らまして僕に悪意のない睨みを向ける彼女を見て、僕は虚を突かれる。
「へっ?」
「それ気付いてたなら運転手さんに言って待ってくれても良かったじゃないですかっ!?」
「あ・・・」
「私が走っていたのを見て楽しんでいたんですか?! あの人いい気味だなぁへへへとか思っていたんですか!?」
彼女の声が盛り上がってしまったために騒いでることに気付いた先生は「どうしたー?」と僕らに声をかける。
「今、森成くんが私の事を見せ物として楽しんでいたという話をしていたんです!」
「いや本当にどうした・・・」
先生が本当に困り果てた表情を浮かべたのを見て、教室中に様々な笑いの声が響く。
もちろん僕は笑いよりも恥ずかしさが勝っていたが。
前書きであった皆さんこんにちは!
後書きから読むという方初めまして!
実は前にも投稿していた時に既に知っていた方お久しぶりです!
ぢゅらおです。
この話は僕が初めてWeb小説を書いた物語を元にした新しい物語として書きました。前の物語を知っていなくても全く問題ではないですが、もし知っている方がいれば主人公のふたりの名前は懐かしいのではないでしょうか(女子の方は苗字しか出ていませんが...笑)
こんな感じで、ゆるっと書いていこうと思ってます。2日に1回は更新出来たらなと思っています。
是非!次回の話も楽しみにして頂けたらと思います!では!次の話で会いましょう!




