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彼方へ紡ぐ  作者: 流優
卒業

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打ち上げ《2》

 普通にがっつり風邪引いてて投稿遅れました! すみません!


「え、えーっと……」


「……悪いなリーゼル。ウチの面々は酒癖が悪いんだ」


「別に悪くねぇよ! ほら、お前も飲め」


「ん、ヒナタも飲むべき」


「わーっ、待て待て! 二人同時にやんな! 零れるって!」


 二人が左右から俺のグラスに酒を注ごうとし、慌てて止める。


 というか、混ざるって。別々の酒なんだから。


「あーん? あたしの酒が飲めねぇってのか?」


「典型的な酔っ払いみたいな絡み方やめてくれます? ……よし、ほーら、どんどん大人しくなるー」


「ふにゃあ……」


 顎下をちょいちょいと撫でてやると、そんな声を漏らして丸くなるネア姉。


 普段ならきっと、「何すんだ」と言って俺の手を払うだろうが、この人酔っ払うとどんどん猫みたいになっていくので、今だけはこんなことをしても怒られない。


 ネア姉は典型的な絡み酒だが、まあこの姿は超絶可愛いので、ぶっちゃけもっと飲ませたいとも思う。


「ん……ヒナタ、私も」


「いてっ、いてっ、ちょ、グリグリすんな。お前、最近レベル上がって力強いんだからよ。加減しろ、加減を」


「や」


「わかったわかった、ほら」


「んー……」


 グリグリと、俺の肩に頭を擦り付けてくるレイハを撫で回すと、心地良さそうな声を漏らす。


 レイハは、酔っ払うとスキンシップが多くなるのだが……なんか、レイハの動きも猫みたいだな。猫というか、犬か? ブンブン尻尾振ってそうだ。


「あはは、じゃ、私もー!」


「うわっ、お、おい、シノン」


「何、私はダメなのー?」


「……ダメじゃない」


「そう? 良かった」


 ニヤニヤと笑って、後ろから俺の首にまとわりついてくるシノン。


 シノンは二人程理性が怪しくはならないのだが、しかし確実にいつも以上にからかってくるようにはなる。


 俺が拒絶出来ないのをいいことに、だ。こんな風にされて嫌と言える訳無いだろ。


「おー、ヒナタ君、好かれてますねぇ」


「嬉しいのは嬉しいが、酔っ払いの相手は勘弁だ。酒に酔うといつもこうなんだぞ、この三人」


「あたしは酔ってねぇ! ……? ヒナタ、何でお前、そんなツヤツヤになってんだ?」


「ネア姉、それはヒナタじゃない。お盆だ」


 さてはわざとやっているな?


「フフ……普段しっかりしてらっしゃいますが、やっぱりヒナタ君と一緒にいる時は、ネアさんもこれだけ素直な感じなんですねぇ」


「まあ、ネア先輩がこれだけ無防備なのは、ヒナタと一緒にいる時だけだよ。お酒とかも、みんなが一緒にいる時じゃないと飲まないし」


「わざわざ自分で買って飲んだりしませんよね。大人の方は何であんなにお酒を飲むんでしょう?」


「ねー」


 それなりに飲んでいるはずのシノンとリーゼルだが、ケロッとした様子でそう会話を交わしている。


 多少頬が赤らんでいるくらいだろうか。


「……シノンが酒強いのは知ってたが、リーゼルも酒が強そうだな」


「私は王族ですから。仕事として飲まないとならないことも多くて、その内に自然と慣れたように思います」


「あ、私も一緒。飲んでると慣れるって言うけど、実際そうだよね」


「えぇ。特に楽しくもないのに、グラスを片手にニコニコしないとならない時とか、本当に嫌になります。あ、今は楽しいですよ! とっても。……正直、お友達と何も気にしないでお酒を飲む、という経験は今回が初めてですから」


「それじゃあ、これからは楽しいお酒を一緒にいっぱい飲もっか。と言っても、私も同じようなものなんだけれど」


「はは、シノンも意外と人付き合い下手だもんな」


「まあね。ヒナタは人付き合い上手いし友達も多いけど、私はそんな風にはなれないわ」


「多いっつっても、本当に仲良くしてるのは数人だけだぞ」


「でも、見舞いに友達、いっぱい来てたじゃん」


「……まあ、ありがたいことに結構来てくれたな」


「人たらし」


「何でじゃ」


 俺達と一緒にいる時はそうも思わないが、シノンはそんなに愛想が良い方ではなく、誰とでも仲良く出来るようなタイプではない。


 ぶっちゃけると、友人も少ない。まあ、仕事柄それもしょうがないのかもしれないが、そもそもとして人間不信――いやヒト不信の面が若干あったりするのだ。


 今の大人気アーティストになるまでの間に、色々苦労があったからだろうな。


 それでもこうして、気を許した相手にだだ甘えになるのは、本当に辛い時、ネア姉が彼女を支えたからこそだろう。


 シノン、ネア姉大好きだからな。ボソッと呟いたのを聞いたことがあるのだが、「私、別に同性愛者じゃないけど、ネア先輩なら結婚したいし、何なら襲いたいかな」と言っていたくらいだ。


 うむ、俺は応援してるぞ。


「シノンちゃん、あの有名な『Raison』なんですもんねぇ……私も聞いてます、曲。何だか声に聞き覚えがあるなぁとは思ってましたが、実際にそうだと知った時、私がどれだけ驚いたことか」


「あはは、まあ最近は、こっちにかまけてるから、仕事量が減ってるけどね。卒業するまではそうするつもり」


 そう言ってシノンは、もたれかかった俺の頬をぐにぐにと引っ張る。


「いひゃいぞ」


「うーん触り心地最高」


 シノンに(いじく)られている俺の様子を見て、リーゼルは楽しそうに笑う。


「フフ、これ、なかなかのスキャンダラスな光景ですねぇ。特に、今大人気の『Raison』の色恋沙汰ですし」


「ねー。漏れたら大変だね、ヒナタ? その時は、炎上を抑えるためにしっかりと責任を取ってもらわないと」


「……そういう圧力の掛け方はやめようじゃないか」


「じゃあ、ダメ?」


「……ダメじゃない」


 さっきと同じようにそう答えると、間近から妖艶に微笑むシノン。


 この、好きなように翻弄される感じが俺もまた嫌ではなく、ただ苦笑を溢すことしか出来なかった。


「あ、勿論、ネア先輩もレイハも一緒にね。私、ネア先輩と家族になりたいなー。レイハも妹になってくれたら、嬉しいなー」


「……えー、前向きに検討するとだけ言わせていただきたく」


「そう? なら、その線でよろしく。私も、みんなも、ちゃんと待つから」


「……あぁ」


 ニコッと笑うシノンに、俺は少し真面目な顔となって、それだけを答える。


 彼女の好意は、嬉しい。とても。


 ただ、まだ、応えることは出来ない。


 先にやらねばならないことがある。世界を巻き込んだ、戦争を起こさせないために。


 そして、俺がそう考えていることがわかっているからこそ、シノンは「待つ」と言ってくれるのだ。


 レイハも、ネア姉も、そしてシノンも。三人とも、いつもこうして、俺のためにと行動してくれる。


 それを、忘れてはならない。


「いいですねぇ、いいですねぇ! 互いが互いを信頼し、思い合う……素晴らしいことです!」


 そして、そんな俺達の様子を見て、何だか興奮し始めたのがリーゼルである。


「ねぇ、バハムート! あなたもそう思いますよね!」


 おっと、普段絶対に表に出さないようにしているはずのその名を、しっかりがっつり口に出しましたねぇ。


 さてはリーゼル、実はお前も意外と酔ってるな?


「え、何ですか、バハムート? ……そんな簡単に名前を出すなって? いいじゃないですか、今更! シノンちゃんにはしっかり存在バレちゃったんですし! ヒナタ君達も変わらないでしょ!」


「あー、リーゼル。あんまり大っぴらに話されても、こっちとしても困るんだが?」


「うーん、私も多分、リーゼルと同じことが出来るんだよね。レヴィアタン、聞こえる? レヴィアターン。……んー、ダメだ、反応ないや」


「バハムート曰く、レヴィアタンは昔からお寝坊さんらしいですよ! でも、本当に必要になった時には、シノンちゃんのために起きてくれると思います!」


「そっか、それならその時を待つとしよっかな。でも、ヒナタ達の力になりたいから、出来れば早く目覚めてくれると嬉しいんだけど。私単体だと、ほとんど戦えないし」


「シノンの歌を聴くだけで俺は戦力百倍だが? 今までに貰ったCDとか、全部百回以上は確実に再生してるぞ」


 市販品の他に、今までにシノンからは、アコギで歌ったバージョンとか、ピアノで歌ったバージョンとかの、市販されていないCDも数枚貰っているのだが、それら全部ほぼ毎日BGM代わりに家で流しているので、普通にそれくらいは聴いていることだろう。


 俺、しっかり『Raison』のファンなので。


「……そこまでされてると、流石に恥ずかしいんだけど」


「だから、前にも同じようなこと言った気がするが、普段通りにしててくれればいい。それだけで俺は最高に嬉しい」


「……ん」


 照れたように、頬を赤くするシノン。


「フフフ、いいもの見せてもらいました! お礼に一杯どうぞ!」


「いやそれ全員で割り勘してるから、別にお礼にはなんないからな?」


 その後も、髪をわしゃわしゃしてきたり、頬をツンツンしてきたり、こちらにちょっかいをかけ続けるシノンと、何故か興奮しているリーゼルと共に、雑談を続ける。


 ちなみにレイハとネア姉は、レイハは俺の身体によりかかり、ネア姉は俺の膝に頭を横たえ、いつの間にか寝ていた。この二人、酒に強くないので飲むと大体いつも寝る。


 完全に動けなくなってしまったが……まあ、二人にはいつも迷惑を掛けているのだ。


 枕くらいの役目は甘んじてやろうじゃないか。




 ――そうしてその日は、夜になるまで酒を飲んで雑談し、結局そのままシノンの家に泊まることになった。


 レイハとネア姉も流石に途中で目を覚ましたのだが、中途半端に寝たせいで夜が眠れなくなってしまったようで、深夜過ぎまでトランプに付き合わされるハメになった。


 リーゼルは「お友達の家でお泊まり会……最高に楽しいですね!」と喜んでいたが。


 こうして話してると忘れそうになるのだが、リーゼルさん、あなた王族ですよね。突然「友達の家に泊まる!」と言って許されるのだろうか。


 ……まあ、本人が楽しそうだからいいか。要領良い性格してるから、問題にならない程度には最初から根回ししてそうだし。


 なお、トランプはやっぱりレイハがほぼ一人勝ちだった。ポーカーフェイスに、単純なカード回しの上手さ、さらにはここ一番の引きの強さが合わさり、もう最強だった。


 こういう時に、改めてコイツがこの世界の中心なんだと実感するわ……。

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