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そのポーカーフェイスを崩したい。

作者: 環月紅人

 先輩今からゲームをしましょう?

 バス停に着くまでの三分間でいいです。


 先輩は何もしなくてよくて、ですね……。

 ………。


 私が、今からあらゆる手を尽くして、先輩のポーカーフェイスを崩します。

 何が何でもです。


「なに?」じゃありません。機械みたいに答えないでください。口開いてます? 言葉短すぎません?

 はぁもう。

 いいですか? 時間が惜しいのでサクッとやりましょう。

 先輩の表情が見たいんです。

 ゲームを始めますからね。


 先輩は、私のことをじっと見ていてください。


 それでは………。

 すぅ……はあ……。

 ………。

 ……。


 行きます。まずは変顔。


(※五秒経過)


 ふぅ……。


 いやこれは軽いジョブですよ。まだまだ。

 ふっ……っ!(※手を使っての変顔)


 どうっ、です、か……っ!


 ふはぁっ。

 ああ、変顔って、息止めちゃいますね。あはは、ふぅ。熱くなってきた。

 ちょっと上着脱ぎますね……。


 バサリ。


 ――どうですか先輩! 女子のフレグランス。脱ぎたての上着にふんわりと煽られてちょっとドキッとしたんじゃないです微動だにしてない。人の心がない。上着掛ける前と掛けた後で差分がない。


 生きてます? 先輩? ねえ。見つめられてると私の方がドキドキしてくるっていうか変な気がしてくるっていうかまばたきしてもらわないと心配になるっていうか……あ、しましたね。良かった。


 ……いやインターバル長すぎません?


 普通の人って三秒に一回はまばたきするんですよ? 大丈夫ですか? 乾燥しません? 目薬買います? 心配になります。


 そろそろバス着いちゃいますね。最終手段です。目の前にはYシャツ一枚の後輩が立っています。このボタンをですね、ぱちり、ぱちり、と一つ一つ外していきます。

 ほら見てください。ほら。先輩。ねえ。おっぱい。そろそろおっぱい。なんで視線ブレないんですか。ねえ。私に色仕掛けは無理ですか。ねえ。


「安売りは良くない」って、真っ当なこと言わないでください。

 反省しました。このイケメンが。


 あーあもうバス着いちゃいましたよ。ゲームは私の負けですね。このイケメンロボット。無感情。ゴーレム。朴念仁。表情筋ゼロの男。

 またリベンジさせてください。

 先降りますからね……。


「ふ」


 ねえ今笑いました!?

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