サッカーワールドカップの楽しみ方
A「サッカーW杯が始まったね」
B「うん、全然気が付いてなかった」
A「公私ともに忙しかったしな」
B「そして申し訳ないが常日頃からのサッカーファンではないからな…… というわけで、そんな我々の、ゆるい楽しみ方を語ってみようかと」
A「やっぱ料理だよね」
B「うん、二個前のブラジル開催の時は、決勝戦を録画して、サッカーに詳しい友人招いて、ホームパーティしたね。」
A「実況と解説頼む、代わりにタダ飯タダ酒していいから、と」
B「言い方…… まぁ、妻と息子は喜んでたね、有識者からの解説込みで見られて」
A「料理は何作ったの?」
B「シェラスコイメージして肉の塊焼いたね。あとポンデケージョも作った。それとお酒はカイピリーニャを用意した。それ以外は適当」
A「結構作ったね」
B「いやいや、今の向上した料理技術ならもっといいもの作れたと後悔しきりよ」
A「では今回はどうするの?」
B「何時にやるのかも知らないけど、ドイツ、スペインともに食文化面で作るものには困らないね。ドイツはシンプルにじゃがいもとベーコンを炒めたものとか、ソーセージ、ハムなどとビールだね。スペインは美味しいものがありすぎて困るけど、うちでよく作るのはパエリア、アヒージョ、スペイン風オムレツ・トルティージャとかだね。お酒も、うちには常にスペインのスパークリングワインがあるし」
A「コスタリカは?」
B「国特有、は「地球のあ…き…た」、のレシピブックに記載はなかったけど、グルメ図鑑の方に「ガジョ・ピント」と「コルビナ・アル・アホ」というのがあった」
A「聞いたことないけど、後者はニンニクを使ってるのかな」
B「そうだね、コルビナってニベの仲間を塩とニンニクで漬けて焼いたもの。米と一緒に食べるんだって。ニベは釣ったことあるから代用するならそれだけど、売ってるの見たことないからスズキで代用しようかな」
A「なるほど」
B「あとは開催国の食文化の特集とか、出場国の食文化とかが取り上げられるの見るの好きです」
A「でも、俺はこの時期ニュース見るの辛い」
B「意図はわかる。ちなみに一つ挙げると?」
A「優勝国予想して? 日本! とか、今回ならグループリーグ日本楽勝でしょう! とかそう言うのが嫌」
B「そうだね、オリンピックでも問題視されることがあるけど、彼我の戦力差を無視しすぎた国粋発言が、正直食傷気味」
A「この前のW杯のグループリーグ突破後のベルギー戦前に、日本在住のベルギー人に「日本相手にビビってますよね
?」と聞いて「ビビっているのは日本でしょ?」と返されたのが忘れられない」
B「なんて言うのかな、勝利を願うのと、無条件で勝利を確信するのは違うと思うんだ。一度も優勝経験がなく、最高でもベスト十六。もちろん、初優勝が今回かもしれない。でも優勝候補の最有力扱いするのはおかしいと思う」
A「日本の敗北を予言するものは人にあらず、の風潮だからね」
B「何がなんでも日本が勝つ、と言わされている感もあるね。私の好きな料理番組でもあったよ。二人で回している番組で、片方アが「どこが優勝と思う?」と聞いてもう片方イが熟考の末「フランス」って答えた、したらアが「日本」って答えた。イは「ずりーよ、俺だってそう答えたかったよ!」ちなみにアはジャニーズでイは料理研究家。イの方が立場が弱いからそういう会話になるんだろうね」
A「勝てるわけがないとか野暮なことは言うな、日本優勝とだけ言え、そういうことね…… これじゃ強くなるものもならないよね……」
B「日本優勝と答えた人全員にデスゲーム仕掛けて、予想を外したら死亡、ってなったら、誰一人日本って答えないよね?」
A「間違いないね」
A「どうすればいいとおもう?」
B「一つの案ですが、「普通にやったらドイツが勝つ。でも百回に一回は日本が勝てると思う、その一回が今日だ」とかだとすごく同意できる。自分たちを強者と勘違いしているのが辛い。あ、ちなみに百回に二十回は勝てるだろうとか、そういうのいいから、比喩だから」
A「敵が勝ち誇った時、そいつはすでに敗北している?」
B「そう、圧倒的な強者でも勝ち誇って油断したら破れるのに、地力で負けているのに身の程わきまえず勝ち誇ったら、勝つ方がおかしいと思う」
A「「明日のドイツ戦、何点対何点になる?」って街角アンケートも付加価値が不明」
B「だよね。「彼我の戦力差を鑑み、三対ゼロでドイツの勝利」とか言った人はどうせカットされるでしょ? 空気読んで「日本の誰々のハットトリック! そして完封! 日本の勝利に得失点差プラス三のおまけつき」とか言うのだけ放送されるんでしょ? これみて選手どう思う? 「え、待って、ドイツ強敵だよ? 勝ってもそんな楽勝じゃないよ? なんでそんな雑魚扱いなの? 負けたら俺たち社会的に抹殺?」って逆にプレッシャーだよね?」
A「勝利を願うのと、敵を過小評価するのはイコールじゃない、ね」
B「十二月二日まで、「何があってもの日本優勝」って嘯くニュース番組が辛い……でも、「勝てるわけねぇじゃん」とか水さすことは言いたくない」
A「それはなんでだって? ある意味冷静な指摘じゃ?」
B「んー、テレビはサッカー中継見てもらわないとお金にならないから、仮初でも日本勝てると思わしたいのは理解できるし、それは、自国以外に興味を持てない視聴者側にも問題あるからってものあるが、大きいのは………… えっと俺に「開催中のW杯の見どころは?」ってきいて?」
A「? えーと、開催中のWか B「俺、W杯興味ないから! 汗かくの嫌いだから! 興味ないから!!!」」
A「食い気味というか、完全に食ってきたね……」
B「この、W杯でも五輪でも、みんな、というか多くの人が興味持っているスポーツの祭典系に興味がないと、自分は大勢とは違うのだよ、と言うことに命かけている人たちも見たくない、そう言うことです」
A「興味ない、と言うことに命かけているから、ある意味、それこそ興味があると同じでは?」
B「本当に興味なかったら、こんな会話だよね。話振られて、日本優勝できるといいね? え?もう予選敗退? あ、ごめん見てなかった、残念だね? どこが優勝するか楽しみだね? みたいな」
A「間違っても、おおおお俺は、きょきょきょきょ興味ないから! みんなが浮き足立ってるの興味ない! 流行に流されないおおお俺れれれ、かっこういいいいいだろおおお?」とか言ったりしないね」
B「俺が例にあげた会話のような、そう言う会話すら、なんでそんな社交辞令をいう必要ある!?、とか言っちゃうんでしょ? 社会の形成ってそういう社交辞令で成り立ってる側面もあると思うんだ……」
A「まぁ、それも自由ということなんでしょ……」
B「というわけで、今回のW杯は「昨日のスーパープレイ」とか、いいところだけみて、決勝だけ録画で、シュートのシーンだけ見るとかする予定です」
A「別にいいと思う。ちなみに一番注目している国は? どこが優勝する、でもいいけど」
B「アルゼンチンですね、バロンドールの呪いが今回も続くかがすごい興味ある」
A「お後がよろしいようで」
B「……使い方間違っていると思う……」