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lover soulと夜間飛行

作者: 伏見


ねーちゃんほんとにバイク乗るの?


だって夢だったんだもん


姉貴の夢はバイクに乗って走ることでした。


ある日、会社帰りに教習所のパンフレットを持って帰ってきた。

 

リビングにある棚の上には家族写真が飾ってあり、パンフレットをその前に置いた。


なにこれ?


ん?通おうと思って。


二輪免許?


そ。


なんで?


いや、かっこいいなあと思って。


どういうわけだかこういうものが昔から好きだった姉貴。


けど、親は危ないからってずっと反対してた。


街で見かけたカッコイイバイクをみては姉貴はいつも嬉々としてため息をついた。


そして教習所に通い出した姉貴は会社が終わっては足しげく通ってた。


そしてなんと好きこそ物の上手なれとでも言うのか、ドンドンと教習時間をこなして行く。


姉貴は毎日実技練習がおもしろいと言っては、


ギアチェンジとか、ターンの仕方を俺に教えてくれる。別にいいのに。


クランクはアクセルをうまくつかって。。。と。


そんなある日、姉貴に彼氏ができたらしい。会社で出会った人みたいだ。


姉は何かと物事が早く進む。そしてそんな彼と、とんとん拍子でめでたく婚約をすることに。


ようやく取れた二輪免許。ウキウキで買ったバイクだけど、今は結婚のためお金が必要だということで売ることにしたらしい。


俺は免許持ってないし取る予定もないので。そもそも乗れないので。


そんな姉貴が最後の走行に行こうと誘ってきた。


やっぱ走ると言ったら湾岸線でしょう!と。


夜の湾岸線から見える工業地帯は、宇宙ステーションみたいなイルミネーションが、まるで未知との遭遇しそうだった。


あたし、これから上手くやっていけるかな。

 

なに突然?

 

今さ、いろんなものが手に入ってとても幸せなんだ。

 

けど、本当に欲しいものが手から自然と離れて行く。

 

これって良いことなのかな。

 

消えて行くものも幸せなのに、去って行く後ろ姿が

 

見るに耐えない。

 

このまま私も消えてしまいたい気分。なんかもういいかなーって。


なんなの、いいかなーって何を?


バイクで事故って消え去っても、もう本望かなあって。


やめてよもう。物騒なこと言わないでよ。


幸せすぎるから?贅沢な悩みなんてないぞ。ありがたく思え。

 

うん…。私、結婚するのかあ。


するのかあって、他人事みたいに。


結婚させられちゃうよ。みたいな。


それも他人事みたいに。


なに?もしかしてマリッジブルー的な?


そうかも…しれないね。


いやならしなきゃ良いじゃん。まだ、婚約だけでしょ。もうちょっと考えてみるとか。


そうだね。。考えとく。


考えるのか。


また幸せになったら何かが消えちゃうのかな。

 

ポツリと姉貴はつぶやいた。


夢、叶ったんでしょ?


一応いくつかは叶った。


そのかなえたいランキングは何個あるの?10個くらい?


そうねえ。1800個くらいかな。

 

結構あるな…

 

あ、叶ったのはね三つかな。一つはバイクに乗ること、二つは好きな人ができたこと、もう一つは姉弟で楽しく暮らすこと。


俺は、おねーちゃんが幸せに暮らしてくれればランキングすべて達成だよ。

 

姉思いのいい弟ね。

 

体がない分おねーちゃんに託してんだよ。

 

勝手なこと言うわね。どうりで肩凝ると思った。

 

こっちにきたらほんと、追い返すからね。

 

いかないわよ。さっきのは冗談。だってランキングまだぜんぶ叶ってないんだから。

 

ほんとなんだからね。おねーちゃんが、幸せになってくれるのを一番に願ってるのは俺だよ。

 

ありがと。

 

もっと走ろうか。

 

うん。


ずっと見守ってるよ。姉貴。

 

夜の湾岸線。1人走る姉貴を、僕は空から見ていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] そっち……! そっちなんですね。 深い姉弟愛にほろりとしてしまいました。 お姉さんはどんな気持ちでバイクに乗っていたんでしょう。これからも弟のことを想いながら過ごしていくのかな、幸せになって…
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