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血鬼  作者: MIDOシャドウ
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第一話 入学

「今日から、高校生だね!結芽!!」


「え、あ....うん。」




私は美濃川結芽。なんてことない普通の高校生。別にスポーツが得意なわけでもないし、かと言って勉強が特別出来るというわけでもない。高校入試も真ん中よりは上だったくらい。




で、隣で笑いながら話しかけてくれてるのが、小野川雪奈。成績はトップ。部活はバレー部に所属していて、勉強もスポーツも万能な子。ちょっぴり有名なところの末裔らしくて、家に伝家の宝刀なるものが飾られているらしい。実際に見たことはないけど。




今日は高校の初登校日。家もそんなに遠くないから、こうやって並んで歩いてるわけだけど...




「...ちょっと、結芽。」


「え、な、何?」


「もー、また私の話を無視して考え事してたでしょー!!」


「あぁ、ゴメンゴメン....」


「ホント、昔から結芽ってそうだよねー。なんかぼーっとしてる。」




治らない癖だ。このセリフだって何度聞いたことか。




「それより、雪奈は緊張してないの?」


「私?私は特に緊張してないよ。だって、結芽と一緒だし!!」


「まぁ、もう何年も一緒だしねぇ。」


「そうそう!!もう、家族だよ!家族!!」




眩しい笑顔で雪奈はそう言った。なんだか不思議な気分。私の親はとうの昔に死んじゃったし、それから独り身になった私を引き取ってくれた雪奈の両親には感謝してる。


けど、幾度となく向けられたこの笑顔は何年たっても慣れない。




「あ!学校見えたよ!!」


「え、何処何処?....あ、あれかぁ!」


「すごーい!!中学校とは大違いだよ!!」




遠くからでもすぐに分かった。最近建て替えられた新校舎が眩しく光を放っている。




「よし、早く行こう!!」


「え、あ、ちょっと...」




雪奈に引きずられるようにして、私達は学校の門をくぐった。










校舎は見た目通り、広かった。中学校の時のような薄暗い雰囲気もなければ、廊下から変な音もしない。それはまさしく私が描いたような校舎だった。




「えっと...私達はA組だね!!」


「此処の突き当たりにあるみたいだよ。」


「あ、あの教室かぁ!!」




やけに長い気がする廊下を歩いていくと、A組の教室はあった。近くのB組の教室からは元気な声が聞こえる。


思い切ってA組の教室のドアを開ける。


黒板には座席の位置が書かれていた。




「えっと....私は....一番後ろかな?」


「私はその列の一番前だよ!!!」




私はそこで雪奈と離れて、自分の席に座った。雪奈の後ろ辺りで、女子がワイワイと盛り上がっている。この席は丁度端っこで、隣には誰も座っていなかった。妙な空白感を感じる。




ぼーっとしていると、雪奈がやって来た。荷物を整理し終わったらしい。




「結芽!!此処ってどんな人がいるのかなぁ~?」


「え、どんな人って....う~ん、怖い人とか?」


「えぇ!!怖い人!?嫌だなぁ....」


「いやいや、信じてどうすんの。例えばの話だよ例えばの!!」


「あぁ、そっかぁ。ゴメンね、私先走っちゃった。」




雪奈は優しい。こうやってちゃんと謝ってくれるし、座っている私に目線を合わせてくれている。なんで、私と雪奈が出会えたんだろう...ふと脳裏に浮かんだ。




「いいよいいよ。ところでさ....」




私の言葉を遮るようにチャイムが鳴った。同時に、担任と思われる人が入ってきた。




「は~い、座ってくださーい。」




「えぇ、こんにちは。私は皆さんのクラスの担任の津田優美です。よろしくお願いします。」


「さて....では、出席を取ります。」




一人一人名前が呼ばれていった。一人一人、返事をしていく。




「えっと、次、飛川さん.....あれ?」




その声に反応する者はいなかった。教室に静寂が訪れる。




「飛川さん?.....欠席ですかね...」




すると、教室のドアが勢いよく開いた。




「す、すみません、遅れました....」


「えっと...貴方が飛川さん?」


「はい、私が飛川夏来ひかわなつきです。」


「あそこの席なので、座ってください。」


「はい、分かりました...」




夏来ちゃんは私の隣の席に座った。額から汗が大量に出ている。相当走ったんだろう。




「はい、それでは出席確認を続けます。」




そうして全員の呼称が終わった。全員が出席しているそうだ。




「では、軽く自己紹介をお願いします。」


「じゃあ、出席番号1番の方から行きましょう。」




順番に挨拶が進む。自分の趣味を語る者もいれば、恥ずかしくてしどろもどろになっている人もいた。


暫くして、夏来ちゃんが登壇した。




「えっと、私は飛川夏来です。中学校の時には合唱部に所属していたのもあって、歌が大好きです!!気軽に話しかけてください!!」




彼女をじっと見つめる。「何が」とは言わないが、大きかった。多分、目の前にいる男子も、真ん中にいる男子も釘付けになったに違いない。身長は自分と同じくらいで、夏来ちゃんが少し高いくらいの差しかないのに。何故か、妬ましい気持ちになった。




自己紹介が終わり、朝礼が終了となった。今日は何か授業があるわけでもない。次の始業式まで少し時間があった。私がトイレから帰って席に座ると夏来ちゃんが話しかけてきた。




「あの、お名前なんて言うんですか!?」


「え、私?私は美濃川結芽。」




少しだけ笑顔になった。普段からニコニコしているわけではないが、笑顔は得意な方だと思う。友達と話していると自然と笑顔になるからだ。




「へぇ~!じゃあ、結芽ちゃんって呼ぶね!!」


「うん、ありがとう。よろしくね、夏来ちゃん。」


「うん、よろしくね!!」




たったそれだけの会話だったが、嬉しかった。ふと横に目を遣ると、ニッコリと嬉しそうな夏来ちゃんの横顔があった。その顔は朝日に照らされてて、どことなく美しかった。

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