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異世界フリーダム  作者: 柊司
11/12

10話 出会い(3)

「はあ……はあ……どうだ?」


 俺はMPが尽きると思ったその時に手応えを感じて『解呪(ディスペル)』に魔力を注ぐのを中断して奴隷の少女、ソフィーリアのステータスを確認する。


 ------

 名前:ソフィーリア

 Lv:16

 種族:ハーフエルフ

 性別:女

 年齢:19

 職業:奴隷《一条 四季》

 称号:祝福を受けし者の加護

 状態:


 HP:11/587

 MP: 9/655

 STR:621

 DEF:493

 AGI:664

 INT:545

 MDF:639

<魔法適性>

[水][風][無]

<スキル >

[鷹の目(ホークアイ)][魔力操作Lv:Ⅰ][危険察知Lv:Ⅱ][気配察知Lv:Ⅰ][弓術Lv:Ⅳ]

<ユニークスキル>


 ------


「はぁ〜〜よかった〜」


 俺はソフィーリアの呪いが無くなっているのを確認出来たことに安堵して床に座り込んだ、0にはなっていないが一度に大量にMPを消費した影響かそれとも単に気が抜けたのか一気に疲労が押し寄せてきたのだ……が、まだやっとかないといけない事があった。


「『回復(ヒール)』」


 呪いを消す事には成功したが、呪いによってソフィーリアのHPがかなり危険なところまで減っていたのでひとまず回復魔法で回復しておく、すると多少は体力が回復したのかソフィーリアがゆっくりと起き上がって自分の身体をペタペタと確認するように触っている。


「………?痛く……ない?……え?もしかして……治っ…たの?……ああっ…うぁあああああ」


「まさかっ……!?」


 呪いが消えたことを自認出来たようでソフィーリアが自分の身体を抱きしめるようにして泣き出し、奴隷商館の店主は目を見開いて驚きの表情を浮かべている。

 そして俺が床に座ったまま泣いているソフィーリアを見続けて数分が経ったところでソフィーリアが泣き止んで俺の方を向き、まるで騎士が主君にそうする様に片膝を付いて頭を下げた。


「貴方に……いえ、ご主人様に感謝を。ただ死を待ち望んでいた私がこうして再び生を実感出来る日が来るとは思っていませんでした」


「そんなに畏まらなくても良いよ、俺もソフィーリアの呪「ソフィ」」


「ご主人様の話しを遮ってしまって申し訳ありません。私のことはどうかソフィとお呼び下さい」


「ん、分かった。でも、さっきも言ったけどそんなに畏まらなくてもいいし呼び方もご主人様なんて呼び方しなくていいよ?ソフィの呪いを解けたのは正直偶々なんだ、確実に呪いを解ける自信があった訳じゃない」


「いえ、ご主人様と呼ばせて下さい。それにたとえ偶々だったとしても私がご主人様に救って頂いたことに変わりはありません」


「そか、ま…それは良いんだけど俺が今日奴隷商館(ここ)に来たのは冒険者である俺のパーティーメンバーを探しに来たんだ、ソフィにはその辺の説明が出来ないまま俺と奴隷契約をしてしまったけどソフィが冒険者は嫌だと言うなら奴隷から解放しようと思うんだけど?」


 カッコつけてはみたものの、正直かなり惜しいと思う。

 だってソフィめちゃくちゃ美人なんだけど、整った顔立ちに長めの金髪と翠眼がとても良い。

 でも地下に来る前に店主に教えてもらったことだけど上の階で店主に見せてもらっていた奴隷の女の子たちはただ単に俺の言った条件に合った奴隷を連れてきたのではなく、条件に合っている + 冒険者になってもいいという人だけが連れてこられていたらしい。

 なのでもしソフィが冒険者になるのは無理だと言うのならお金をいくらか渡して解放しようと思う。


「私は……必要…ありませんか?」


「いやいや、そういう意味じゃなくてね?もちろんソフィがついて来てくれるならめちゃくちゃ嬉しいよ?」


「ご主人様が良いのであれば私はご主人様について行きます。どうか私をご主人様の側に置いて下さい」


「……分かった。これからよろしくね?」


 せっかく自由になるチャンスなのに俺について来てくれるなんて俺からすれば嬉しいんだけど、いいのかなぁ?うーん…ま、それは俺が考えてもしょうがないか、せっかく仲間になるんだから奴隷解放云々は追々考えよう。


「話はつきましたか?」


「あぁはい、大丈夫です」


 見計ったように、というかまさに見計ったんだろうけど店主が俺たちの会話が終わったタイミングで話しかけてきた。


「それでは彼女に水浴びと着替えをさせてからイチジョウ様にお渡ししますので最初の部屋で少しお待ち下さい」


「分かりました」


 地下を出たところで男の店員さんが待機していて俺は店員さんと最初の部屋に、ソフィは店主と別の場所に向かっていった。

 そうして最初の部屋に戻ってきた俺は30分ほど部屋の中で待機しているとソフィと店主が戻って来た。


「お待たせしましたイチジョウ様。それでは彼女をお渡しします」


「ご主人様、どうかこれからよろしくお願いします」


「うん、それじゃあ行こうか、店主さんありがとうございました」


「こちらこそありがとうございました。奴隷が入り用の際はまた是非お越し下さい」



 ◇



「さて、まずは服かな」


 地下で着ていたボロボロの布きれみたいな服から多少マシなものに着替えさせてもらったようだがそれでもまだ女の子に着させるような服ではないので、新しい服を買うために服屋を目指して歩き出す。


「服ですか?見たところご主人様の着ている服は汚れや破れもないようですが?」


「んん?いやいやソフィの服だよ?」


「え?」


「え?」


 え?俺なんか変なこと言った?ソフィめちゃくちゃポカンとしてるんだけど?


「私の服……ですか?私の服はこのままでも構いませんよ?」


「いや構うよ?流石にずっとその格好をさせる気にはならないし、させないよ?」


「ですがわざわざ奴隷に服を買い与えるなんて普通しませんよ?」


「ん?んー…まあ俺がソフィに服を買ってあげたいだけだからさ、それに奴隷に服を買わないのが普通なら俺は別に普通じゃなくていいしな」


「そうですか……ありがとうございます」


「はは!まだ買ってないのにお礼なんていいよ。それより確認しときたいんだけどソフィも冒険者になるってことでいいんだよね?」


「はい!もちろんです」


「ん、じゃあもう一つ質問、ソフィの戦闘スタイルを教えてくれるかい?因みに俺のメインの武器は剣でサブに槍、あと魔法もそれなりにって感じかな」


 まあ[鑑定]でソフィが弓を使うのは分かってるんだけど一応聞いておかないとね。


「………私のメインの武器は剣です」


 ………ん?なんでここで嘘をつくんだ?意図がよく分からないな、流石に何かしら理由があって嘘をついているんだろうけど、スキルに[弓術Lv:Ⅳ]とかあるんだからどう考えても弓がメイン武器だよな?ていうかスキルの構成が射手(アーチャー)て感じがバンバン出てるし、しかもソフィはハーフだけどエルフだしイメージ的にも弓って感じだよなぁ。

 どうしても弓を使いたくない、もしくは弓が使えないって理由があるなら仕方ないけどそうじゃないならはっきり言って戦闘で危険が増すだけでメリットが無い。

 ……とりあえず[鑑定]が使えることを教えておくか、その他諸々も教えた方がいいかもだけどそれは追々ってことにしとくか。


「えっとなソフィ」


「なんでしょうか」


「俺は[鑑定]が使えるんだ」


「!?」


 嘘をついた理由が知りたくて[鑑定]が使えることをソフィに教えると、ソフィは顔面蒼白になって歩いていた足を止めて道の真ん中で土下座をした。


「えっ!?どうしたんだソフィ!?」


「奴隷が主人に嘘をつくなど殺されても文句は言えないことです。ですが私はまだご主人様に呪いから救っていただいた恩を返せていません。どうか私を殺すのはご主人様に少しでも恩を返せた後に」


 なんか無茶苦茶物騒なこと言ってるんだけど?嘘ついたくらいで殺されるとか奴隷の命の扱い軽すぎるだろ……。

 俺は土下座をしているソフィを立ち上がらせながら会話を続ける。


「ソフィ、勘違いしてるかもしれないけど俺は別に怒ってる訳じゃないんだ」


「……そうなのですか?」


「うん、俺はなんでソフィが弓じゃなくて剣がメイン武器なんて言ったのかを知りたいんだ」


「私のメイン武器はご主人様のおっしゃる通り弓です。ですが奴隷が後衛職というのは……」


 また()()()……さっきからソフィは何かにつけては奴隷が、奴隷がって言うけどこの世界の生まれじゃない俺からしたら全く理解できない感覚なんだよな……。

 うーん、さっきは追々俺の秘密を教えていこうと思ってたけどやっぱ俺が異世界人てことくらいはソフィに教えておくか?でもここだと周りに人が居るしなあ……あ、だからこういう時こそ魔法に頼りゃ良いんだよ。

 えーと、声を出さずに意思の疎通が出来る魔法をイメージすりゃいいのかな?…………お、魔法が浮かんできた。

 今更だけどホントこの不思議な感覚なんなんだろな?使いたい魔法の効果や傾向なんかをイメージするとまるで知っていた知識を思い出すみたいに自然とその魔法が頭の中に浮かんでくるこの感覚。

 考えすぎてもしょうがないし便利だから別にいいんだけどね…。


(『念話(テレパシー)』)


 俺は心の中で魔法を唱えて声を出さずにソフィに話しかける。

 因みに『念話(テレパシー)』だけじゃなくて他の魔法も別に声に出さなくても魔法が発動するのは確認済みで、普段は魔法の名称を声に出して使ってるけどそれはなんとなく雰囲気でそうしてるだけだ。


(ソフィ聞こえるか?聞こえていたら心の中で返事をしてくれ)


「っ!!??」


 急に頭の中で声が聞こえてきたことに戸惑った様子のソフィはビックリした表情で辺りをキョロキョロと見渡してから俺の方を見る。


(ご、ご主人様ですか?)


(そうそう、ちょっと周りに聞かれたくないことがあるから『念話(テレパシー)』の魔法でソフィに直接話しかけてるんだ、このまま歩きながら話そうか)


(はい。『念話(テレパシー)』……聞いたことがない魔法です。それに先程ご主人様は魔法を唱えていないようでしたが?)


(ん?それって呪文的なやつのこと?)


(いえ、呪文は魔法のイメージが苦手な初級者がイメージの補強をする為に唱えるものというのが一般的です。私が言いたいのはご主人様が魔法の名称を口にしていない……無詠唱で魔法を使用したことに対してです。初級の魔法ならともかくこんな明らかに初級じゃない魔法を無詠唱で使うなんてご主人様はいったい……)


(うん、その辺りも含めてソフィに言っておきたいことがあるんだ、俺はねこの世界の人間じゃない……所謂異世界人なんだ)


(異世界人……母から聞いたことがあります。この国の外でもなく他の国の外でもなく海の向こうでもないもっとずっと遠い別の場所から来た人のことだと……)


(ん、まあその認識で大丈夫かな?とりあえずもの凄く遠い所から来たっていうのが伝われば良いや、なんで俺が異世界人てことをソフィに教えたかというとこの国や他の国の常識は俺にとっての常識と全然違うんだ)


(…それでご主人様は私のことを奴隷扱いしないのですか?)


(端的に言うとそうだね……話を戻すけどこれから戦闘では俺が前衛でソフィが後衛ね?もしこれから先仲間が増えたらその時はその時に考えよう)


「私以外にも奴隷を増やすつもりなんですね…」(ボソッ)


(ん?何か言った?)


(いえ、なんでもありません。ご主人様が前衛をすることにまだ納得出来ませんが、私が前衛をやっても正直足を引っ張るだけの可能性が高いのでしっかりと後衛としての役割を果たします)


(うん。期待してる。でも無理はいけないよ?)


(分かりました。…あの、ひとつ質問してもいいでしょうか?)


(良いよ、どんな質問?)


(ご主人様は勇者様なんですか?)


(勇者?いや、違うけど…どっから勇者(そんなの)が出てきたんだ?)


(違うんですか?母から過去に勇者と呼ばれた人のほとんどは異世界人だったとも聞いていたので……)


(へぇ、やっぱり俺以外にも異世界人っていたんだ、ソフィは他にも異世界人について何か知ってるの?)


(そうですね……勇者様じゃないということはご主人様は何処かのお城で召喚されたわけじゃないんですよね?)


(うん?うん。俺は気付いたらこの街の近くの草原にいたんだ)


(草原ですか……私が知っているのは一部の王族のみが使えるという召喚魔法によって召喚される。もしくはご主人様のようにこの世界のどこかに突然現れるかのどちらかだそうです)


(それだと俺は後者だね……てか召喚魔法とかやっぱあるんだ?)


(はい。先程も言った通り全ての国の王族ではなく一部の国の王族のみしかつかえないそうですが…)


 一部の国の王族……ね、もし俺がどこかの国で召喚されてたら今みたいに冒険者としてこの世界で自由に生きていくことは出来なかったかもしれないな…。

 絶対とは言い切れないけど勇者として召喚された人はその国で管理されるパターンが濃厚かな。

 というか勇者がいるってことはやっぱり…。


(ソフィ、もしかしてだけど勇者が存在するってことは魔王なんかもいたりするの?)


(もちろんいますよ?)


(やっぱりいるんだ…)


(勇者様は人族に仇なす魔王を倒す為に現れると言われていますから)


(今の時代に勇者はいるの?)


(いないと思います)


(てことは魔王もいないのかな?)


(それは……分かりません)


(あ、そっちは分かんないんだ?)


(はい…魔王の存在はたとえ確認されていても民には知らされませんので)


(そうなんだ…まあそれくらいの情報規制はするか、無闇に民衆の恐怖を煽ってもしゃーないしな……ん)


 ソフィと頭の中で会話をしていたらいつの間にか服屋の前まで来ていた。








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