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異世界フリーダム  作者: 柊司
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9話 出会い(2)

 先程俺をこの部屋に案内してくれた店員さんが少し慌てた様子で入って来た。

 さっきのセリフからしてこの奴隷商館の奴隷に何かあったんだろう、しかし()()とは何やらワケありの奴隷みたいだな。

 俺が大人しく店員さんと店主のやり取りを見ていると何か思い付いたのか店主が俺に話しかけてきた。


「普段であればお客様に見せる奴隷ではないのですが、イチジョウ様がよろしければご覧いただきたい奴隷が居るのですがどうでしょう?先程の彼との会話で気づいているとは思いますが()()()()()()の奴隷でして」


 ん?てっきり今日のところはお引き取り下さいとか言われるのかと思ったけどまさかのワケあり奴隷を見てくれとは……なんかしらの意図があるんだろうけど見るだけならいいのか?話の流れからしてめちゃくちゃ高い高級奴隷とかじゃなさそうだけど……いや、とりあえず聞いておきたい事があった。


「えーと見るだけなら構わないんですけど、もし仮にその奴隷の見た目がグロい事になってるなら遠慮したいんですけど……」


 散々魔物とかブッ殺しまくっといて今さら何言ってんの?とか思われるかも知れんが、魔物と人のグロは違うから!流石にまだそこまでのグロ耐性ないから!


「グロ……?ああいえ、ワケありとはそういう意味ではなくてですね……」


「違うんですか?それは良かったんですが、じゃあワケありっていうのはどういう?」


「一言で言いますと、()()です」


 呪い…か、おそらく状態異常の一つなんだろうけど今まで呪いにかかった人を見たことも自分が呪いにかかったこともないな、だけど呪い(それ)がそこまで深刻なものなのか?この世界であれば治癒術士(ヒーラー)とかの魔法やポーションの類で解けるんじゃないのか?


「呪い……ですか、それだったら解く方法があるんじゃないですか?」


「ええ、通常の呪いであれば教会の神官、もしくは治癒術士に解いてもらうことは可能です。しかし奴隷の呪いを解いたり大怪我を治したりというのは普通はしません。まあそれをしても元が取れる高額の奴隷であれば別ですが、しかし今話をしているこの店のワケあり奴隷は呪いを()()()()()()()()()()()()()のです」


「解かない、ではなく解けない、ですか?それはどういう?」


「そのままの意味ですよ、その奴隷にかかっている呪いが強力過ぎてこの街のどの神官や治癒術士でも解けないのです」


「それは……なら何故俺に見せようと?」


 本当になんでだ?理由が全く分からん。

 まさか同情してその奴隷を買うとでも思われてるのか?いくら日本人の俺でもそこまでお人好しじゃないぞ?


「何故でしょうね?わたしも自分で何故イチジョウ様にその奴隷を見てもらおうとしているのか分かりません。強いて言うなら奴隷商人としての勘……でしょうか」


「勘?……まぁいいです。それでその奴隷は何処に?」


「それでは行きましょう、わたしに付いてきてもらえますか?」


 さっきまで奴隷は全員この部屋に連れて来てたのに今度はこっちから見に行くのか……って当然か、普通では解けない程の呪いにかかってる人?なんだから連れてくるのは酷だよな。

 俺は店主に続くように部屋を出ると店員さんもどうやら一緒にその奴隷のところに行くようだ。

 3人とも何も喋らずに店主が先頭を歩いて商館の中を歩いていると一つの扉の前で店主が止まった。


「ここから地下に行きますが、イチジョウ様はあまり檻の中を見ない方がよろしいでしょう」


「??どうしてですか?」


 俺は頭の上にハテナマークを浮かべながらそう店主に質問した。


地下(ここ)には犯罪奴隷か欠損奴隷しかいませんので、犯罪奴隷はともかく欠損奴隷はモノによってはわたしでも目を背けたくなるような状態の奴隷もいるのでイチジョウ様には少々刺激が強過ぎるかと思いまして」


「あ、そういう事ですか分かりました。……でもそういう奴隷にも需要はあるんですか?」


「もちろんございますよ。犯罪奴隷は主に鉱山のような過酷な環境の労働力に買われる事がほとんどですし、欠損奴隷に関しては()()()()()()の貴族様たちが買っていかれますね」


 純粋な興味から質問したんだが失敗したな、犯罪奴隷の方はともかく欠損奴隷を買っていくのは変態趣味のクソ貴族かよ。

 まだ直接貴族を見たことはないけど街で話を聞いてる限りはほとんどの貴族はロクな奴らじゃないらしいからな。

 今の冒険者ランクでもあり得るが、今後冒険者ランクをさらに上げていけば遅かれ早かれ貴族とは接する機会があるらしいし、貴族には十分注意しておこう。

 そんな風に考えながら店主について行っていると不意に店主が立ち止まった。


「この奴隷です。そしてイチジョウ様には一つ謝らなければなりません」


「謝る?」


 店主が止まった先の檻の中には一人の少女?がグッタリと横たわっていた。

 背を向けているので顔は見えない体勢だけど肩や胴の部分が規則正しくとは言えないが上下に動いているので生きてはいるようだ………が良い状態ではないのは分かる。


「先程はこの奴隷を見てもらうだけと言いましたが、イチジョウ様にはこの奴隷を()()()もらいたいのです」


「は?」


 突然何を言ってるんだこの店主は?この少女を殺せ?俺に?

 いやでも冗談だろと言いたいけど店主の目は1ミリもふざけてない。

 なら何か理由があるはずだ、少女を殺すつもりは全く無いけど最低限理由くらいは聞いておきたい。


「………何故この少女を殺せと?」


「突然こんなことをお願いして失礼なのは承知ですがこの奴隷も殺し(それ)を望んでいるのです。奴隷は自死出来ないように‘奴隷紋’で行動を制限されていますし、わたしたち奴隷商も法によって奴隷を殺すことは出来ません」


「……それは俺がこの少女を買って、その上でこの少女を殺せってことですよね?」


「そうなります。奴隷の主人が奴隷を殺害しても罪に問われることもありませんから……ただイチジョウ様にこのような事をお願いするのはイチジョウ様の強さであればこの奴隷を苦しませることなく殺せると思ったからです」


 苦しませる?一体何を言ってるんだ?と疑問に思ったが、店主の次のセリフである程度理解した。


「この奴隷のステータスは呪われているとはいえかなり高く、そこらの腕自慢では即死させる事が出来ずにかえって苦しませるだけになるでしょう。呪いさえ無ければイチジョウ様の条件を最も満たしていたのがこの奴隷というのは皮肉ですが、さらに言えば殺すために奴隷を買う人はまずいません。なにせ金を捨てるのと同じですから」


 なるほどな、ステータスが高いせいで逆に呪いに耐えられていて長く苦しんでいる。

 しかも死にたくても奴隷商の人間は法を恐れて殺せない。

 仮に殺せるレベルの人が来たとしても罪にならないためには奴隷を買うしかない。

 まあ無料(ただ)でこの少女を渡せば話は違ったんだろうけどこの人たちも商売だからそうもいかないんだろう。

 正直言って気は全く進まないけどもう聞かなかった見なかったなんて事には出来ない。

 俺はこの奴隷の少女に義理も何も無いけれど、苦しみから解放してあげようと決めた。

 でも少女を殺す前に試してみないといけない事がある。

 それでもダメなら……仕方ない。


「分かりました……この子を買います。ただその前にこの子と話をしても良いですか?」


「本当ですか?ありがとうございます。しかし今は気を失っているみたいですし、意識を取り戻しても話す気力があるかは分かりませんよ?」


「あっ……そうか」


 確かにこの奴隷の少女は俺たちが檻の前に来てから今までまったく動いていない。

 多分例の呪いの発作?で気を失っているみたいだ、本人の意思に関係なくこの子を買うのはどうかと思うし、試しておきたいと思ったこともやらない方がいいだろう。

 どうしようかと考えていると小さくか細い声が聞こえてきた。


「だ………れ…?」


「む、目が覚めましたか?この方はお前をその苦しみから解放してくれるお方です」


「ほ………ん……と………?」


「ええ本当です。ただその前にお前と話しがしたいそうですが、話せますか?」


「こ…………し……て」


「ああ、殺してあげよう。ただその前に一つだけ聞きたいんだ………君は本当に死にたいのか?」


「………………」


「俺は魔法が使える。君がまだ生きたいと願うのなら可能性は低いと思うけど呪いを解く魔法を使いたいんだ、もう一度聞くけど君は本当に死にたいのか?」


「…ぃ………き………た……ぃ」


 涙を流しながら確かに生きたいと言った彼女を見て俺はこの少女を救いたいと……いや、救うと決めた。


「店主さん。この子はいくらですか?」


「……あ……あぁ、この奴隷は銀貨30枚です」


「分かりました。これを」


 俺は大銀貨3枚を渡し受け取った店主はこの場で奴隷の契約について簡単に説明してくれた。

 これからこの子には奴隷紋と呼ばれる契約魔法をかけるのだが、奴隷紋をつけた奴隷とその主人は魔法的な繋がりがあり、奴隷は主人の命令には基本的には逆らうことが出来ず、命令に逆らうとその奴隷に痛みが襲うようになっている。

 そして契約している奴隷の主人が死亡した場合はその奴隷も死ぬ……ただし死ぬかどうかの設定は主人が奴隷商で変更する事が出来る。

 説明はこれだけで、説明をしている間に契約魔法は終わったらしい。


「これでこの奴隷はイチジョウ様のものです………ですが何をするおつもりなのですか?」


 俺は店主の言葉を無視して既に準備を始めていた。

 準備と言っても集中するだけの話だが…。

 その前にこの子の状態を確認しておく必要があると思い[鑑定]でステータスを見た。


 ------

 名前:ソフィーリア

 Lv:16

 種族:ハーフエルフ

 性別:女

 年齢:19

 職業:奴隷《一条 四季》

 称号:狩人

 状態:呪いLv:Ⅷ


 HP:11/587

 MP: 9/655

 STR:355(621)

 DEF:324(493)

 AGI:406(664)

 INT:398(545)

 MDF:475(639)

<魔法適性>

[水][風][無]

<スキル >

[鷹の目(ホークアイ)][魔力操作Lv:Ⅰ][危険察知Lv:Ⅱ][気配察知Lv:Ⅰ][弓術Lv:Ⅳ]

<ユニークスキル>


 ------


 確かにステータスが高い……がHPとMPがヤバイ。

 しかも呪いにもLvがあってそのLvがⅧってのは何かの冗談だと思いたいが、今はそんな状況じゃない。

 俺は自分の内側に意識を集中して呪いを解く魔法を探す。

 少し前に分かった事だが魔法とは本来ならこんな風に使おうとするのではなく、本や人から教えられてイメージを固めそれを魔力で形作ったものが『魔法』となる。

 俺は最初何となくのイメージだけで魔法を使っていたが、こうして使いたい魔法を探す事でイメージだけで使う魔法よりもさまざまな魔法を使えるようになった。

 そして今は使ったことはないが呪いを解くための魔法を探しているが………あった。


「『解呪(ディスペル)』」


 俺は呪いを解く魔法を使ったが、呪いが解ける気配はない。

 ならばありったけの魔力を注ぐだけだと考えた俺はその言葉通りありったけの魔力を注いだ。


「うおおおおおおお!!!」




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