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第2章 全てがステータスによって決まる世界 ②


「じゃあな、雑魚野郎。今度から喧嘩売る相手はちゃんと選んだ方が良いぞ? って、相手選んでもそのステータスじゃ誰にも勝てねぇか? ハッハッハッ」


「いくらレクスにムカついたと言っても、そのステータスで銀等級冒険者に挑むなんてねぇ・・・・真正のバカって感じ?」


「勝負とは勝率を考えて行うものです。貴方の行動は単なる愚行だったと推察致します」


 そう、それぞれ罵倒の言葉を口にすると、レクスとその仲間たちはギルドから去っていく。


 後に残されたのはカウンターの前でボロ雑巾のように倒れている俺と、そんな俺をニヤニヤとした顔で見物してくる他の冒険者たち。


 (人が痛ぶられてるのを見るのはそんなに面白いものなのかね・・・・・)


 俺は痛む身体を抑え、ゆっくりと上体を起こす。

 

「ど、どうしましょう・・・・こういう時は、王宮の騎士様方に事後処理を頼んだ方が良いのかしら・・・・」


 カウンター横で狼狽えている受付嬢のそんな声が、起き上がる途中の俺の耳に入ってきた。


 その発言に、俺は思わず身を固くしてしまう。


 (王宮の騎士だと? 冗談じゃない!)


 そんなものを呼ばれたら、確実に俺の存在が城の中に広まってしまう。


 そうなったら、俺を召喚したルドナがまた、王やエステラに何を言われて傷付けられてしまうか・・・・。


 せっかく庇ってくれた彼女に迷惑を掛けてしまっては面目が立たない。


 ここは、下手に他の騒ぎを起こさないためにも・・・・・早々に退散した方が無難だな。


 このまま惨めな醜態を晒し続けてもしょうがないし・・・・・。


「痛っ。容赦なく殴りやがって・・・・何で最後は治癒魔法かけてくれないんだよ、クソッ・・・・・」


 よろめきながら立ち上がり、足を引きずりながら出入り口を目指す。


「よっと」


 しかし、途中でテーブル席に座る男に脚を引っ掛けられ、俺は再び床に倒れ伏してしまった。


「ぐふっ!!」


「ギャハハハハハッ!! ちゃんと歩けよ三下ぁ!!」


「・・・・・・・・・・・」


 これが、この世界の冒険者というものなのか。


 俺がラノベや漫画で見てきた冒険者とは、ずいぶんとかけ離れた存在だ。


 冒険者というのはもっと高潔で、弱きを助け強きを挫く、人々に希望を与えるファンタジー世界のヒーローのような・・・・そんな存在を想像していたんだが・・・・・。


 まさかこんな腐った連中が、その憧れの冒険者だったなんてな。


 夢を打ち砕かれたような気分で、反吐が出る。


 「二度と来るんじゃねえぞ!! ここはテメェが冒険者ごっこをしに来るところじゃねぇんだからよぉ!!」


 脚を引きずりながら出口の前に立つと、背後からそう叫ばれた。


 (冒険者ごっこ、か・・・・)


 確かに、俺のステータスじゃそう思われても仕方ないな。


 何たってほぼ1か2の能力値だし。


 こんなステータス、馬鹿にしないでくれと言う方がおかしい話か。


(糞がっ・・・・)


 俺は悔しさと共に奥歯を噛み締め、そのまま冒険者ギルドを後にした。





「はぁ・・・・結局振り出しに戻ったな・・・・」

 

 最初に居た公園のベンチに戻り、一息付く。


 未経験者大歓迎!といっても、流石に俺のような最弱のステータス値を持つ人間は冒険者になることは不可能か。


 まぁ冒険者じゃなくても他の仕事にも有り付けなそうだけどな、俺の能力値じゃ・・・・。


 改めて非情理な現実に、嫌気がさす。

  

 (何で俺は異世界にやってきたのに、職探ししてんだろうな・・・・)


 もっとこう、ラノベの異世界転生モノみたいにさぁ・・・・普通は、華やかな第二の人生が幕を開ける展開だろ?


 なのに公園の噴水近くのベンチに座って仕事探しって、何だこれ。


 挙句に冒険者ギルドではステータスを見下され、ボコボコに殴られる始末だし。


 異世界に来たってのに夢も希望も無いんですけど・・・・・辛すぎる。


「・・・・鬱だ・・・・」


 はぁ。こういうときは無心で飯を食うに限るな。


 会社で失敗したときはよく行きつけのラーメン屋に通って爆食いしてたし。


「なけなしのお金を使うのは勿体無いけど、背に腹は変えられんしな」


 先程碧髪の魔法少女に貰ったお恵みのお駄賃をポケットから取り出す。


「これがいくらあるのかは分からんが、金貨ってのは多分、相当な金額に・・・・って、あれ?」


 魔法少女に貰ったのは金貨1枚と銀貨2枚。


 それなのに何故か、手のひらにあるのは銀貨1枚のみ。


 もう一度ポケットを確認してみるが、そこには何も入ってはおらず。


 「ま、まさか・・・・・・スられた?」


 ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!


 俺の唯一の希望がぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!


 こんな、右も左も分からない違う世界から来たばかりの文無しから金を盗むか普通!!!


 この世界の人間、ろくな奴がいねぇなオイ!!


 俺が魔王だったらこの国を一等最初に滅亡させるぞ、絶対!!

 

「グ〜〜〜〜〜ッ・・・・・・・」


(・・・・・・・・・・・)


 怒っても、腹は空くもの。


 朝から、というかこの世界に来てから何も食べてないし当然といえば当然か。


 まずはこの銀貨で食料を買いに行くとした方が良さそうだ・・・・。


 俺は立ち上がり、先ほど通った商店街通りに戻った。






「らっしゃいらっしゃい!! 良い魚仕入れてるよ!!」


「エルフの国、リールウッド共和国のベインアップル入荷したよ〜!! 買ったっ買った〜!!」


 さっきは人が多くて露天をじっくり見ることができなかったが、今回は人通りが減っており、ちゃんと店のひとつひとつを見て回れそうな様子だ。


 俺は早速、遠目に露天を観察してみることにする。

 

(おぉ、すっげぇなんだあれ)


 黄色と緑の線が縦に入ったしましま模様の・・・・林檎?のような果実や鰐みたいな口をした変な顔をした魚など、ファンタジックな食材の数々が棚の上に陳列されていた。


 どんな味がするのか非常に興味が唆られるが・・・・今は異世界の見知らぬ食べ物を買うのはやめておこう。


 調理器具もないし、どうやって食べたら良いのか分からないで、せっかくの食材を無駄にしてもアレだしな。


 今はとにかく、前に居た世界の人間なら誰でも分かるような・・・・手頃に食べられるものが欲しい。


「おっ!」


 そう考え散策していると、壁際に並ぶ露天のひとつに、見知った食べ物を見つける。


 (あれは・・・・・ホットドッグか?)


 棚の上に、ふっくら焼き上げたパン生地にソーセージのようなものが挟まれた・・・・パン料理が置かれている。


 お腹も限界なので、俺は銀貨を握りしめ、さっそくそのホットドッグが売られている露天に近付いた。


「いらっしゃいま・・・・って、おぉ!? どうした兄ちゃん!? 頬っぺた赤く腫れ上がってるぞ!?」


 店主の男は俺の顔を見るなり目を開き驚愕の声を漏らす。


 鏡を見ていないので今の自分がどんな顔をしているかは分からないが・・・・まぁ、さっき殴られたばかりだからな。


 何となく、今の自分がどんな酷い顔をしているかは想像が付く。


「これは、その・・・・さっきトラブルに巻き込まれちゃって・・・・・」


「トラブル? ・・・・黒髪黒目・・・あぁ、あんたもしかして東洋の人かい?」


 東洋の人・・・・合ってはいるが、もしかしてこの国ではアジア人種は珍しい存在なのか?


 色々その辺のことを聞き出したいところだが・・・・・まぁ変に思われないためにも、とりあえずここは話を合わせておいた方が良いか。


「えぇ、まぁそんなところです」


「やっぱりね。この国じゃ外国のヒュームにあんまり良い対応しない奴多いからさぁ。あんちゃん、不運だったね」


「なるほど、そういった風潮があったんですね・・・・。あ、そうだ。すいません、銀貨1枚でこのホットドッグって買えますか?」


「ホットドッグ? あぁ、このミートブレッシュのことかい?」


「ミ、ミートブレッシュ?」


「うん、ミートブレッシュ。ひとつ銅貨3枚。銀貨だったら7つほど買えるよ?」


「あ、じゃあこの銀貨でひとつもらっても良いですか?」


「あいよ。じゃあおつりはええと・・・・はい、銅貨18枚」


 銀貨を渡し、銅貨18枚を受け取る。


 今度は盗まれないように注意しなきゃな・・・・と言っても入れる場所がないから変わらずポケット行きだが。


「そんではい、商品のミートブレッシュ。暑いうちに食べな」


「ありがとうございます」


「毎度どうも。今度はトラブルに巻き込まれんよう気を付けんだぞあんちゃんー」


 そう言って笑顔で見送ってくれる店主。


 良いい人もいれば悪い人もいる、ってところか。


 ようやっと腹の虫も抑えられそうだし、幾分かさっきの怒りを鎮められそうだな。


 ・・・・・なんという単純な人間なのだろう、俺。


「美味い」


 我慢できず、歩きながらホットドッグもといミートブレッシュを頬張る。


 口の中にソーセージの肉汁が広がり、焼き上げたばかりのパンがホカホカしていてとても美味しい。


 うん・・・・これは完全にホットドッグだな。


 見知らぬものばかりの異世界だが、知っているものもあるんだな。


 馴染み深いものに出会えて少しばかり心にゆとりが生まれる。




 そうして俺はホットドッグを食べ終わると、いつものーーーーーー実家のような安心感のあるーーーーーー公園に舞い戻ってきた。


 噴水近くのベンチに腰掛けると、辺りはすっかり日が落ちかけ、夕暮れ時となっていた。


 真っ赤に染まった空に、カラスがカーカーと言って飛んでいる。


 公園に人影は無く、街灯がポツポツと頼りげない光を灯し出していた。


 その光景に、何とも言えない寂寥感を感じてしまう。


「・・・・はぁ。俺、今夜はこの公園で寝泊まりするしかねぇのかな」


 異世界に来て早々、まさかホームレス生活を強いられることになろうとは。


 しかしこっちに来てから本当、ろくな目にあってねぇな。


 王には勇者失格の烙印を押され、冒険者ギルドではリンチに合い、どこかでは金を盗まれる。


 そして挙げ句の果てには野宿ときた。


 糞ゲーすぎんだろ、この世界・・・・。


 正直に言ってしまえば、元の世界に帰りたくてたまらない。


(あっちの世界どうなってんのかなぁ・・・・・)


 寝たきりだった俺が病院から姿を消して、みんな驚いているんだろうか。


 いや・・・・両親は俺が消えようが何しようが興味はねえだろうな。


 兄貴は・・・・・クソ真面目の完璧人間だからな。


 きっと、俺を心配して探し回っているんだろう。


(・・・・・・・・・・・・)


 本当だったら、兄貴がルドナに召喚されるはずだったんだよな・・・・。


 多分、兄貴だったらこんなことにはなっていなかったと思う。


 最強無双ステータスを持って転移して、ルドナも、王やエステラに馬鹿にされることも無かっただろう。


 災厄を軽く倒して、きっと元の世界に帰ってただろうな。

 

「ハハ、絶対そうなってただろうな。んで、あいつだったらラノベ主人公みたいなチートスキルとか持ってて、旭山 樹なんて目じゃないくらいの勇者の素質持ってて・・・・・」


 ん? スキル?


 待てよ、確か俺ってクソ雑魚ステータスだったけど・・・・使用できる魔法がひとつあったよな??


 確か・・・・ゴーレム錬成だっけ?


 ゴーレムっていえば、RPGゲームに出てくるそこそこな強さを持った魔物だ。


 防御力とHPに優れたモンスターというイメージがある。


 そのゴーレムを召喚? 錬成? できれば、俺、この世界で戦っていけるんじゃ・・・・・??


「よっしゃ!! さっそくゴーレムを造ってみっか!!」



 んーと、でもそうやって作り出すんだろう。


 魔法・・・・確かエステラやレクスの仲間の修道女は手をかざしながらスキル名を口にしてたような・・・・。


 うーん、何だか良い歳した大人がするには気恥ずかしい動作だけど・・・・せっかく使えるスキルを、使わない手はない。


 ここはひとつ、我慢してやってみるとするか。


 ベンチから立ち上がり、俺は地面に向けて手をかざす。


「ええと、 ス、スキル《ゴーレム錬成》発動!! いでよ!! ゴーレムッ!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 何も、出ない。


 マジかぁ・・・・めっちゃ恥ずかしかったんだけど・・・・。


 公園に誰もいないのが本当救いだったわ、これ。


 誰かに見られていたら即死レベル。


 前の世界じゃ夕方の公園で大の大人がこんなことやってたら通報レベルもんの不審者だよ、間違いなく。


「はぁ・・・。習得魔法って書いてあったのに、使えないってどういうことだよ、いったい・・・・」


「ンゴ?」


「なぁ? お前も理不尽だと思わねえか? 俺ばっかこんな使えないステータスとスキル持ってよぉ」


「ンゴンゴ」


「おぉ、分かってくれるか。お前良い奴だなぁ・・・・・って、あれ?」


 いつの間にか目の前に、高さ5センチほどのとても小さな動く物体がいる。


 近付いて見てみるとそれはーーーーー丸い黒いふたつの目と丸い黒い口が付いている、ひょうたん型の身体に手足が生えた奇妙な生物だった。




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