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第4章 偽りの勇者 ②


「ただいま~っと・・・・ん?」


 爺さんのゴミ屋敷から出て宿屋に戻ると、ロビーには誰もいなかった。


 そしてカウンターには「本日の宿泊受付は終了しました」と、大きく書かれた紙が無造作に置かれていた。


 もうすっかり日も落ちているので、今日の営業は終了ってところなんだろうか。


 まぁ、今朝の仕事内容を見る限り、この宿屋は客足がある方ではなかったからな。


 一日に宿泊する客が1人か2人じゃ、営業時間を短縮するのも確かに頷ける。


 加えて従業員も少ないしな。


 仕事としては、夜遅くまでやることもないのだろう。


 あらやだ、すっごいホワイトな企業。


 潰れかかってるのさえなければ即就職したい案件だわ。


「・・・・確か、今朝休ませてもらったあの部屋を自由に使って良いんだったか」


 会ったばかりの俺にこんなに良くしてくれるヘレナには本当に頭が上がらない。


 住所不定無職の俺としては、住み込みで働かせてくれるなんて非常にありがたい話だ。


 それに加えて経歴不詳の怪しい俺を何も言わずに家に上げてくれるとか、正直、彼女は女神にも等しい。


 ヘレナ教があるのなら即座に入信しても良いくらいだな、うん。


 女神ヘレナ様に進められたら怪しいツボとか平気で買っちゃう。


 飲んだものに幸運をもたらす浄化の水(ただの水)を買うのにも平気でローン組んじゃうぜ。


 唯一神ヘレナ様バンザイ! 唯一神ヘレナ様バンザイ!


 ー--と、まぁ、おふざけはこのくらいにしておいて。


 (・・・・・彼女は多分、俺が帰る場所がない人間だってことを何となくわかってくれていたんだろうな)


 ステータスも見ずに、何の利益ももたらさないであろう俺を雇ったんだ。


 味方になるという、あまりにも不確かな打算だけで自分を向かい入れたわけじゃないんだろう。


 何とも優しい奴だ。


 どうか彼女には報われて幸せになって欲しい。


「さて、ヘレナに恩を返すためにも、明日からバリバリ働くぞー」


 こんな俺をステータス抜きで拾ってくれた彼女のためにも、全力をもって宿屋を復興させなければな。


 まったく、ルドナに次いで恩人がまた増えちまったぜ。


 この世界に来てから年下の少女に助けられすぎだろ、俺。


「む? 帰ってきたか、アキト」


 部屋の前に辿り着いた直後、廊下の奥からドスドスと筋肉髭達磨の化け物ー---もとい、ゴズがやってきた。


 ゴズは俺の前までやってくると、フンスと、大きな鼻息を立てる。


「メシは食ったか?」


「食べてないです」


「なら、ついてこい。料理をふるまってやる」


「え?」


 困惑の声を上げた瞬間、またしても腕に抱えられ強制連行される俺。


 あの・・・・どこにも逃げないんでその荷物みたいに俺を運ぶのやめてくれませんかねぇ・・・・。


 せめて優しさあふれる抱え方・・・・お姫様抱っこみたいな・・・・いや、それはそれでアウトだな。


 男女でやるならなら微笑ましい姿だが、むさくるしい男同士がやるのは単なる地獄絵図だわ、うん。






「食え」


「いただきます」


 食堂に着いた俺は、ゴズに料理の乗った皿をテーブルに出される。


 色とりどりの色をした野菜が入っているスープと、鶏肉とサラダ、そして厚切りされた丸い大きなパンだ。


 昨日からまともな食事にありつけていなかったので、俺は飢えた獣のようにパンと肉にかじりつき、スープをガツガツと胃に流し込んでいく。


「どうだ?」


「うぅぅぅ・・・・めちゃくちゃ上手いッス・・・・」


 この世界で初めてのまともな食事。


 不味いわけがない。


 感動で涙を流し、素直にありがとうと感謝を述べると、ゴズはいかつい顔を綻ばせた。


「フッ、そんなに旨そうに食ってくれる奴は初めてだな。作った側としてこちらも嬉しいぞ」


「ゴズさんは料理もできるんスね。この宿屋に勤めて長いんですか?」


「あぁ。お嬢・・・・ヘレナ様の母君に幼少の頃、拾って貰ってな。この宿屋に来てからかれこれ20年になる」


「恩義があるんですね。だから、他の従業員が離れていってもこの宿屋に残ったんですか??」


「そうだ。亡くなられたエレナ様のためにも、俺がヘレナ様を守っていかなければならないからな」


 ヘレナは、ゴズは働き口がないからこの宿屋に残っただけと言っていたが・・・・なんだよ、全然違うじゃねえか。


 お前が気付いてないだけで、味方いるじゃん、ヘレナ。


「・・・・シンジョウ アキト。お前には、礼を言いたい」


 そう言ってゴズは突如、俺に向かって深々と頭を下げてきた。


 俺は慌てて、ゴズの前では手をあたふたさせる。


「は、え!? 礼を言いたいのはこっちですよ!! 飯食わせて貰ったんスから!!」


「・・・・・俺は、ヘレナ様が悲しみの底に落ちていくのを止められなかった」


「え?」


「元々、口が上手いほうではないからな。俺は、彼女と深く親交を深めようとはしてこなかった」


「・・・・・・・・・」


「だから、彼女が母君を追って死を望んでいながらも、俺は何もすることができなかった」


「・・・・・・・・・」


「だが、昨日、重そうにお前を背負ってきた彼女はとても楽しそうだった。『変な人拾ってきたから介抱して』と口にして、笑った。ずっと暗い顔をしていた彼女が久々に笑顔を見せてくれた」


「・・・・変な人・・・・まぁ、いきなり味方になるなんて言うやつは間違っちゃいないか・・・・」


「シンジョウ アキト。俺が言うことではないかもしれないが、頼む。ヘレナ様の近くにいてやってくれ。彼女を支えてやってくれ」


「・・・・勿論ッスよ。味方になるって約束しましたから。第一、他に行く当てもないホームレスなんでね、俺」


「フッ、そうか。金はないが部屋だけは余っているからな。根無し草なら思う存分に使って行くと良い」


 そう口にしてゴズは扉に向かって踵を返す。


「小さいが二階に浴場がある。好きに使え」


「ありがとうございます」


「あぁ。明日は6時からまた指導をしてやる。早めに寝ろよ」


「はい」


 そして、ゴズは部屋から出ていった。


 パワハラ上司だが・・・・部下のことも気遣える優しい髭達磨だ。


 パワハラさえなければ、十分、尊敬できる上司かもしれない。


「・・・・はっ!! もしやこれは飴と鞭なのでは!? 指導って言っていたし、明日から地獄が始まるのでは!?」


 不吉な予感を抱えながらも、俺はガツガツと残った食事を胃に納めて行った。







 翌日、見事に予感は的中した。


 朝6時にゴズにたたき起こされた俺は、掃除、洗濯、料理の指導を受け、ミスするたびに身体のあちこちを強打された。


「違ーう!!!!! 窓際にまだ埃が残っているぞシンジョウ アキト!!!!!」


「ぐふっ!!!!」


「違ーう!!!!! もみ洗いがなっとらーん!!!!!!」


「あがっ!!!!!」


「違ーう!!!!! それではミディアムの焼き加減にはならーん!!!!!!」


「ぐぎっ!!!!!」



 そうこう暴力という名の指導を受けた俺は、全身ズタボロになりながら昼休憩を迎えた。


 食堂でゴズの作った昼食を死んだ目で食べていると、そんな俺を見てお腹を抱えて笑っているヘレナに遭遇する。


「プッ、あはははははは!! アキトさん、遠くから見てたけど生活力なさすぎでしょ!! 家事全般駄目駄目じゃない!!」


「っるせー、これでも一人暮らしの時は普通に生活できてたんだよ。お前の部下の髭達磨が家事スキルEXなだけだ」


「本当にー?? 洗濯もできないのに一人暮らしちゃんとできてたのー??」


「近所にコインランドリーあったからな。現代人は手使って洗うなんてしなかったんだよ」


「? コインランドリーって何?」


「俺と爺さんの同郷にあった・・・・自動で洗濯を行ってくれる機械だ」


「うーん、聞くたびに謎が深まるばかりだわ、あなたたちの世界・・・・聞いてる限り夢の国にしか聞こえないんだけど?」


 いやいや、俺たちの世界は別にデ○ズニーランドじゃねえぞ??


 むしろお前らの世界の方が夢の国だろ。


 魔法なんてものがあるくらいなんだし。


 まぁ、そんなくだらないことはさておき。


「なぁ、お前の母さんが亡くなる前はこの宿屋もそこそこ繫盛してたんだろ?? なんで亡くなった途端、こんな絶望的なくらい客足も従業員もいなくなったんだ??」


「・・・・・・・・・・・・」


 そう、気になっていたけど聞き辛かった疑問を投げてみると、ヘレナは複雑そうな顔をして俯き、押し黙った。


 そして数秒間思案すると、意を決したのか、ゆっくりとこちらに黄色い目を向ける。


「・・・・・この宿屋はね、元々冒険者や貿易商たちが好んで利用する旅の宿屋だったの」


「旅の宿屋・・・・」


「そう。この国の冒険者は普通、みんなギルドに併設されてる宿を使うんだけど、ホラ、ギルド間でも縄張りみたいなものがあってね?? 外国から来る冒険者はうちみたいな都心から離れた低価格の宿屋を好んで使うのが常だったのよ。でも・・・・・」


「でも??」


「一か月くらい前かな、街道の一部にある魔物が出没しちゃってね。そのせいで外国から来る旅行客が激減して・・・・城都付近にある宿なら知名度も集客力もあるからそんなにダメージはないみたいだけど、うちみたいな下町にある民宿、それも旅人が使う低価格が売りの宿じゃダメージがハンパないってわけ」


「・・・・・・・・・・」


「それに加えて、宿の経営の要だった母さんが亡くなっちゃったからさ。雇ってた人たちはみーんなうちを見限って、他の繫盛してる宿に行っちゃったの。ただの小娘の私じゃこの窮地を抜け出せないと判断したのね、きっと」


 そう言って、ガリッと、悔しそうに奥歯を嚙み締めるヘレナ。


「なぁ・・・・その魔物を倒せば、客は帰ってくるのか??」


「人の流れが戻れば多分、ね」


「冒険者には依頼したのか? あいつらの仕事って魔物の討伐だろ??」


「もう試したわ。でも、ダメだった。その魔物、どうやら銀等級以上じゃないと倒せないくらい強いみたいでね。銀等級以上・・・・銀、金、プラチナ級冒険者を雇うには莫大なお金がいるの。とてもじゃないけどこの宿屋にはそんなお金はない。お金がない人間には無理なのよ、冒険者に頼るのはね」


「・・・・・・・・・・」


「だから、この宿屋に残された道は客のターゲット層を変えること。旅行客ではなく、この国に元々いる人間を集客する道。けど・・・・流石に簡単にはいかないわ。この街にはたくさん宿屋があるからさ。うちみたいな古い造りの宿が彼らと戦うには、宿泊料が安いだけでは戦えないの」


「なるほど、な」


 外国の冒険者や旅行客をメインに切り盛りしていた宿がいきなり経営方針を変えて違う客層を狙っても、今までのやり方じゃ当然客は増えない、か。


 付け焼刃で新しいものを加えても、この宿屋には金も人手も足りない。


 挑戦して失敗したらそこでもう終わりってわけだ。


 下手したら赤字で借金続き、宿を売らなきゃならないハメになってヘレナとゴズは路頭に迷う・・・・なーんてことになってしまう。


 これはどうやら、かなりの窮地に追い立てられているみたいだな、この宿屋は。


「・・・・・でも、暗くなってばかりもいられないよね。死ぬんじゃなくて、生きるという道を選んだ以上、戦っていかなきゃならない」


「・・・・・ヘレナ」


「私ね、昨日貴方に『一緒に戦おう、この理不尽な世界の神様に』って言われた時、勇気が沸いたんだ。理不尽な現実と戦ってるのは私だけじゃないって。生きるってことは、理不尽な現実を与えてくる神様と戦うことなんだって、気付いたんだ」


「・・・・・・・・」


「私ももうちょっと世界に、神様に抗ってみようと思う。母さんの残した形見であるこの宿屋をなくさないためにも。精一杯頑張ってみる」


 そう言って、ヘレナは目を細めて微笑みながら頷き、食堂から去っていた。


 俺は、彼女の味方として何かできることはないのだろうか。


 この宿屋を存続させるために、彼女が人生に絶望しないために。


 俺ができることはー-----。


「アキトーッッ!! さっさと飯を食えーッ!! 午後からは午前の倍ビシバシ行くぞーッ!!!!!」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!!!!!」


 背後から聞こえた筋肉髭達磨の鬼軍曹の声で悲鳴を上げた俺は、急いで食事を腹の中に詰め込んでいった。









「クソッ、加減を知らねえのか、あの筋肉髭達磨は」


 午後七時半。


 ゴズによる今日の指導を終えた俺は、鬼軍曹である彼から外回りに行ったヘレナの迎えに行って来いと指示を受け、商店街通りを歩いていた。


 暗くなった商店街通りは仕事帰りの衛兵や冒険者たちが出店や飲食店に屯し、さながら飲み屋街と化している。


 怪しい客引きもいるし、どこか某歌○伎町に既視感があるな。


 こんな酒臭い酔っ払い共の中を、幼さの残る可愛い顔立ちをしているヘレナたんが歩いている・・・・そう考えるだけで、とてつもない焦りと心配の波が心の中を覆いつくしてくる。


 俺に妹はいないが、もしいたら毎日毎日気が気じゃないかもな。


 うちの妹、悪い男に引っかかってないかしら、変なキャッチに引っかかてないかしらー--と、今のようにシスコン発揮しちゃうこと間違いなし。


 可愛い可愛いヘレナが『お兄ちゃん、これ、彼氏』って、いかにもなチャラ男を連れてきたら発狂してキレ散らかしそう。


 うちの妹をお前などにやれるかぁ!!ってお茶ぶっかけそう。


 人を外見だけで判断する老害と化しそう。


「ええと、確かヘレナは野菜を宿に降ろしてくれるお店に行ってるんだっけか?? 恐らく、ひいきにしている取引先との挨拶回りって感じなんだろうな、きっと」 


 宿で提供される新鮮な食材は大事だからな。


 ヘレナ社長自ら視察に行くのは確かに重要なことだ。


「確かに昨日食ったゴズの料理美味しかったからなぁ。特に野菜のスープが・・・・ん?」


 もしかして、宿のセールスポイントをゴズの料理にするのは良いのではなかろうか??


 この世界の料理についてはあまり詳しくないが、あいつの料理はめちゃくちゃ美味かった。


 料理が美味しい宿は、売れるのが必定だ。


 元居た世界でも料理のレベルが高い民宿や旅館はそれメインでテレビに出てくるくらいだし。


「良いアイディアだな。問題点としてはどう人々の間に宣伝していくかだが・・・・・いや、ネットもないこの世界では中々難しいかもしれないな・・・・ビラ配りって言ってもコストも限度もあるし・・・・うーん・・・・うん?」


 腕を組んで悩んでいると、前方の人混みにヘレナの姿を発見した。


 俺は彼女に向かって手を挙げ、声をかけようとする。


 しかしー----。


「・・・・・・・・・・・・・・」


 彼女の様子がいつもと違っていた。


 いつものあどけなさの残る明るい笑顔はそこにはなく、酷く真剣な面持ちでヘレナは冒険者ギルドの前に立っていた。


「ヘレ、ナ・・・・??」


 俺が普段と違う彼女のその表情に困惑していると、そのままヘレナは緊張した面持ちでギルドの中に入っていった。


 これはただ事ではないと、俺は直感で感じ、後を追う。


 何となくストーキングしてるのが恥ずかしかったので、バレないよう透明化を使用して。






「お願いします!!!! 街道にいるワイバーンを倒してきてはもらえないでしょうか!!!!!!」



 ギルドに入ると、そんなヘレナの大きな懇願の叫びが俺を出迎えた。


 急いでヘレナへ視線を向けると、彼女はギルドの真ん中にあるテーブルの前で、深く頭を下げていた。


 そんな彼女の前で大きくため息を吐くのは、青い鎧を着た茶色いツンツン頭のー---以前俺をボコボコにしたレクスという名前の青年だった。


 彼は頭を下げる少女をつまらなさげに一瞥すると、手に持つジョッキに入った並々の酒を一息で煽る。


「ゴクゴクゴクー---プハァッ。嬢ちゃんよ、前も言ったが金はあんのかよ。俺らはな、金を賭けて命張ってんだ。人にもの頼むなら金出しな」


「・・・・お金は、今はないです。ですが、今後宿屋で得た収益で必ず依頼料は返済致します!! 書面に書いて契約します!! ですからどうかー--」


「はぁ? 手元に金がなくてこの銀等級の俺たちを雇おうってのかよ?? しかもワイバーンを?? ふざけてんじゃねえぞてめぇ。そんな上級の魔物、大金積まれても挑みたくない相手だっつーの」


 そう言ったレクスに追随して、彼と同じテーブルに座る仲間の女たちが口々にヘレナへ悪態をつく。


「そうですね。私たちは魔物から人々を守る正義の味方ー---ではありますが、それはお金を持っている人限定の話です。困っているからと言って利益の無い人間を救うほどお人好しではありません」


「そうよねー。頭下げられても一銭にもならいというかー。ねぇ、お願いしたからって人動くとか思ってない?? 他人に甘え切ってない??」


「そ、そんなことは・・・・」


「土下座しなよ、土下座。それくらいの誠意見せてみなよ」


「・・・・・ッ!!!!」


 そう言われたヘレナは悔しさに唇を嚙み、そしてー---手と頭を床につけて、彼らに土下座した。


「うわー、本当にしたよ。プライドないの??」


「まっ、土下座しても俺たちは動かねえけどな!! ハッハッハッハッ!!」


「ッ!? じゃ、じゃあどうしたら助けてくられるっていうのッ!?!?」


「んー、そうだなぁ・・・・」


 顎に手を当て、レクスはひとしきりヘレナの顔と身体をジロジロと眺めると、ニヤリと醜悪な笑みを浮かべた。


「俺と一晩寝たら考えてやらなくもない。お前、金の目の割には中々顔も身体も良いしな」


「なッー--------」


 俺がその言葉に絶句していると、ヘレナは顔を青ざめ、そのままギルドから逃げるように走り去って行った。


「ギャッハッハッ!!!! フラれちまったか!!!!」


「レクス、本当女好きよねー。自分以外のパーティメンバー全員女にするだけあるわ」


「ハッ! 英雄色を好むってな。俺様のような強者は数多の女を抱くもんなのよ」


 何言ってんだこいつは。こいつらは。


 10代の少女に土下座まで強要した挙句、身体を要求するだと??


 最初に出会った頃からわかっていたが、こいつらはクズだ。


 英雄でも冒険者でも何でもない。


 弱者を痛めつけることが趣味のゴミ野郎だ。


「おい、今の女確かに体付きはよかったな。顔はまだガキだが」


「そうか~?? 俺はガキはあんまり好みじゃないからな。守備範囲外だ」


「というかあいつ金目だったろ。魔族の因子がある女なんておっかなくて抱けねえよ」


 周りの冒険者も、涙を流して走っていく少女を見て、そんな品のない会話を続けている。


 そんな光景に俺は怒りを通り越して、呆れた。


 ここにいるのは、全員、正義の味方なんかじゃない。

 

 骸骨の爺さんの娘が憧れた、みんなを救う存在なんかじゃない。


 なら、俺はー----ヘレナの味方として、俺はー-----。



 「俺は、どうすれば良いんだ」


 そう口にして、俺はトボトボと歩き、レクスの笑い声を背中越しに聞きながら酒臭いギルドを出ていった。



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