74:死神さんの決意
次の日、三日ぶりにアイリスが帰ってきた。
「ただいま、陽向!」
「おう、楽しかったか?」
「うむ! かなり、楽しかったぞ」
「そりゃ良かった」
丁度、智也もミナルトも帰ったところだった。朝陽は片づけをしている。俺は、アイリスの荷物を預かり、部屋に運んだ。
「そういえば、陽向」
「ん?」
荷物を部屋のアイリスの言われたように置くと、ベットに腰掛けたアイリスが話しを切り出した。
「あたしは、ひとつ考えたのだが」
「うん」
「あたしは、死神だが……ここにいると、すっごく楽しいのだ」
「ああ」
「でも、もちろん、他の感情だってある」
「ああ」
「それを越えて、みんなといること、いや、陽向といることが楽しい」
アイリスは今までで一番可愛らしい笑顔で言った。俺は思わず、ドキッとして照れくさくなり、顔を背ける。
「そうかい」
「うむ……それとな、桂木や瑞希を見ていて、恋がとても良いことに気付いた」
「ああ、そうだな」
「あたしは、陽向と離れたくない」
「……」
「それで、ひとつ考えたのだ。陽向は今はあまりいないが、これから、死神や天使に襲われることが多くなる。ジョーカーとして。ならば、あたしは陽向を守るために、死神としてここに生きたいと思うのだ」
「それは、すっげぇ、嬉しいな」
「ほんとうか? では、あたしは、ディーラー様に報告してくる」
アイリスが部屋を出て行こうとする。俺はその腕を掴んだ。
「嬉しいけどよ、それは駄目なんじゃないか? お前、そんなこと報告して、そのディーラーって奴に了解を得られるのか? もしかしたら、死神という身分を降ろされるんじゃないのか?」
「……」
「嬉しいよ、それでお前に命を狙われることもないし。でも、お前は死神じゃないのかよ? もう少し、自分を良く見たほうがいいんじゃないのか? そんな、俺だけのために決めてほしくない」
そう。俺のためというのはやめてほしいんだ。
もう、俺は何も背負えないんだよ。心も身もずたずたのままなんだ。まだ、治ってないんだ。自分のことでも手をつけられないのに、それ以上、俺に重要な役割を持たせないでくれ。
「これは、お前のために言ってるんじゃないんだ。俺のわがままなんだ。もう、何も背負いたくないんだ」
俺が言うと、アイリスは振り返って、俺の手を握った。
「大丈夫だ! これは私が決めたのだ! あたしは、もう死神ではなくてもいい。いいんだ」
「……ほんとうはそう思ってないだろう」
「む、やはりばれたか。死神をやめたいなんて思ってないぞ、でも、死神でいるより、陽向といるほうが楽しいのだ。だから、死神を降ろされてもあたしは後悔しないぞ」
アイリスの瞳はまっすぐだった。ああ、俺もこんな瞳になればいいのに。
俺は微笑んだ。
「じゃあ、もうひとつ。守るだなんて言うな。俺が狙われるのは、俺の問題だ。絶対に自分の命が危険になるのは駄目だ。俺の問題だから、俺が自分の命に代えても自分で解決する。いいな? 自分が危ないと思ったら、すぐに逃げるんだ。これだけは約束しくれ」
俺はそう言うと、アイリスの手を離した。アイリスは、少し考えたように、顔をうつむかせると、やがて顔をあげ、分かったと頷いた。
「では、向こうまで行って来る。三日で帰ってくるから、先生には頼むぞ」
そういうと、アイリスは急いで駆け出した。俺は、その背中を見つめる。そして、アイリスの部屋を後にした。
遅くなりました!!
そういえば、高校合格しましたっ!!
これからも少しずつ投稿します!!




