64:ジョーカーさんと男達で
「おい、今日泊まってけよ」
「「もちろん!」」
放課後。俺は智也とミナルトに声をかけた。美紅と目があったが、ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く。美紅も同じ事をした。
「ん? 陽向、帰るのか? あたしも帰るぞ!」
「藍はこっち」
「うえっ」
アイリスが寄って来ようとしたが、美紅が腕を掴み、引っ張った。何がなんだか分からないまま、アイリスは頭をかしげる。
「何故、とめる! あたしの家はこっちなのだ!」
「駄目。今回は女と男の争いなんだよ」
美紅がアイリスを諭した。むぅっとアイリスが眉をひそめる。
…………すまん、アイリス。今回限りは許してくれ。
「アタシの家においでよ。ほら、明日は土曜日だし、泊まりに来なよ。藍、お菓子やるからおいで」
「うむ!」
意外と軽いな! 少し、悲しいんですけど。
そんなこんなで、我が家。もちろん、朝陽が迎えてくれた。
「お兄ちゃん! ……ってこの人たち誰?」
「いや、俺は前に会ったよね?」
「えっと、湊って言うんだけど、よろしく」
「とりあえず、今日、こいつら泊まっていくから。客室は使えないぞ」
「えー、この人たち泊まるの? …………そういえば、藍ちゃんは?」
「あー、藍は隣」
「何で?」
朝陽が首をかしげる。もう、可愛いやつめ!
「色々あって。とりあえず、お前等上がれよ」
「「お邪魔しまーす」」
俺は二人を案内した。ここは、言えば和室。俺はここを客間と呼んでいた。もちろん、アイリスにも朝陽にもは別の部屋がある。二人は途中で寄った自分の家から持ってきた荷物をどさりと置いた。
あたりを見回すと、ふすまから、朝陽が顔を覗かせていた。
「なんだ?」
「え、あ……お兄ちゃんが襲われないか心配で!」
「襲われるか!」「「襲うか!」」
なんという事を心配しているんだ、俺の妹は。
「だ、だってぇ……お兄ちゃん可愛いし……朝陽、時々襲いたくなるときがあるんだもん」
「全く、可愛い妹だなぁ」
「そこは突っ込むべきところだろ!」
「う、羨ましいッ!」
智也とミナルトがそれぞれ、声をあげた。
はっ。いかん! 確かに突っ込むべきだった。
「危ない妹だなぁ。朝陽が襲うんじゃなくて俺が襲うんだろ」
「もう、お兄ちゃんったらっ。……優しくしてね?」
「この兄妹駄目だ!」
ミナルトが悲鳴をあげる。全く、失礼な奴だ。これは冗談に決まっているだろう?
「朝陽ね、何度、お兄ちゃんのベットに潜ろうと思ったか……でも、お兄ちゃんが許してくれるなら、朝陽、毎日夜はお兄ちゃんのところに行くよ」
……これからは部屋に鍵を掛けよう。
「とりあえず、俺と朝陽を含めて、四人分の飯を頼む。あ、二人とも明後日までいるから」
「うー……男共にご飯を作るのは癪だけど、お兄ちゃんの頼みなら仕方ないね!」
朝陽が少し機嫌よく、部屋を出て行く。
「お前の妹、普段から毒舌なのか?」
「まぁ……体弱かったからな」
「全く関係ねー!」
「まあ、それよりさ」
俺は、胡坐をかいて座った。二人も同じように座る。
「さて、どうしよっか……まず、何する?」
「考えてないのかよ!」
「俺的には、メイド服着て誰が一番可愛いか、勝負するとかは?」
「誰が得するんだよ。お前だけだろ」
はぁと溜息をつく。
「んー……なぁ、男の恋バナでもすっか?」
「気色悪いなッ!!」
智也の提案に俺は顔を引きつらせた。それはどうかと思う。そう、ミナルトに同意を求めようとすると、
「……べ、別にそんなに聞きたいなら聞かせてやるよ」
駄目だ。話す気満々だし。
「おっしっ。やろーぜ!」
そうして、男だけのむさい恋バナが始まった。