59:死神さんのクラスメイトと妹さん
昼休み、アイリスはいつの間にか機嫌が直り、俺と美紅と智也で共に昼食を食べていた。
「おい、陽向! 今日の飯まずいぞっ!」
「うっせー! しょうゆの分量を間違えたんだよ!」
今日の肉じゃがについて、二人で怒鳴りあう。久々に弁当を作ったのだが、朝、寝ぼけながら作った為、しょうゆを入れすぎたのだ。
「肉じゃがごときで文句言うなっ!」
「ごときだと!? じゃがいもと牛肉に謝れ!」
「その前にいつも弁当を作ってくれる俺に感謝しろ!」
「いつもは食堂のおばちゃんが作ってくれるではないか!」
「めんどくせーんだよ! お残しは許しませんでー!」
美紅と智也が苦笑する。その横で俺等は額をくっつけて、いがみ合った。
「もー、お兄ちゃん。駄目じゃない。やっぱり、あたしが作るべきたったなー」
「朝陽!?」
急に現れる朝陽に驚いて、思わずのけぞった。智也が支えてくれる。朝陽はニコニコ笑っていた。
「な、お前ほんとに、言ったとおりにクラスに来るのかよ! 初日だぞ!?」
『誰、あの美少女?』
『すっげー、可愛くね?』
『また、篠塚かよー!』
「いいじゃんっ。お兄ちゃん大好きだもん!!」
抱きついてくる朝陽。その刹那クラス中から悲鳴があがる。
『ブラコンの妹、羨ましすぎる!!』
お前等、そんなこと思ってるのか。
俺は朝陽を引き剥がした。横から、智也が気味悪い笑顔で朝陽に話しかけた。
「ねー、君、陽向の妹なんだぁー。すっごく可愛いね。えっと……俺、お前の兄の陽向の親友、桂木智也って言うんだ、よろしく」
「その、脂汁の浮いた手を引っ込めてください。気持ち悪い笑顔で話しかけてくる人が先輩なんて、この学校大丈夫なんですか?」
「智也、気色悪いから、俺と朝陽から200メートル離れてくれ。200メートルから入ってくるな」
「まさかのダブルパンチッ!」
倒れる智也。でも、少し幸せそうであった。さすが、ドM。
「あのなぁ……ここは2年の教室だぞ? お前みたいな一年が入ってきちゃ駄目なんだよ。早く、帰れ。じゃないと、お兄ちゃん怒っちゃうぞ」
「童顔のお兄ちゃんに言われてもね」
「グハッ」
「それに、あの人はいいの?」
朝陽の指が刺した方向には――――とりあえず、めんどくさい奴が居た。
「おお、陽向! 我が嫁!」
「帰れッ!」
「いたっ。女にも容赦ない……そこがまたいいっ!」
箸をめんどくさい奴、つまり、真琴の額に向けて投げる。見事ヒットしたが、起き上がる真琴。真琴は飯を食ってる俺に抱きついてきた。
「ぐぇ!」
「おー、陽向。会いたかった。最近、僕の出番が少ないと思わないかい!?」
「思わねーよ!! お前はもともと影が濃すぎるから、しばらく出ないほうがいいわっ!」
「ちょ……貴方、お兄ちゃんに抱きつかないで下さい!」
「ん? 君はいったい誰だい? 僕の見たことのない生徒などいないはずなのに……ああそうか。君が今日転校してきた一年生か。それにしても、僕の妻をお兄ちゃん呼ばわり……そうか! 君は僕の義妹だね!?」
「「違うから(ます)!!」」
はぁ……。やっぱり、真琴はしばらくでないほうがいいらしい。