53:死神さんの文化祭の放課後
俺の能力……か。
天使との急な戦いに疲れ、俺は教室に戻った。もう、文化祭一日目は終わっている。
「あ、篠塚君。お帰り。かなり、宣伝になったわ。君、体育館まで行ったらしいじゃないの」
「ああ。まあな……成り行きで」
「随分疲れてるわね」
「ああ。あ、もう着替えていいか?」
「え、あ、うん」
更衣室、基、隣のクラスに行こうと、ドアを出ようとすると、俺は驚愕した。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!」
『“太陽に〇えろ”をありがとう!!』
「うるせぇ!! それより、これはなんだっ!!」
俺は、出口の傍にある看板を指差した。そこには、先ほど、写真を撮られたメンバーの写真が売られていた。
「あー。それね。えっと……かなり売れてるわっ! これは一位間違い無しよ!」
「そんなことどうでもいいわぁ! 何で、こんなものを許可なく売りやがった!」
「えー。可愛いじゃん」
こ、こいつら……。ダメだ、体力がもたねー。俺は溜息をついて、さっさと更衣室に向かい、着替えた。丁度、アイリスもやってきて、勝手に着替え始める。
「俺、先に帰るぞ」
「待て。あたしも一緒に帰る」
「まだ残っててもいいよ」
「いや、陽向が心配だからな。一緒に帰ってやる」
俺は、胸を張るアイリスを見て、笑った。
「そんな心配いらねーよ」
「なあ、陽向。お前は、傷ついたのか?」
「傷つく?」
「うむ。お前はさっきから疲れているからな」
「そーだな。さんきゅ」
アイリスって、時々鋭いな。
俺はくしゃくしゃと頭を撫でる。
「あー。まあ、精神的にっつーかね。俺、全く覚えてないなぁって考えてたんだよ」
「ふむ。お前は恨まれる事をしたという奴か?」
「そうそう。俺、何したのかなぁ」
「お前はいつも、過去を振り返ってばっかりだな」
アイリスが立ち止まる。そして、両手を腰に当てた。
「は?」
「お前はいつも、後ろばかり見ていると言ったんだ。しかも、人の心配をして、自分を見ない。で、自分を傷つけないようにしている。今は文化祭だぞ! みんな楽しんでいるんだぞ。お前が楽しくなさそうだったら、あたしも楽しくないぞ!」
アイリスの言葉が頭に入ってくる。そして、心に染み渡ってくる。
でも、俺には前を向く権利がない。アレを、俺は忘れることはできないから。
「ありがとよ。しかしだな、その心配は無用だ! 文化祭は楽しい! 俺も楽しんでる! バカ共とつるんで、騒ぐのがすっごく楽しい!」
「そうか? ふむ……」
アイリスが近寄ってくる。そして、少し背伸びをして、ぎゅっと俺の頬をつまんだ。
「ならば、その嘘くさい泣きそうな笑い顔はやめることだ」
「えっ」
アイリスは、いつもより満面の笑みを浮かべていた。
「あたしは、今、狩人モードになれなくても、ほんのすこしだけ、良かったと安心している。まだ、お前といれる時間があるからな」
「そーかい。なら、少しは家の手伝いもしてくれるとうれしーんだがな」
「あたしは、食べる専門だぞ」
「胸を張っていうな」
「おい、陽向!」
アイリスに突っ込んでいると、後ろから頭をはたかれ、バランスが崩れる。バランスを整えて振り返ると、ご立腹の美紅とにやついている智也がいた。
「ナイスパンチです、清水さん!」
「そんなことはどうでもいい! なんで先に帰るんだよ」
「あ、美紅にゲスやろう」
「おい、ひとつ突っ込みたいんだが」
「あのなー、今日、一緒に帰るから待てとあれほど言っただろうが」
「あれ? スルー?」
「悪い悪い。疲れちまったから、忘れてた」
「ねえ? 誰も僕の名前に突っ込む人いないの?」
美紅は、はぁと溜息をついた。そして、手に腰を当てる。
「ったく、今日はお前の家ですき焼きだ!」
「はぁ!? そんな金ねーよ!」
「なら、買いに行く」
「強引だな、おい!」
「おい、陽向、すき焼きとは上手いのか?」
「やったぁ!! 陽向の家ですき焼きー。当然俺も行きまーす!」
「「黙れ、ゲスやろう」」
「うわーん! 二人とも大嫌いだ―――――!!」
走り去っていく、智也。俺は仕方なく、財布を取り出し、二人に言った。
「んじゃ、行きますか?」
あ、もちろん、智也は呼ばないけど。




