52:死神さんの文化祭の質問
「俺の能力ってなんなんだよ……」
「アンタの?」
ヒョウライはくすりと笑った。怪我でもしてなければ、大笑いしているだろう。
「あんた、本当に自分の能力が分かってないんだ」
「……くっ」
「さっき、発動してたじゃない」
「さっき?」
ヒョウライの視線が移動する。俺も、ヒョウライの視線に合わせて動かした。そこにはさっき落ちてきたバスケットゴールがあった。
「あんたの能力は“武器化”よ」
「チェス……?」
「そう。アンタは身の回りにある全てのものを武器にできるの。あんたの想像力次第で。でも、限度があって、鉛筆はナイフにしかならない。鞄は盾にしかならないと、ちゃんと決まりがあるらしいの。バスケットゴールみたいな大きなものは大概大きな岩ってとこかしら」
「岩? それって武器なのか?」
「さあ? あんたの判断だもの。あたしが知るわけないわ。ちなみに、発動方法も自分で考える事ね。あたしは武器化なんて能力持ったものないし」
武器化……か。それって本当に強いのだろうか。
「ほら、二つめ!」
「あ、ああ……。お前、なんでそんなに詳しいんだ」
「え?」
「俺が能力を発動したのは5回くらいじゃないのか? アイリスだって、俺の能力を知らなかった。なのに、たった5回見ただけで、お前は俺の能力を判断したのか?」
「……そうね。あたしは5回見ただけで、あんたの能力が分かったわ。でも、あんたの能力については昔から知っていたのよ。あんたと同じ能力を持っていた奴がいるんだから」
「俺と同じ能力……?」
「ええ。これ以上は言わないわ」
ヒョウライは少し、にやりと笑った。
「ちっ……。じゃあ、三つ目。お前達は何故俺を狙う?」
「はぁ? それはそちらの死神さんに聞いたんじゃないの?」
「ああ、聞いた。俺の能力はどちらかが俺の能力を持つ事で、相手の勢力を滅ぼせるとかそんなもんだろ?」
「知ってるじゃない」
「でも、前戦った天使は自分個人の恨みで俺を殺そうとしていた。お前もそうなんじゃないか?」
「……そうよ。あたしは、なんの命令も受けていないわ。天使全員って言っていいほど、あたしら天使はあんたに恨みがあるのよ」
「俺に?」
俺は、天使などという非常識な生き物を前の天使の戦いの時しか見たことがない。恨みを買われることなんかしただろうか。
「あんた、覚えてないの?」
「……ああ」
「でも、残念。あたしは教えることが出来ないの。あたしも、あの時の現場を見たことがないからね。はい、質問タイム終了。あたしは帰らせてもらうから」
「あ、おい待て!」
消えかかっているヒョウライに飛びつこうとするアイリスを抑える。
「陽向?」
「いいから、行かせろ」
アイリスは俺の一言で仕方なく、おとなしくなった。俺はじっと天使が消えるのを見ていた。
天使が消えるのと同じに、パッとたくさんの学生が現れた。みんな忙しそうにしている。バスケットゴールは既に戻っていた。
一ヶ月くらいの更新です。これからも、頑張ります!!