44:ジョーカーさん、参加します
「そこのメニュー表できた?」
「そこ、赤く塗って!」
「ティーセットいくつ!?」
放課後。いつもより、クラスは騒がしかった。理由は簡単。後一週間で文化祭だからだ。
「ねー、そういえば、うちのクラスどうすんの? 聖上美女コンテスト」
城崎が呟いた。作業していたみんなの手が止まる。
「そうだ! どうすんだよ! 明日じゃねーの! 締め切り!」
「うわぁ! やばい! 時間ない!」
みんなが騒ぎ出す。当たり前だ。この文化祭は三日間行うのだが、聖上美女コンテストは2日目にある。美女コンテトの上位5位。つまり、聖上美女軍団がいるクラスは、聖上美女軍団が客引きになる。かなり儲かるのだ。2日目にビリなクラスでも5位は取れるほどに有名になる。
「どうすんだよ! おい、みんな! 手を止めろ!」
『もう止めてるわ!』
「……ごめんなさい」
智也が代表して叫ぶ。しかし、返り討ちにあっていた。あいつ、実行委員だっけ?
「うちのクラスは誰を出す?」
智也はめげずに言った。
聖上美女コンテストはクラスで3人まで。一学年は7クラスある。つまり最高63人出るのだ。……人数合ってる? 63人全員出ることはできないので、まず、実行委員の方で予選を行う。そして、20人ほどに減らす。オーディションのようなものだ。
「どうする? 清水は決定だな!」
「えー。あたし? また、出んのかよ」
「嫌なのか?」
「うん」
「即答!? じゃあ……御井! お前は?」
急に名前を呼ばれた御井は、びっくりしながら、顔を上げた。
「嫌か?」
「え、えっと……」
御井は目立たないが、可愛い。あ、メガネじゃないぞ? でも、可愛い。
智也の声に御井が戸惑っている。おいこら。御井がかわいそうだぞ。
「御井でいいだろ!」
「そーだ! そーだ!」
お前ら、結構投げやりだな。御井、困ってるし。
「……分かりました。わたし、やります」
「おっしゃぁ!」
おっけーなのか!?
「はい、次!」
「藍ちゃんは?」
「藍ちゃんか……うん、いいな」
「ほえ?」
おいおい! アイリスはダメだろ!
「おい、お前ら! 俺の許可なしで藍を――――」
『藍ちゃんはみんなのものだ!』
「……」
なんだ、こいつら。……これから、藍を兄として守ってあげるべきだろうか……。
「じゃ、藍ちゃんでいいな?」
「ふぇ? ……むう。まあ、勝手に決められるのは癪だが、興味がある。ここは出るとしよう」
アイリスが頷く。少し、誇らしそうだった。なんなんだ。
「おしっ。最後一人!」
『篠塚君!』
女子が一斉に言った。……って俺!? 何で? 俺、普通に傍観者としてみていたのに! 巻き込まれてる! しかも、美女コンテストのことで!
「おいおいおい! 俺はお」
『女でしょ』
「違うよ! なんだ! 俺に出ろと!? 無理だ、予選で落ちる!」
『大丈夫!』
「何が!?」
俺、男です……。最近、こういうネタ多くないか……?
「女装に合うし!」
「ソーソー! 結構、女の子だったら絶対好きなるのにって男子言ってるし!」
てめーら、俺をそんな目で見てたのか!
「名前は言わないけど、『陽向萌え~』みたいなことを言ってた男子いたよ」
「誰だァ!」
嫌だ! なるべくなら、それは聞きたくなかった。誰なんだよ! 気色悪い奴! …………全員、何で目を逸らす! 堂々としろよ! 嘘だろ! 女子の冗談だろ! な、おい! …………………………え、俺ここで吐いてもいいですか?
「じゃ、陽向で決定だな」
「智也!」
智也がまるで何もなかったように、話を進める。何でお前も、気まずそうに目を逸らす! お前も言ってたのかよ!
もう、お婿に行けない。
『だいじょーぶ!』
おいコラ! 土曜八時のマネをするな!
何で、俺が出ることに……? 俺、いじめられてるの?
美紅が横で、哀れそうに、俺を見ていた。