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43:ジョーカーさんは女装します

「俺の家にヘアピンなんかない」


 俺は、溜息をついて、三人に言ってみた。しかし、俺の考えは甘く、


「あるぞ?」

 

 空気を読まないアイリスがきょとんと顔をあげ、立ち上がった。そして、どこかへ歩いていく。数十秒後に戻ってきたアイリスは手にピンを持っていた。


「いつも、陽向が顔を洗うときは前髪がじゃまだからってピンをつけているではないか。あと、後ろ髪も小さく結んでいるだろう?」

「藍! だ、黙ってろ!」

「へぇ。可愛いじゃん」


 美紅がにたにた笑う。智也がつけろと促した。……仕方ない。


 俺は言われたとおりにピンをつけた。


「「「おおっ」」」


 三人の驚きの声があがる。


「可愛いな、陽向(ひな)って」

「陽向。僕は猛烈に萌えた!」

「お前、こんな特技が……」

「う、うるせぇぇ!」


 ち、畜生。恥だ! まだ、気持ち悪いと罵倒された方がよかった!


「うーん。服装も女の子のほうがいいなぁ。男子のブレザーなんてつまんないし。なんかないのか?」

「さすがにないわっ! アホか! 俺は変態になるだろう! もういいじゃねーか!」

「えぇ。つまんない。……あ、そうだ。清水、お前の制服を貸してやれ。――ぶふっ」


 バチンと乾いた音。智也の頬は真っ赤になっていた。


「バカか! あたしに脱げというのか! あたしの服はどうすんだよ!」

「仕方ない。僕が貸してやろう!」

「何でそんなに嬉しそうなんだよ!」


 嫌だ! なんかされそうで、真琴の服は借りたくない!


「美紅、頼む! 真琴の奴は絶対に嫌だ! 俺の服貸すから!」

「んなっ! ……わ、分かった」

「さんきゅ」


 俺は急いで、部屋着ようのジャージを取りに行って、美紅に渡した。


「俺とお前、同じくらいだし、いいだろ? ほら、アイリスの部屋で着替えてきて」


 美紅は真っ赤になってジャージを受け取り、アイリスの部屋に入った。智也が素早く、アイリスの部屋のドアに張り付く。俺は智也の頭をはたいた。


 そして3分後。美紅が部屋から出てきて、たたまれた制服を俺に渡した。俺は、部屋に向かう。途中、真琴が着替えを手伝うと言ったが聞こえなかったことにした。


 毎回、深琴先輩に女装をさせられるので、女制服を着るのは簡単だ。三分で着替え終わる。


「……着替えてきたよ」

「「「うわっ」」」


 三人がさらに驚愕する。そして、少し頬を赤らめていた。何で、智也も頬を赤らめるんだ。


「めっちゃ可愛いな」

「お前、今年の聖上コンテスト出ろよ」

「僕の嫁!」


 はずいっ。深琴先輩とは違う感想を述べられ、頬が熱くなる。


「ほら、早く終わらすぞ! 『……あ、あんたの事なんか好きじゃないんだからね!?』」

「ぶはぁ!」


 智也が鼻血を噴射して倒れた。な、俺、男だぁ!


「おい、桂木! 大丈夫か!」

「ぼ、僕にも刺激が強いよ、陽向」


 美紅が焦って、智也を心配した。真琴もボタボタと鼻血を出している。


「うるせ――――――――――っ」


 俺は真っ赤になって叫んだ。これにて、本日の王様ゲーム終了。






 翌日。俺は学校に向かった。


「おは――――」

「でさぁ。陽向の女装はやばいって! 俺、鼻血だしたぜ」

「へぇ。見てみてぇ! こりゃ、文化祭が楽しみだ!」

「実は、携帯で写真を撮ったんだ。ほら」

「ぶはぁ!」

「やべぇ。同性なのに、何でこんなにドキドキするんだよ……」

「可愛すぎる……」


 ……教室中、俺の女装ブームが到来していた。


「あ、篠塚? お前、何でこんなところに立ってんだ?」


 先生がやってきて、俺の後ろで不思議そうに俺に訊いた。


「せ、先生……保健室行ってもいいですか?」


 俺は、先生の承諾もなく、保健室へとふらふらした足取りで向かった。


 ああ。今日も雨が降っている……。

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