42:ジョーカーさんの和む?王様ゲーム
「何故、僕がお前を膝に乗せなきゃいかんのだ!」
「でも、お前の命令ですしー。命令は絶対でーす」
智也は少し嬉しそうににやにやしている。まあ、真琴はあんなんだが、美人の女子だ。女好きの智也が嬉しいのも無理はない。俺は嬉しくないけど。
「そーそー、真琴。王様の命令は絶対ぃ」
俺も調子に乗って言う。智也は真琴に近づいて、真琴の膝に座ろうと――――
「座らせるかぁ!」
「ぐはっ」
――――したが、真琴は立ち上がった智也に足蹴りを食らわせ、バランスを崩した智也はテーブルの角に頭をぶつけ、ノックアウト。
「あー……桂木?」
美紅がぺちぺちと智也の額を軽く叩く。そして、はっと智也が目を覚ました。
「畜生!? 川の向こうの美少女たちの方へ行こうと思ったのに! 川に流された!」
「よかったな、智也。お前はあと少しで三途の川を渡るようだったぜ?」
「マジか! ああ、清水! 俺を心配してくれたんだな!」
「いや、お前が死んで、真琴が殺人犯になるのが嫌だった」
「ガンッ」
美紅がばっさりと智也を裂く。智也は涙を流していた。
「うむむ。なるほど。だいたい王様ゲームとやらが分かったぞ!」
「そうか。まだ、やんの?」
「おうっ。まだやるさ! 清水とキスをするまで!」
「当たり前だ、陽向! 僕と君がキスをするまで!」
「……一生終わんないな、このゲーム」
俺と美紅は溜息をついた。
「ほんじゃ、王様だーれだ」
同じに引く。3番。王様は……
「あたしだ!」
どうやらアイリスが当たったらしい。アイリスは「うーむ」と少し考えるとにやりと笑って言った。
「3番はあたしを膝に乗せる!」
真琴と同じようなことを言ってるし……。まあ、いいけどって、俺か。
「3番、俺」
告げるとみんなが一気に振り返った。みんな、表情が別々で、アイリスは少し嬉しそうに、美紅は複雑そうな顔に、真琴は嫉妬し、智也は憎悪に満ち溢れていた。
「ふむ。では、おい、陽向、胡坐かけ!」
「はいはい」
俺は言われたとおりに胡坐をかいた。その上にちょこんとアイリスが座る。む、丁度、背もたれがなくて、バランスがとりにくい。アイリスはそれを察したのか、俺の両腕を手に取ると、自らアイリス自信の腰に俺の腕を巻きつけ、俺の胸に体重をかけた。俺はアイリスの頭に顎を乗せる。
「なかなかいいぞ、陽向」
「そうか」
「ぬわぁ! 羨ましいぞ、陽向!」
「僕の陽向がぁぁぁぁぁぁ!」
「うー。なんか複雑……兄妹みたいだけど」
アイリスは居心地よさそうに微笑んでいた。
「じゃ、次行きますか?」
俺は、みんなの割り箸を集め、みんなに引かせる。1番。んー。なかなか王様にならねーな。
「俺か、王様!」
「智也かよ」
「俺で何か文句あるのか!」
「ないけど……」
「では、命令を言う! 1番は、俺が考えた台詞を言ってもらう!」
「はぁ!?」
「では、『……あ、あんたの事なんか好きじゃないんだからね!?』と言え! やっぱりツンデレは王道だァァァァァ!」
「おい、智也。1番は俺だよ」
俺が告げると、智也はポカンと口をあけた。
「…………はあ?」
「だから、1番は俺」
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
智也が頭を抱えて呻く。俺だって泣きたいわぁ!
「あのさ、智也。やめようぜ。他の人に」
「おう、そうだな。じゃあ――――」
「あれ? 誰だっけ。命令は絶対って言ったの」
「「え?」」
マジですか。俺、女じゃないんですけど。美紅はにやにやと笑いを浮かべている。む、ムカつく。アイリスは気持ちよさそうに、和んでいるし、真琴も男なら良いやと投げやりになっている。
「……まあ、陽向は童顔だし、声も女っぽいし――――ぐわぁぁぁぁ!」
「なめんなよ?」
「そ、そっちの方向に腕はまがんな――――」
バキッと音がする。智也は腕を変な方向に曲げられ(俺が曲げた)、声にならない悲鳴をあげた。
「……っ。と、ともかく、清水の言うとおり、王の命令は絶対だ。よし、陽向。ピンをつけろ」
「はあ?」
「ヘアピンだよ! カチューシャでも可! こーでもしねーと、お前を女に見る事が――――調子乗りましたぁ!」
「おい、陽向。王の命令は絶対だぞ?」
絶対というところを強調して、美紅が笑う。くっそ……。
はあと俺は溜息をついた。