41:死神さんの初めての王様ゲーム
畜生。結果的に、真琴を連れて来てしまった。俺は仕方なく家の扉を開ける。
「はい、どうぞ」
「「「お邪魔しまーす」」」
「ああ。陽向の家初めて来るが、陽向のにおいがする」
何故か、息を荒くする変態一人。俺はシカトしてリビングへ行こうと――――
「それで、こっちかな? 陽向の部屋は」
「待て待て! リビングはこっちだぁ!」
こいつを無視して行くと犯罪が起きる。ダメだ、置いてけない。
俺は慌てて真琴の腕を引っ張った。
「そこらへんに適当に座って。茶、出すから」
「えー。陽向ぁ、ジュース出せよぉ」
「テメエシバクゾ」
智也を睨みつけてお茶を人数分出す。そして、アイリスの隣に座った。美紅がやってきて、アイリスとは逆の俺の隣に座る。
「で、何やるんだよ。やることなんてないぞ」
「陽向の部屋の探索がいい!」
「却下!」
とんでもねー。どんだけ引っ張るんだよ。溜息をつくと、智也が俺の向いでにやにやしていた。
「いいもの持ってきたんだ」
「は?」
「じゃーん! 王様ゲーム!」
「……」
無言。そりゃそうだ。つか、お前、最初から女子軍連れてくるつもりだったんだな。
「ホントは、お前が最近仲の良い御井と御井従弟を呼ぶかなと思ったんだけどさ、まあ、次回だな」
「で、人数分あるんだ」
「ああ。真琴が来るのもなんとなく分かってたしな。ともかく、やろーぜ」
「えー」
気が進まん。何で、王様ゲーム? 合コンでもないのに。
アイリスはきょとんとし、美紅は明らかに嫌そうな顔。智也が勝手に進行して、割り箸を混ぜていく。真琴は興奮していた。……なんで?
「はい、みんな、一斉に引くから持って」
「やんの、これ?」
「ああ。やる」
「あたしもやんのかよ」
「当たり前です、清水さん」
「これ、なんだ?」
「藍ちゃん、これは割り箸を引いて、割り箸にそれぞれ番号と王様って書いあるんだ。王様は番号を言って好きな命令を出来る。まあ、やってみればわかるよ」
珍しく、智也が丁寧に説明する。これっぽちも分からなかったが。まあ、国語の成績1なだけあるな。俺? 俺も1です……。
「じゃあ、はい! 王様だーれだ!」
「……」
「あ、王様と書いてある」
最初に引いたのは美紅だった。俺の番号は3。ところで、五人だけの王様ゲームって楽しいか?
「あー、じゃあ……1番の人、恥ずかしいエピソードを語る」
「僕が言えばいいんだね!?」
真琴が番号を見せてくる。確かに1と書いてある。……なんで嬉しそうなんだよ。これ、結構最悪の罰ゲームだよな。
「えっと、こほん。実は、僕は陽向の服を脱がし、共に寝たことが――」
「ああああああああああああああああ!」
俺は立ち上がって、真琴の口を塞いだ。何だこれ! 恥ずかしいの俺じゃないかぁ!
「馬鹿やろう! お前、それは言うなって!」
「おい、陽向……お前……」
ぎょっとしている智也の顔が赤くなっている。アイリスも美紅も赤くなっていた。
「うるさい! 寝ただけで、何にもなかったよ!」
「服は脱がされたのか……」
「上だけだ!」
「陽向。あたしは、お前の家にいていいのか……?」
「だから、いやらしいことなんかしてないって!」
「いや。単に寝ただけではないぞ?」
「真琴ぉぉぉぉぉぉ!」
「なぁ! ひ、陽向、お前……」
「智也! お前ら全員誤解してるっつーの!」
俺は息を荒くして、座った。やべぇ。疲れる。真琴も静かに座った。
「……3番の人さっきの続きを語る」
「命令は一回だけ!」
美紅が俺の割り箸を覗き込み、とんでもないことを告げた。
智也はみんなの割り箸を集め、また混ぜる。そして、苦笑しながら、みんなに引かせた。
「僕が王様だ!」
げぇ。めんどくせいのが当たった。俺の番号は1。
「では、陽向が僕の膝の上に乗る」
「番号で言えや!」
「……じゃあ、2番」
俺ではない。どうやら、真琴は見事外したようだ。そして、手をあげたのは……
「オレオレ!」
「何ぃ!」
手をあげたのは、智也だった。さあ、どうなるやら。続くということで。