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03:死神さんのお願い

 頼む夢であってくれっ……。と願いながら眠りについた俺だが、人生は思い通りにならないことが分かった。


 なぜなら、目を覚ますと、丸い瞳と白い肌があった。


「ぬわっ」


 驚いて飛び起きる。嫌な予感がして、ゆっくりと首を横に向けた。


 そこにいたのは、先ほどの少女、アイリスさんだった。


 どんな悪夢だ、これ。


「起きたのか! 確か、おはようだったなっ」

「え、おはようございます?」


 挨拶をされて、条件反射で返す。一瞬、和やかな空気が漂った。


 そして、俺は、大きく溜息をついた。


「夢じゃなかった……」

「夢?」


 アイリスさんが首を可愛らしく傾けた。そのアイリスさんのワンピースの胸ポケットからもぞもぞとあの、黒いまんじゅうが出てきた。


『起きたか、篠塚陽向、基、ジョーカーさんよ。まず話し合おうぜ』

「とうっ」

 

 幼い少年の声が俺を見る。俺は、ベットのばねを利用してベットの反対側へと跳んだ。そのまま身構える。少女一人だけが拍手してくれた。


『……何をやってるんだよ?』

「襲われたりしたら困るから、身構えてるのだ」

『……今、話をしようといっただろうが』

「人の家の床に穴あけて信じられるか! 今、金欠なんだ! ちゃんと直せよ!」

「……何も、知らずに狩るのって可哀想だろ? ほら、何でも答えてやるって。そんで、納得したら、おとなしく狩られろ。さ、どうする?」


 ……無視? しかも、狩られる前提かよ。何も知らず、狩られず、っていう選択肢はありませんか?


「分かった」

『話す気になったなら座れ』


 死神に、じゃあ帰ってくれ、など言えない。(我ながら臆病な奴だ)


 俺は仕方なく胡坐をかいて座り、質問をした。


「あんたらは何者?」

『それは既に答え済みだが?』

「あたしが答えてやろうぞ!」


 ……なんで、こいつ、クソガキの癖に上から目線なんだよ。


 っていうか、この人、アイリスさんだよね? 服も見た目も変わってないけど、話し方も違うし、死んだ魚の目から輝きの増した目になっている。


「そ、そのまえに……えっと、アイリスさん?」

「何なのだ?」

「貴方、どなた?」

『ああ、アイリスには、二つの人格があるんだ』

「二つ? 二重人格なのか」

『そ、仕事用と日常用ってところ。そんで、今は普通用。俺らはこのときの人格を“日常メイト”モードと呼び、仕事用を“狩人チェック”モードと呼んでいる』

「日常モードに狩人モードねぇ」


 俺はしみじみと、呟く。アイリスさんはにこにこと笑っている。


『ちなみに俺が鎌にならないと、狩人モードにならないんだ。それも、一日に十五分間が限度。その間に狩らなきゃいけないんだ』

「一日に十五分が限度? ほんじゃ、今日は、もう俺を殺す事はできないわけだ」

『ぐっ、ま、そうだ』

「じゃ、帰れ」

『何をいう! まだ、全然俺らの話をしてねーぞ!』

「うるせぇ! 俺はまだやりてーことがあるんだっ。明日、死ぬかもしれねーのに、こんなめんどくせぇ奴らと一緒にいられるかってんだ!」


 だったら、まだ、美紅や智也と一緒にどんちゃん騒ぎをした方がマシだわボケィ!


「あたしは帰ることができないのだ」


 ぼそりとアイリスさんが呟いた。

 一瞬にして空気が固まる。


「あたしは、お前を狩らないと、元の世界に帰れないのだ」

「も、元の世界って死神のいる世界のことか……?」

「そうだ。標的ターゲットを狩らないかぎり、元の世界に帰ることなかれ。というのが、掟の第三条に書かれているのだ」

「……じゃあ、他のとこに立ち去れっ!」

「行くところがない。つまり、あたしは、お前を狩るまでお前の家に住み着く!」

「はあっ!? ダメに決まってんだろうが! どこに、自分を殺そうとした奴を居候させる奴がいるんだよ!」

「ここに」

「ええいっ! 俺を指すな! 絶対に住まわせるもんか!」

「今なら、あたしという美少女が特典に」

「自分を美少女と言うな! 聞いてて恥ずかしくなる! どこの悪質な詐欺師だ!」

「ふむ……なら、あたしたちを泊めてくれたらお前の寝込みは襲わない」


 それって、傍から見ればけっこうアダルティックな発言ですよ? いや、彼女が言ってるのは、狩らないって言う意味だっていうのは分かっているから、読者様は、ご安心を。しかし、それはけっこう安眠を望む俺にとっては好都合――――


「って、お前、壁とかすり抜けれないだろ! できたら、最初から玄関でご丁寧にインターホンを鳴らさんわっ!」

「ちっ」

「おい、今、舌打ちしたよなっ! 怖いんですけど、何、この子!」


 危うく騙されそうになった。あぶねー。


「いいじゃん。こんな美少女がお願いしてるんだけど。何、頭下げろってか? おめーは何様だ、ああん?」


 なんか新しい人格出てますけど。めっちゃ上から目線なんですけど。なんか、ぞくぞくします。


「それに、あたし、こんな物騒な世の中に一人でいたら何されるか……アイリス怖いっ」

「…………くっそう。わーったよ! 泊めてやるわ! 代わりに寝込みを襲うんじゃねーぞ! クソアマ!」

「誤解される言い方やめてくんない?」


 くっ……お前から先に言ったくせに……。

 俺が彼女を睨みつけていると、彼女は急に愛らしい笑顔になり、


「ありがとう、篠塚陽向!」


 と言った。それが、あまりにも可愛かったのは言うまでもない。


「……俺の隣の部屋が空き部屋だから、そこ使えよ」


 結局、アイリスさんがどんな存在か、何で俺が狙われているのかが分からないまま、そして、現状が把握できていないまま、彼女(自称死神?)が住みつくことになった。(らしい)


 ところで、ちゃんと床は修理してくれるんだよな?

けっこう、このコント、自分的には気に入っていたりします。(笑)


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