36:ジョーカーさんのクラスの出し物です。
ふわぁ。欠伸が出るほどつまらないHR。俺は頬杖をついて前に出ている実効委員二人の話を聞いていた。アイリスは何をするのか全くわからない状態で、周りをキョロキョロさせている。ミナルトは死神の世界に行っていて不在。御井はオロオロしながら、実行委員の話を聞いていた。
「では、今年の聖上祭の出し物を決定します」
六月の半ば頃。つまり、後、三週間後には聖上高校の行事、聖上祭が行われる。まあ、所謂、文化祭なのだ。聖上祭はそれぞれのクラスで出し物をするのだが、聖女学園には聖上美女コンテストが行われる。男子も女子も参加可。まあ、美女コンテストに男子が出る場合女装しなければならないのだが。
聖上美女コンテストで上位五位に入ると、聖上美女軍団に加盟。美紅も去年確か三位を取って聖上美女軍団に入った。深琴先輩は一位。聖上美女軍団は時々活動をするそうで、部室のようなものがある。聖上美女軍団に入れば、放課後、聖上美女軍団と共に活動ができるので、女装してまで参加する男子も多い。まあ、殆どは予選で落ちるけど。
そして、出し物で一位になったものは、修学旅行とは別にどこかに二泊三日いけるらしい。どこかは、毎年違っていてどこに行くかは分からない。でも、普通に京都などの有名な観光地ではなく、面白かったり、変なところだったりするという。二年生は修学旅行があるので、出し物で一位になれば、二回旅行へ行くことができるわけだ。
で、そんなわけで、朝のHRは一位を目指し、どのクラスも燃えている。俺は、あまり関わりたくないわけで、静かに過ごしている。
「では、何か案がある人は挙手して下さい」
「喫茶店がいいと思います!」
「ああ、確かに。喫茶店は売れれば、一位間違いないしだもんねー」
「お化け屋敷は費用がすごくかかるし」
「かといって他に出し物とかないし」
「喫茶店はけっこう色々工夫できるもんね」
どうやら、土台は喫茶店で決まりのようだ。さて、喫茶店がどうなるかだよな。
「やっぱ、メイド喫茶じゃね?」
「メイド喫茶は在り来たりすぎてつまんないって」
そーそー。去年、俺らメイド喫茶で全然売れなかったし。ギリギリ赤字じゃなくて済んだって感じ。女子、美紅とも違うクラスで、美人いなかったし。
「じゃあさ、性転換喫茶は?」
誰だ。マニアックな奴は。それを見て誰が喜ぶ。男子、うちのクラスでカッコイイ奴なんかいないぞ。
「んー。それはさぁ、男子に無理があって逆に引くよー。あ、でも、篠塚君は女装の方が良いね」
「はあ?」
思わず立ち上がる。信じられん! 何で、俺を巻き込む!
「誰だぁ! 今、俺を女装させようとした奴はぁ!」
思いっきり叫ぶが全員無視。実行委員は「篠塚、女装」と書く。おい、先公! とめてくれ! あ、寝てやがる。
「ふふふふ。ざまーみそづけぇ」
後ろで智也が笑う。コイツ……仕返ししてやる。
「俺を女装させるなら、智也も女装させた方が言いと思いまーす」
「桂木は女装させるとキモそうだから却下」
「ぐわっ」
智也が机に突っ伏する。か、勝ったんだよな? なんか、敗北感を少し感じるんだけど。
「あ、デ〇ズニーみたいにすれば?」
誰かが言った。ディズニー? 言った本人が立ち上がる。城崎舞子だ。城崎は気の強いショートカットの少女で陸上部だ。クラスの中心人物でもある。
「城崎、ディズニーってどうすんだよ」
「だーかーら! ディズ〇ーってお姫様とか多いじゃん。そういうドレスみたいなのを着せて、接客するの。男子はミッ〇ーとかダ〇ボとかのカチューシャとかコスチュームすりゃいいじゃん。これなら、子供にも人気だし、ディズ〇ー自体人気だからどうよ?」
おおー! と歓声があがる。確かに言い考えだ。でも……
「それだと、色々なドレスを作るのに時間がかかる。それに、カチューシャとかどうすんだよ。ねーぞ? 誰がディズ〇ーラ〇ドまで行くんだよ」
「それは、加賀ちゃんがいる」
急に名前を呼ばれた控えめな女子、加賀南は驚くが、「うん」と頷いた。加賀南は極度のディズ〇ー好きでディ〇ニー〇ンドにもシーにも年に8回は行くという。グッズは全て持っていて、保存用、観賞用、実用用に三つ以上買い揃えているそうだ。デ〇ズニ〇ラ〇ドに行く為に学校も休む。何で、そんなに金があるんだ。
「カチューシャとかピンとか人数分あるよ? 服は、軽いものを作ればそこまでお金かかんないし。カチューシャやピンだけでも、充分ディズニー感は出るんじゃないかな」
「でも、ドレスは歩きにくいぞ」
「ドレスは裾を短くすればいいじゃん。それでも可愛くない?」
「なるほど……」
実行委員が納得する。確かに、それなら売れそうだ。実行委員の呟きに、周りがざわざわと騒ぎ始め、それって言い考えじゃね? という声が漏れてくる。
「では、今年の喫茶店はディズニー喫茶店でいいですか?」
「あ、名前は?」
「ディズニーカフェでよくね?」
「では決まりで」
丁度チャイムが鳴る。名前は意外と適当だった。俺らのクラスって意外とやる気ないかも。