33:死神さんの戦い終了後
はっと目が覚める。視界に映ったのは白い天井だった。起き上がって周りを確認する。
その時、とんとんと戸を叩く音がした。そして、がちゃりとアイリスが入ってくる。
「おう、アイリス!」
「やっと起きたか、陽向!」
「元気10倍アン〇ンマンだ!」
「そうか」
にっと笑って見せると、天使との戦いの記憶が蘇る。
「おい! 天使はどうなったんだ!」
「そのことだが、あたしが一番最初に学校で目が覚めたのだが、もう既に何もなかった。天使はどこにもいなくて、あたしと陽向と玲奈とミナルトが倒れていた。そうそう、あたしのわき腹の傷も跡がどこにもないんだ」
「御井は!?」
頭を打ちぬかれ、泣きながら倒れる御井を思い出す。もしかして、御井は……。
「むむ。玲奈の方を先に心配するとは……しかし、安心しろ。玲奈はあたしの次に起きたミナルトが玲奈を担いで帰ったぞ。玲奈はどこにも傷はなかった。そういうえば、何故ミナルトと玲奈がいたのだ?」
何も知らないアイリスが頭にはてなマークを浮かべて困惑していた。
……おかしい。確かに、御井は頭をぶち抜かれたんだ。それにアイリスになんで撃たれた跡がなかったんだ? そういえば、俺の肩の傷もない。俺が気を失った後、何があったんだ?
俺は急いで玲奈に電話をかけた。3コールで彼女が出る。
「もしもし。俺」
「あ、篠塚君! あたし、どうしたの?」
「いや、俺が聞きたいよ?」
「ごめん。――ピッ。ツーツー」
「……」
………………あ、あれ? 電話切れたんですけど。
驚いていると、すぐ着メロが鳴った。御井である。
「もしもし」
「ご、ごめんね! ミナルトが篠塚君の声が聞きたいって言い始めたから、スピーカーつけようとしたんだけど、間違えて通話終了ボタン押しちゃった!」
「あ、そうなの?」
スピーカーって……。しかも、間違えるのかよ。
相変わらずの天然ぶりを発揮する御井。どうやら彼女はどこにも異常がないようだ。
「おい、大丈夫なのか御井」
「うん。ピンピンしてるよ。わたし、死んだんじゃないかなって思ってた」
「……」
何も言えない……。御井は確かに打たれたんだよな。
「篠塚君? ――――って、ミナルト! ちょ、返してぇ」
途中から、御井の声が遠くなった。どうやら、ミナルトが御井の携帯を奪ったらしい。
溜息をつきそうになった直後、ミナルトの怒鳴り声が聞こえた。
「おい、ジョーカー!」
「うるせぇ! 怒鳴んな!」
「お前もだぁ!」
「うるせぇ。で、なんだ」
「お前、どこも異常がないか!?」
「あ、ああ。特に」
「お前、今、ジョーカーの能力使えるか!?」
「はぁ? 使えないって言ってるだろ。前から。お前、何言ってるんだ?」
「あ、悪い。そうか……」
「どうしたんだよ? それよりも、お前、何か覚えてないか?」
「え、何をだ?」
「天使のこと」
「にゃ、にゃに!?」
ミナルトが見るからに……いや、聞くからに動揺した声をする。……何か知ってるな。
「まあいい。明日聞く」
俺は、無理やり電話を切った。そして、布団をかぶる。
「おい、陽向!」
「うるさい、明日早いから寝かせてくれ!」
「それより、大事なことだ!」
「あ?」
「最近あたしの出番が少ないんだが!?」
「知るか!」
全く、知るか。ギャーギャー喚くアイリスを横に、俺はぐっすりと眠った。