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32:ジョーカーさんの覚醒?

 陽向の顔に表情はない。ただ、真っ直ぐにキョウを見ていた。両手には鉛筆。鉛筆を三本ずつ片手にそれぞれ指と指の間に挟んで構えていた。


「な、お前。その体でやるのか。……いいじゃん。やっぱジョーカーはそうでなくっちゃ」


 キョウがにやりと笑ってミナルトを放り投げ、銃を陽向に向けた。ミナルトは腹を打ち、床にうつ伏せになった状態で陽向を見た。


 パアン。銃声音が鳴る。しかし、陽向は立っていた。腕がキョウの方に向いている。キョウは驚いてた。キョウがゆっくりと顔を動かし、背後を見る。


 そこには、ナイフが三本刺さっていた。キョウの足元には真っ二つに割れた銃弾が転がっている。この光景から推理すると、陽向がキョウへナイフを投げ放たれた銃弾を真っ二つに切り、軌道がそれ、キョウの顔の横の壁に刺さったようだ。


「嘘だろう? 全く見えなかった」


 キョウが驚いたまま呟く。陽向の片手にはあったはずの鉛筆がなくなっていた。陽向は鉛筆がある手を構え、投げる体制になった。


「はん。俺を倒すと? やってみろ」


 キョウが発砲する。陽向は手を動かし、そのまま、黒板の方へ飛ぶ。


「なんだこれ!? ――ぐわっ」


 キョウが驚愕の声をあげる。


 陽向の投げた鉛筆はナイフに変わり、キョウの銃弾を切った。そして、何も切る事がなかった一本の鉛筆がキョウの肩に刺さる。


「ちいっ」

 

 キョウが舌打ちをして、銃の引き金を引く。


 陽向は黒板にある磁石を掴み、バンと派手な音を立てて教卓にたたきつけた。


 磁石は、まるで溶けるように教卓へと吸い込まれていった。


 刹那、ガタガタと音がした。そして、教室中の机や椅子が教卓へ集まるように飛んで重なっていく。


 キョウが発砲するのと机と椅子の盾ができるのはほぼ同時で、銃弾は机と椅子の盾にはじかれた。


「なっ。マジかよ!」


 声をあげながら、キョウが引き金を引く。すると、椅子と机の盾の間から、何かが飛んできてキョウの持った銃をはじいた。


 銃がカランと音を立て、キョウから遠い方へ転がる。


 キョウが銃を取ろうと後ろを向いた時、さきほどと同じ何かがキョウの手のひらを貫いた。


「あがっ」


 キョウがバランスを崩し、倒れる。キョウの近くには小さく短い槍のような棒が転がっていた。


 キョウの血がついた槍のような棒はしばらくして、光に包まれ、チョークへと変わった。いや、戻ったという方が正しいだろうか。


 ミナルトはその時点で気付いたのだ。


 ジョーカーの能力は「身体能力をあげ、周りの物を武器化する」能力だ。


 キョウは気付いてないようで、何が起きたか分からないような顔をしたまま立ち上がった。


「ジョーカー! お前は何者なんだ!」


 キョウが叫んだ瞬間。パリンとガラスの割れる音が響いた。陽向が窓の方に移動し、片手で窓を割ったのだ。陽向の片手が血に染まり、スローモーションのようにガラスが粉砕されていく。


 しかし、割れたガラスの破片は床に落ちず、そのままキョウの方へ大量に飛んでいき、キョウの全身に刺さった。


 ミナルトは思わず、目をつぶった。キョウが瞳孔を開き、全身を赤く染めながら倒れた。もう、ぴくりとも動かない。心臓が停止した。キョウは死んでしまったのだ。

 ミナルトはそのまま、陽向を見た。陽向は無表情で死んだキョウを見つめている。


 次は自分ではないのか。


 ミナルトはそう本能で感じ、震えた。がちがちと歯が鳴り始め、鳥肌がたつ。しかし、陽向はミナルトのほうへ近寄らず、ロッカーへ向かった。そこで、ロッカーから裁縫セットを取り出す。バサバサと教科書が散乱した。


 しかし、陽向はそんなことは気にせず、玲奈に近づいた。そして、玲奈の横にしゃがみこみ、裁縫セットから白い糸を取り出す。


 糸はブワっと勝手に広がり、玲奈の頭を包んだ。そして、糸に玲奈の血が滲み始めた頃、糸はゆっくりと玲奈から離れた。


 そこにいたのは眠るように呼吸を繰り返す玲奈の姿があった。


 次にアイリスのほうへ寄り、同じく、アイリスの腹を糸で包み込む。じわりと血が滲始め、糸が離れると既にアイリスの腹には銃の埋め込まれた後がなくなっていた。


 ミナルトは驚いて、これからどうするのかと興味が唆されたが、疲れていたのか、意識を手放して眠ってしまった。

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