31:ジョーカーさん絶体絶命
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天使はゆっくりと動いた。そして、後ろにいる御井を捕まえ、頭に銃口を向けた。
「いやっ。離して! 嫌っ、嫌ぁ!」
「御井!」
涙を流し、震える御井。天使はにやりと口を釣り上げ、下唇を濡らした。
「離せ! やめろっ」
「ジョーカーは黙ってみていなよ。人が死ぬ瞬間をね」
天使が、銃の引き金を引く。俺は、叫んだ。
「やめてくれ! やめろ!」
叫んで、声がかれる。俺は一度、自分のせいで、大切な人を亡くした。あの時の大切な人を亡くした記憶が蘇る。あの時のような思いはしたくなかった。
ともかく叫ぶ。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
パァン!
銃声が教室中に響いた。スローモーションで時が流れていく。飛び散る血。泣いた顔のまま倒れていく御井。ピシャンと御井の血が天使の顔、服、そして、俺の顔にかかった。
ダンと派手な音を立てて、御井が床に倒れた。御井の頭が赤く染まって血が溢れ、だらだら流れ、御井の顔を濡らしていく。
「御井?」
俺はふらふらと御井へ近づいた。そして、軽く二、三度頬を叩いて起こそうとしてみる。
しかし、御井は少しも動かなかった。口元に手を当ててみるが、息をしていない。
「嘘………だろう……?」
涙が頬を伝った。
あのときの記憶と御井が重なる。
俺の名前を呼ぶ彼女の最後の穏やかな声。周りからの悲鳴。飛び散る血。血に染まったナイフ。彼女の涙。全てが重なっていく。
「御井ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「アハハハハッ。まず一人終了。さぁ、次はそこのちいさな男の死神にしよう」
ドクン。
天使の笑い声よりも大きく、心臓が打った。涙が止まり、体が麻痺したように動かなくなる。
ドクン、ドクン。
鼓動は大きくなったまま早くなっていく。
あ、あれ……?
まるで体が自分のものじゃなくなったような感覚を感じる。
視界に霧がかかり始め、急な眠気が襲ってきた。
何でこんなところ……で眠くなるんだ……よ。こんな所で、眠ってられない……のに……。
そう、頭で考えるが、眠気は強くなる一方でついに、俺の意識は闇の中へ放り込まれてしまった。
陽向の意識が闇へ消えた後、意識を戻したのはミナルトであった。ミナルトはゆっくりと顔だけ起こし、回りを確認する。
……なっ。どうなってんだっ。
先ほど見たときから変わらず、アイリスは動かない。御井は頭から血を流している。陽向も肩から血
を出して倒れていた。
先ほどのダメージが残っているせいか、体はもちろん、声すらでない。
「ハハハハハハッ」
頭上から響いてくる狂った笑い声。もちろん天使だ。いや、ここでは堕天使とあらわした方が適切だ。堕天使キョウは笑いながら、銃を一発放った。
「アーハッハ。可笑しいっ。そこの女は死んで、あそこの女の死神は腹を撃たれてもうすぐ、死ぬ。ジョーカーは勝手に倒れて同じくもうすぐ死ぬ。男の死神は俺が今から殺す。ああ、でも、ジョーカーにこいつの死ぬ姿を見せられなくて悲しいなぁ」
な、てめぇ!
苛立ちが限界を超え、怒鳴りたくなるが、声は出ない。
キョウはミナルトの襟を掴み、持ち上げた。
「目、覚ましたんだ。今から、楽にしてあげるよ」
ちっ。ヤバイ。今は狩人モードになることができないのに。
シュンッ。
絶望が押し避けてきた、その瞬間、小さな空を切る音がした。ミナルトもキョウも驚いて、何かが飛んできたほうを見る。
そこに立っていたのは、肩から血を流し、倒れていたはずの陽向だった。