26:死神さんたちの買い物 3
ともかく、ここは一旦場所を変えたほうがいい。というか、帰りたい。だって、周りの人たちが俺らを冷たい目で見てるもん。早く移動しないと、このデパートに一生来れなくなる。
「じゃ、じゃあな真琴、智也」
「いや、待てよ」
「陽向、僕を置いていくのかい!?」
智也と真琴が俺の腕を掴んで離そうとしない。
……めんどくせー奴らだ。
「俺らはもう帰るから! はい、離す! じゃあなっ!」
「離すもんかぁ! 今日のナンパは成功させるんだー!」
「離さない! 僕が妻の浮気を許すと思っているのかい」
「めんどくせーよ! ナンパは他のところでやれ! 俺は男でお前は女だ、立場逆! それから結婚した覚えもない!」
いたたたっ。う、腕ちぎれる! 何で、こいつら離さないんだよ!
「あー、もう! いい加減離せ! 分かったから、場所を移動させろっ」
「分かったよ、全く我がままだ」
「仕方ない、それで勘弁しよう」
「お前ら何様だ。……真琴はここでお別れです。お前、深琴先輩どうすんだよ」
「そんなことを心配してくれるのか。さすが、僕の嫁だな。大丈夫だ。姉様なら自分の買い物が終わり次第、僕を置いて車でいつも帰ってしまうから」
「お前、その姉の行動について疑問に思ったことはないのか」
深琴先輩は妹に優しくしないんだな。
会話をやめ、俺らは近くのファミレスへと移動した。そこで、俺とアイリスと御井でオレンジ、ミナルトと智也はコーラ、真琴はメロンソーダを頼んだ。
「あー、智也のおごりだから、礼は智也に言ってくれよ?」
『ごちになりまーす』
俺が言うと、みんな素直に智也にお礼を言った。
「何で俺!? 俺、今、金がないんだけど!」
「知ってるよ? そんなこと」
「知ってて言うのか! お前、鬼だな!」
うるせぇ。どうせ、ナンパ成功した時、かっこつけて女子におごる予定だったんだから、金は持ってきてるだろう。
「陽向、これからどうするのだ?」
アイリスが聞いてきて、俺は唸った。
「どうしよっか……まずは智也と真琴をどうにかしんないと」
「おい、藤原はともかく、俺まで邪魔者扱いか」
「何故、桂木が俺と一緒の扱いだ」
二人が文句を言う。俺にとってはお前ら同レベルだ。
「あの、いいんじゃないかな、桂木君達と一緒にどっか行っても」
「おお、御井! 分かってるじゃん。そこらの童顔と違って」
「さすが御井だ! そこらのと違う!」
「てめーら、喧嘩売ってんのか?」
御井の優しさに甘える火星人二人。ほんと、ムカつくな。
「おい、玲奈。こいつらなんてジョーカーと一緒に捨てちまえよ」
「てめぇも敵か、湊」
男ってホントむかつくわ。
「分かったよ」
「おお、さすが親友! 分かってくれたか」
「それでこそ、我が嫁」
「ああ。仕方ないからな」
「そっかそっか。じゃ、さっそく――」
「おう。みんなで帰ろうぜ」
沈黙が流れる。それでいい。一番これが妥当なんだよ。みんな幸せだっつーの。
「おい、陽向。どこか行くって話しじゃないのかよ!」
「仕方ないから、帰るんだよ。お前らがいるくらいなら、家に帰って宿題をするっつーの」
「なぁ! ひどい! こいつ、悪魔だ!」
「なんとでも言え。さ、藍、帰るぞ。湊、御井をしっかり守れよ」
俺が合図のように言うと、アイリスとミナルトと御井が立ち上がる。智也と真琴は目を丸くしていた。
「じゃ、さよなら。お二人さん。代金よろしく」
俺がとどめに言うと、二人はガンと音をたてて額を机にぶつけた。
「ざまあみろ」
今回は少し続編を作ってみました。
ちょっと、玲奈ちゃんと陽向がべたべたですね。。。