25:死神さんたちの買い物 2
「御井、どこか行きたいところねーか?
俺は、御井に目を向けて言った。御井はすっかり驚いている。
「え、あの……」
「おい、陽向! 何故、あたしには聞かないのだ!」
「お前は、俺ん家の居候じゃねーか! 何で、お前を優先させなきゃなんねー! あ、そうか? 新しい家でも探しに行くか?」
にやりと笑ってみせる。ふん、今はデパートの中。人がたくさんいるんだ。お前も変身できるまい。
「アイリスを侮辱するんじゃねー! それと、俺に聞かないのは何でだ!」
「図々しいな、お前!? お前は、男だろーが! 男を優先して何が嬉しいんだ!」
「お前ー! 狩ってやる!」
獣のように、唸り声を出して睨むミナルト。俺は鼻で笑って見せた。
「ふふーん。ここはデパートの中だぞ?」
「畜生……」
「で、御井。どこ行きたい?」
「えっと……じゃあ――――きゃっ」
御井が言いかけたところで、御井が倒れこんでくる。俺はしっかり、受け止めた。どうやら、誰かにぶつかったらしい。
ぶつかったらしき人物が俺らを見る。
「げっ」
「あ、すんませ――――篠塚!」
そこにいたのは智也だった。
「なっ。お、お前……」
智也が俺の腕にうずくまってる御井を指差して驚いている。
「お前ら、できていたのか! ――――ぐえっ」
「んなわけねーだろ、どアホ」
「じゃあ、何でいるんだよ」
「俺らは従妹の携帯を買いに来たの」
「従妹? ああ、藍ちゃんと御井湊にか」
「気安く呼ぶな!」
「ぶほっ」
アイリスが智也に拳を振るう。ちょうど、背の高さがぴったりで、智也の鳩尾に入った。ナイスファイト!
「で? お前は何しに?」
「ナンパだけど?」
「ああ。そうか。また、生き別れた妹を探しに来たんだな。見つかったか? 見つからないのか。かわいそうに……。大丈夫! いつか見つかるさ!」
「人の話聞けよ!」
「いやぁ、あまりにも、『晩飯を買いに来たけど?』みたいな軽い口調で言うからさ」
「じゃあ、そう言えよ」
「晩飯買いに来たのか」
「いや、もう遅いし」
智也は溜息をついた。俺は手を振って「じゃあな」という。すると、智也に腕を掴まれた。
「お前もナンパしよーぜ」
「お前こそ、人の話を聞け!」
「ええー、いいじゃんよー。お前、顔は童顔で女子みたいで可愛いんだから――――ぐほっ」
「次言ったらコロスゾ」
「カタカナは怖さ倍増するからやめて!」
「俺は、お前の暇つぶしに付き合ってる暇なんて――――」
ないと言おうとしたところで、背後に気配を感じ、咄嗟にしゃがむ。そして、飛んできた奴の腕を掴み、背負い投げをした。
「ぐはぁ!」
「ぶふっ」
奴は智也のほうに飛んでいき、智也を巻き込んで倒れた。周りが小さく悲鳴をあげて、俺らから離れていく。
「ひどいではないか! 陽向!」
「ぐぇ」
奴、真琴は智也を踏んづけて立ち上がり、俺に言う。
「飛んでくるてめーが悪い」
「そんな、あんまりだ!」
「ぐお!」
真琴が片足を思いっきり、振り下ろす。あ、智也の口から、何か出そうだ。
「何で、てめーがココにいる」
「いや、今日は陽向がいそうな予感がしたんだ」
「てめーはエスパーか」
「ちなみに姉様もきている」
「なぁっ」
「現在は、服を見に行っているが」
「おい……藤原……そろそろ降りてくれ……」
「なっ。お前、僕の下で何をやっているんだ! そんなに僕に踏まれたいのか!」
「お前が降ってきたんだっつーの」
「この、どMが! あ、でも僕は陽向に踏んづけてもらうのは本望だぞ!」
「Mはどっちだ! やるか! そんなこと!」
真琴が智也から降りる。智也も立ち上がった。
どうすんだ……これ。