22:死神さんの天敵天使の登場
滑り台に立つ天使は白いコートを身にまとって、にやついていた。背にはしっかりと白い翼が生えている。
「天使……新人か」
アイリスが告げた。新人って、どういうこと?
「君はスペード隊長のアイリスさんだね? さすが、アイリスさん。天使部隊は全て頭に入ってるだね。君の言うとおり、俺は新人だよ。俺の名はキョウ=リッチネ。ハート部隊の下だけど」
「ハート部隊?」
「陽向には説明していなかったな。我ら死神はスペード部隊とクローバー部隊の二つの部隊がある。ここに入れるのは計10人。つまり、一つの部隊に5人だ。天使も同じように部隊があり、ハート部隊。そしその上にダイヤ部隊がいる。同じく10人しか部隊に属する事はできないから、新人と言ってもかなり力があるだろう。天使の武器は銃」
『よく知ってるね』
「…………篠塚陽向排除令ならあたしの役割だ」
『知ってるよ? でもねー。俺が倒さなきゃ行けない理由があるんだ』
「理由?」
『そう。といってもジョーカーくんは全く覚えていないようだけど?』
俺、関係あるのかよ。でも、天使だって見たことねーし、お前にも見覚えなんて……。
「お前はジョーカーの命を狙ってるのか?」
『まぁね』
「ジャック」
アイリスがぼそりと呟く。待ってましたというように、ジャックが鞄から飛び出し、鎌へと変わった。ミナルトも、どうやら使い魔のようなものがいるらしく、いつの間にか、鎌を持っていた。
「篠塚陽向排除令の遂行途中、邪魔者が現れた場合、駆除する。天使キョウ=リッチネは我が命を邪魔するものに値する。よってキョウ=リッチネを排除する」
「天使を狩るなんて久しぶりだぁ」
狩人モードになった二人が日常モードと違う人格を見せる。
俺、何もできないんだけど?
どうしようか考えていると、ミナルトとアイリスが天使へと突っ込んでいく。
「はぁっ」
アイリスが鎌を振るが簡単に避けられる。しかし、その天使の背後にミナルトが立ち、鎌を横に振った。
しかし、天使はしゃがんで避け、ミナルトへ足蹴りを喰らわせた。
「ぐふっ」
「ミナルト!」
アイリスが天使をめがけて縦に振るが、それも避けられ、アイリスは腹にパンチを食らった。
無言で飛んでくるアイリスを俺は受け止める。
こいつ……強い。
『死神って弱いねぇ。まだ、俺は銃を使ってないよ?』
いちいちムカつく。でも、俺にはどうしようもない。
何もできない自分に苛立っていると、天使が俺をめがけて突っ込んで拳を振るった。
「うわっ」
なんとか自分の反射神経で避ける。そして、地面に手をついた瞬間、地面が揺れた。
「……っ」
驚いて戸惑っていると、地面が盛り上がって壁のようになり、天使の腹に思いっきりヒットした。壁がそびえ立つのと同じに天使が空高く飛ばされる。
パンッ、パンと連続で鳴る発砲音。空から銃弾飛んできたことに気付いた。
……ってあれ? なんで、俺は銃弾が見える?
銃弾がまるで止まっているように見えた俺はアイリスを引っ張って避けた。
「……?」
『へぇ。ジョーカーもやるねぇ』
バサバサと翼を広げゆっくりと降りてくる天使。どうやら、血を少し吐いたらしく、口元が赤くなっていた。
『……今日はココらへんでしゅーりょー。今日は本当はただ挨拶をしに来ただけなんだから』
「なっ」
だから、こいつ余裕ぶっこいてるのか!
「ま、ちょっと本気出しちゃったけど」
天使はにっと笑うと、軽くジャンプした。そして、翼を動かし、空へ飛び立つ。
「ま、待て!」
俺は気を失ったアイリスを抱えたまま叫ぶが、天使はそのまま飛んでいってしまった。
「どうすりゃいいんだよ……」
俺は公園で一人で呟いた。