21:死神さんと下校中。
帰り道。何故か、いつもと人数が違う。
「あー……御井? お前、こっちだったっけ?」
「あ、今日は、篠塚君家行くから!」
「ええっ。し、知らないんだけど、俺」
うわぁ……美紅とアイリスと智也がめっちゃ俺を見てるんだけど。穴開きそうなんだけど。
「あの、ま、まだ篠塚君に聞きたいことあるし……」
「あ、そうなの?」
まあ、俺ん家……いつも汚いわ。
「俺も行――」
「お前は来るな」
「ええっ」
即答してみる。案の定、智也はダメージを受け、ふらついた。
「痛ッ!」
隣から悲鳴。見ると、御井が電柱にぶつかっていた。いや、前見ようか?
「大丈夫か、御井?」
「ふ、ふぇ? だいろーふ」
涙目で俺を見る御井。くそ、可愛いじゃないか。いねぇぞ、高校生で電柱にぶつかる少女さん。
「死ね、陽向」
「ひでぇ!」
美紅が久しぶりに俺をあだ名ではなく名前で呼ぶ。より一層怖いよ、美紅さん。
「ふふふふ。やっと清水に嫌われたか! はっはっはっ、どうですか美紅さん? 俺とお食事でも?」
「きもっ」
「ぐはぁ!」
智也の扱いは俺よりもひどかったぞ!?
ひざをついて倒れこむ智也。ああ、可哀想だ。
「おい、美紅! 智也泣いちまったぞ! 謝れ!」
「こいつに謝ったら人生が終わる」
「ひでぇ!」
「確かに」
「納得するなぁ!」
泣きながら、突っ込む智也。いや、だってねぇ?
俺は智也から目を逸らした。智也は立ち上がって「ちくしょぉぉぉぉ!」と叫んで、歩いてきた道を逆戻りし始めた。どこ行くんだ? お前。
「あーあ。行っちゃった」
「意味が分からないやつだな?」
アイリスがぼそりと呟く。うん、分かるよ、俺も。あいつ、高校から一緒なのにね。
「おい、オレを忘れてないか?」
「幻聴が聞こえる」
「オレ、いるよ、ここに!」
「え? ……ああ。小さくて見えなかった」
「ひでぇ!」
おお。智也と同じ反応してるぞ。
「うるせー! オレはどうせチビだぁぁぁぁぁ!」
「知ってる」
「謝れよ!」
あー。面白いな、コイツ。ぼそりと美紅が「どSがいる」と言う。深琴先輩より優しいから問題ないさっ。
『ジョーカー見つけた』
ドクン。……アレ? 寒気がする。
「おい、アイリス、なんか話したか?」
「え? 何も言ってないぞ?」
「お前、霊感でもあるんじゃねーぞ?」
「あたしもしゃべってねーぞ」
「え? じゃあ」
空耳か? そう言おうとした時、また、心臓の鼓動が大きくなった。
『随分呑気だな』
今度ははっきりと聞こえる。アイリスもミナルトも立ち止まり、険しい顔をした。美紅と御井は震えている。
「今、何か聞こえなかったか?」
美紅が呟く。言われなくても、俺にも聞こえた。
ヤバイ。これは……。
「天使だ」
「天使?」
「ああ……この感覚はそうだ」
天使って何だよ……。でも、ヤバイ気がする。
「おい、美紅、御井! 俺ら用事思い出した! 悪いけど、こっからは二人で帰ってくれ! 藍、湊、行くぞ!」
「え、おい! ひなっ」
「篠塚君!?」
「分かっている!」
「オレに指図するな!」
俺らは同じに走り出した。そして近場の公園へ向かう。
『あの子たちは関係ないから置いていくんだ。ジョーカーって優しいところもあるんだね。機械的なものだとばかり思ってたけど』
「うるせぇ! 俺にも心はあるわ!」
姿の見えない天使に言う。……よし、ここまで来ればいいだろう。
「姿見せろや!」
『言われなくても、俺の姿くらい見せるよ』
ぶわっと風が吹く。そして、バサンバサンと音を立て、滑り台に天使が姿を表した。