18:死神さんのお友達
「転校生を紹介するぞ。喜べ女子、男だ」
朝のHR。騒ぐ女子。俺は、溜息をついた。
「おい、陽向。どうした? 男だぞ? これでイケメンだったらどうする。わが同盟の敵だ。みなのもの!イケメンには罪を!」
智也が後ろで立ち上がる。男子が「おおー!」と声をあげていた。アホなクラスだな、オイ。
「ほら、入れ」
先生がドアに目をやり、それを合図に転校生(男)が入ってくる。俺はその少年を見て、驚いた。
「なっ……」
アイリスを見ると、同じように驚いている。
入ってきたのは、昨日戦ったミナルトだった。
「御井湊。玲奈の従弟です。よろしくお願いします」
湊と名乗る少年は俺を見た。そして、にやっと笑う。
あいつ、本当にミナルトだ。
「玲奈! どういうことっ!」
「うごー! イケメンだぞ、皆の衆! かかれぇ!」
『おー!』
女子は、興味津々な目で御井を見る。ああ、かわいそうに。
男子は、ミナルトに襲い掛かる。俺も、行くかな。
……ほら? イケメンはやはり許せないだろう?
先生は、コソコソと教室を出て行く。
「なっ……ちょ、オレ、なんかしたのかっ」
男子がじわりと近づいてくるのを見て、びびるミナルト。
「あ、ジョーカー! てめっ今日こそ、狩ってやる!」
ふ。甘いな。お前は明日まで命があるか分からないぞ?
男子が、智也の号令で飛び掛る。ミナルトは死神なだけあって、ひょいと避けた。
「うおっ。あっぶねー!」
「ふふっ。甘いぞ? ――――いけっ、陽向!」
智也が俺に声をかける。俺は、実は、あほな男子共のように突っ込んだりしない。
つまり、奴らは囮だ。
「とうりゃっ」
ミナルトの背後に回り、羽交い絞めにする。
言っておくが、俺は細腕で力がなくて、オマケに童顔と散々言われているが、運動神経は学年一だぞ?
右足で、ミナルトの足を蹴り、体勢を崩させる。ミナルトはばたんと派手な音を立てて仰向けに倒れた。
「よくやった、陽向。ふふふ……これで、お前の未来はないぞ?」
「どうでもいいが。報酬はくれよ?」
「俺のおススメのエロ本でいいか?」
「いや、昼食おごれ」
お前、俺がそういうの読まないって知ってて言ってるだろ。しかも、家にはアイリスがいるって言ってるだろうが。
ミナルトが「ひいっ」と悲鳴をあげる。死神のクセに情けねーな。
俺は心の中でアーメンと祈った。
―――――――――
一方女子。
「ちょっと玲奈、どういうこと!」
「ええっ。な、何が?」
「だーから! あんなイケメン従弟なんて卑怯でしょ!」
「ええっ。そんな事言われても……」
「あんたは、篠塚が好きなんでしょ!? しかも、めっちゃくちゃアプローチしてるじゃない!」
「え、えっと……そうだけどぉ……」
「もうっ。あんたばっかりぃ! 篠塚君だって、すっごく可愛いのに! 篠塚君、美紅か玲奈しか話さないじゃん! ずるいっ」
「何で、あたしも出て来るんだよ!?」
「ええっ。篠塚君ってモテてるの?」
「当ったり前じゃない! 可愛いし、面白いし、けっこう人のために動くんでしょ? 狙ってる女子多いよ?」
「ええっ」
玲奈はその事実を聞き、自分もじっとはして入れないと悟った。