17:ジョーカーさんの登校
いつも通りの平穏な朝がやってきた……と思っていたが、俺は、朝から肩身の狭い思いをしていた。
「あの……美紅さん?」
俺は、隣にともに並んで歩く美紅に声をかけた。反対側では、アイリスが俺の腕にくっついている。
「うー。やっぱり、同年代の人間には慣れることは難しい」
どうやら、少し怯えているようだ。まあ、今まで同年代の死神すら一緒にいることが少なかったのだから、仕方がないのかもしれない。
俺は、アイリスの頭を撫でる。なんか、こいつ犬みたいなんだよなー。
「そーだな。まあ、その内慣れるさ」
美紅は震えるアイリスを見て、むすっと眉間に皺を寄せた。
「ぐわっ」
急に膝の辺りに痛みを感じる。美紅の足蹴りを喰らったのだ。俺は、しゃがみこみ、膝の辺りを撫でる。
「お、お前ぇ」
「ふん」
美紅がそっぽをむく。アイリスは、こういう光景を目にするのが始めてなのか、あわあわと慌てる。
「おい、陽向! 大丈夫か!」
「ああ、そんなに心配するな」
「そ、そーなのか?」
立ち上がって、疑問符を浮かべるアイリスの頭を撫でる。あー、癒されるわ、お前。
「あ、篠塚君!」
ばっと誰かが立ちふさがるように俺の前に立った。対応できなかった俺は誰かとぶつかる。
「いっつぅ……」
顔を上げると、同じく呻き声を漏らしていたのは、御井であった。あー、なんか既視感。
「御井……お前、気をつけろよ」
さすがに、こう何度もぶつかってたら、御井が危ない。俺は、苦笑気味に言った。
「ふぇ……あ、ごめんなさいっ」
90度くらい頭を下げる御井。俺は、慌てて、顔を上げさせた。
「どうしたの、玲奈ちゃん」
「あ、美紅ちゃん。えっと……あの、わたし、篠塚君に用があって……」
やっと口を開いた美紅は、御井の言葉に顔を歪める。
「あ、そうなの? 何?」
「え、えっと、あの、今日、わたしの、その……い、従弟が転校してくるの」
御井は、目を泳がせながら話す。ふむ……そんなに俺は怖い雰囲気があるのかな?
「御井、そんなにビビるなよ。ほら、俺の目を見て」
御井の顔を両手で挟み、俺のほうへ向ける。御井は、俺を見て、目を丸くし、ぼっと頬を赤らめた。
慌てて、離す。
「わ、悪い! 痛かったか?」
「ち、違うの! あ、わたし行くからっ。よ、よろしくね!」
御井は声を裏返しながら、去っていった。おい、そんなに慌てて走ると転ぶぞ。……あ、転んだ。
「御井、大丈夫かな?」
「「ふんっ」」
呟いた瞬間、両脇から俺は膝に足蹴りを喰らい、地面に顔をぶつけた。
ベタベタの展開ですね……。まあ、よろしくお願いします!!